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このチューンドGT-Rを見る度に強く思う。当時にタイムスリップできたら…と。内容を考えると完全なる慈善事業。老舗マインズが、かつて超破格で限定販売したBNR32ベースのコンプリートカーである。(OPTION誌2004年4月号より抜粋)
目指したのは、新車を超える「完全体」。
2004年に限定販売されたBNR32ニュルスペックに迫る
2003年に“マインズ”が世に送り出した、BNR32ニュルスペックを覚えているだろうか。新車時を上回るコンディションにまでボディをリフレッシュさせ、各所にファインチューニングを施した、まさにマインズチューニングの集大成とも言える15台限定、450万円のコンプリートカーだ。
発売後、問い合わせが殺到し、瞬時に完売。その後も再販を熱望する声がマインズには寄せられ続けたという。450万円というプライスは、新車時のBNR32と同等だ。それにも関わらず、ここまでユーザーを惹きつけた要因は、中古車ベースにただパーツを取り付けて販売するそれまでのコンプリートカーとは、一線を画していたからだ。
「うちはなによりも”新車のBNR32を復活させること”を前提にした。ショップの看板車として出す以上、最高のクオリティでなくては”コンプリートカー”という言葉になんの意味も、価値も無いからね。そこにユーザーの方々が共感してくださったのだと思うよ」。製作指揮をとったマインズの新倉代表はそう語る。
中古車市場に流れているBNR32は、経年劣化などによって各機関にダメージを負っているケースが大半。そういった部分を黙認して“カタチだけ”のコンプリートカーを製作しても、手にしたユーザーが心から満足する事はない。マインズのコンプリートはそんな究極の拘りから誕生したわけだ。
そしてニュルスペックの完売から約半年経った2004年春、止まない再販希望の声に応えるべくマインズが再び立ち上がった。前作をベースにした最終進化モデル”ニュルスペックPro”の限定生産を宣言したのである。
ドア開閉時の重厚な音と質感は、BNR34に限りなく近い。スポット増し等の補強作業を行なった恩恵はこんなところにも現れているわけだ。
このコンプリートの製作工程は異常だ。ウインドウを含めたボディをストリップにして、サビや溶接の剥がれなどを徹底的に修復。その後、時間をかけながら再発防止の処理を隅々まで行っていく。
そこからスポット増し溶接やプレート補強などで剛性を引き上げていくわけだが、ここには第二世代GT-Rを知り尽くしたマインズならではチューニングノウハウが注ぎ込まれている事は言うまでもない。もちろん再塗装も行われる。
そうして新車以上のコンディションまでボディを作り込んだ上で、心臓部には580psという最高出力を誇るRB26DETTを搭載。
BNR34のニュルエンジンにハイカムやGT2530タービンを組み合わせたチューニングユニットだ。タービンはキットのままでも580psは可能だが、エキゾースト側に独自の加工を施すことで、同じ580psでもよりニュートラルなブースト特性を可能にするというマインズらしい演出が施されている。
排気系はマインズのスーパーアウトレットpro.IIやフロントパイプpro.II改、スーパーキャタライザーII、サイレンスVX proマフラーと、排気効率を徹底追求した組み合わせ。もちろん車検対応の範囲内だ。
足回りは高出力を完全に抑え込むと同時に、スポーツ走行も許容範囲となるESTAダンパーが奢られる。さらにメンバーブッシュやリンクブッシュはマインズの強化品へと変更され、アームもニスモ製にスイッチするなど、厳選されたパーツでサスペンションの性能を磨き上げる。
ホイールはBNR34純正、ブレーキはBNR34ブレンボが標準装備だ。
また、インテリアはマインズ基準によって許容を超えた傷みのあるパネル類などは全て新品に交換。その美しさは新車にも勝るとも劣らない仕上がりだ。
一方のシートは、ホールド性が高いBNR34純正を左右にセット。内外装はあえてアフター品を使わず、純正パーツでブラッシュアップさせているのもマインズの拘りだ。
スピードメーターにはオリジナルの320km/hフルスケールが与えられる。
車両価格は前作のニュルスペックから200万円アップとなる650万円。この価格ならポルシェボクスターやBMWの5シリーズなど、いわゆる高級外車が射程圏内に入ってくる。
しかし、老舗チューナーが持てる技術の全てを注ぎ込んで創出したこの贅沢なスーパーコンプリートは、どんなクルマを前にしても一際眩しく映るに違いない。(OPTION誌2004年4月号より)
●取材協力:マインズ 神奈川県横須賀市林5-7-25 TEL:046-857-3313
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