「ほとばしるヤマハ魂、クルマ好きが唸るメカニズム!」クラウンアスリートVXの実力を再検証!!

専用タービンや世界初のX-REASを採用

伸びやかなパワーフィールと、どこまでもフラットな乗り味

クラウンアスリートVXは、7代目17系クラウンがマイナーチェンジした2001年8月に登場。ベースは1JZ-GTEを搭載するアスリートVで、このシャシーとエンジンにヤマハ自らが手を加え、トヨタモデリスタを通じて販売された300台限定モデルになる。

まずエンジンはシャープなレスポンスを狙い、インデュース径を絞り込んだ専用タービンを装着。それに合わせて専用マフラーも設計し、低回転域からの力強い加速感と高回転域でのパワー感を両立している。結果、ノーマルの280ps/38.5kgmから300ps/40.0kgmに向上。ストラットタワーにはヤマハ製パフォーマンスダンパーが装着される。

右フロントダンパーのトップ部。この配管が左リヤダンパーに接続され、途中にストローク速度差に応じて付加減衰力を発生させるユニットが設けられる。スタビライザー的な役割を持ち、ロール方向だけでなくピッチング方向にも効果を発揮する。

また、シャシーでは量産車で世界初となる“X-REAS(エックス・リアス)”の採用が最大のトピック。これは、対角上にある右前と左後ろ、左前と右後ろのダンパーを配管で繋ぎ、それぞれ途中に減衰力を発生するユニットを追加したシステム。

当時、すでに80系スープラ後期型で“REAS”が採用されていたが、こちらは前左右、後ろ左右のダンパーを繋いだもので、X-REASはその発展型と言っていい。このシステムは、前後左右のサスペンションの動きを統括制御することで、4輪の接地荷重配分やボディの動的姿勢を最適制御することが狙いだ。

さらに、車高15mmダウンのサスペンションやフロントメンバーブレース、ボディのたわみを抑えて操安性と乗り心地を向上させる前後パフォーマンスダンパー(これもヤマハ製)も装備。元々、アスリート系は走りに振ったモデルだが、クラウンらしさを失わない範囲で、質感を含め究極的に走りを突き詰めたのがアスリートVXというわけだ。

外装から見ていく。クラウンとは思えないほど大胆なデザインのフロントグリルやフロントバンパーは専用品だ。その材質はPP(ポリプロピレン)やABS樹脂でなく、実はFRPだったりする。エンブレムもアスリートVX専用品だ。

標準装着される18インチのBBS LMはフロント8.0J、リヤ8.5Jで、ピアスボルトがブロンズ仕上げになってるのがアスリートVX専用モデルの特徴。このブロンズ仕上げは、フロントグリル&トランクリッドのエンブレム類にも同じ処理が施されていたりする。

一方、内装での専用品は3本スポークの本革巻きステアリングホイールくらいなもの。ATのマニュアル操作を可能にするステアシフトマチック付きだが、左右スポーク裏側にシフトアップ、表側にシフトダウンのスイッチが設けられているものだから(当時、トヨタ車の多くに採用されていた)、慣れないと非常に使いにくかったりする。

アクセルペダルはオルガン式。ブレーキペダルとの高低差が大きく操作性が悪いため、オーナー自らがアクセルペダルに板を貼って位置関係を適正化している。そのため、至って普通に試乗できた。ちなみに、寒冷地仕様はアクセルペダルが吊り下げ式で、それを流用するオーナーも多いとか。

運転席は8ウェイパワーシートでポジションの微調整が可能。シートバック背面にアシストグリップを設けているのがクラウンの伝統だ。

運転席ドアを開けたBピラー部にコーションステッカーが貼られる。“架装販売元 (株)トヨタモデリスタインターナショナル”、“商品名クラウンアスリートVX”の表記が確認できる。

取材車両で驚いたのは、走行距離がたったの7400kmということ。オーナーいわく「元々、近所のクルマ屋さんが持っていて、ほとんど乗ってなかったんですよ。僕が買った時5000kmでしたから!」だそうで、世界一(国内専用モデルだが)程度が良いアスリートVXであることは間違いないだろう。

タービンに合わせて設計された専用デュアルテールマフラー。アイドリング状態でも排気音は思っている以上に大きく、ブリッピングでもしようものなら、夜の住宅街では間違いなく苦情が出るレベルの迫力だ。相当、効率重視の設計なのだろう。

今回は一般道と高速道路で試乗した。エンジンは低中回転域のピックアップが素の1JZより鋭く、5000rpm以上の伸びとパワー感が別モノで、6800rpmまで軽々と回り切る。カタログ値では素の1JZに対してプラス20psだが、体感的にはそれ以上の差がありそうだ。

そんなエンジンと並んで印象的なのがX-REAS採用の足回り。適度に引き締まっているが、乗り心地は全く犠牲になっておらず、18インチなのに足元のバタつきも一切なし。乗り味がスッキリしているのは、前後パフォーマンスダンパーの恩恵だろうか。

それでいて、コーナリングではロール感が少なく挙動は超安定傾向。車重が1600kgもあるクラウンの身のこなしとは思えないほど、気持ち良く曲がってくれるのだ。X-REASの実力は想像を遥かに超えていた。ヤマハの本気をひしひしを感じるクラウンアスリートVX、魅力的すぎるだろう。

SPECIFICATIONS
車両型式:JZS171
全長×全幅×全高:4820×1765×1440mm
ホイールベース:2780mm
車両重量:1610kg
エンジン型式:1JZ-GTE
エンジン形式:直6DOHC+ターボ
ボア×ストローク:φ86.0×71.5mm
排気量:2491cc 圧縮比:9.0:1
最高出力:300ps/6200rpm
最大トルク:40.0kgm/2400rpm
トランスミッション:4速AT
サスペンション形式:FRダブルウィッシュボーン
ブレーキ:FRベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:F225/40R18 R245/40R18

PHOTO&TEXT:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)

「こんなワゴンはもう現れない! 」クラウンエステート・アスリートVはチューニングベースとして最強か!?

「AMGで喜んでるようじゃまだ甘い!」2.0LV6スーパーチャージャーを搭載するデボネアの超異端児に迫る

「あなたはいくつ覚えていますか?」90年代に登場した新技術の数々を振り返る!Part.1

キーワードで検索する

著者プロフィール

weboption 近影

weboption