「ランエボやインプと真っ向勝負できるミニバン!?」シャリオ・リゾートランナーGTを湾岸で試す!

三菱シャリオ・リゾートランナーGTを夜の湾岸で試してみた!

あの頃、たしかに三菱はキレていた・・・

水曜日の午後8時。待ち合わせ場所の大黒PAに現れた緑/銀2トーンのそれは、若干のローフォルムでランエボ4純正OZ製アルミホイールを履いていた。世の中の大半の人にはただの旧いミニバンにしか見えないだろうが、訳知りのうるさ方を騙すことはできやしない。

日産プレーリーと並び、3列シート7人乗りミニバンの草分けとして知られる三菱シャリオ。その2代目は、モデル途中の1995年にリゾートランナーGTなるグレードが追加された。いかにもスキーエクスプレス的なグレード名だが、中身は230psを誇る4G63ターボに5速MTも用意。状況を問わず盤石の安定感を見せるフルタイム4WDで駆動する。なるほど、これなら7人フル乗車+荷物フル積載でも高速道路の右車線をカッ飛んでいけるだけの走りができるだろう。

三菱が“何にでも”4G63ターボを載せていた時代に登場したモデルのため、リゾートランナーGTの登場はある意味、必然だったと想像がつく。

搭載される4G63はエンジン本体が助手席側、ミッションが運転席側にあることからも分かるように、ランエボで言えば3までと基本設計を同じにする、逆回転クランクシャフトの前期タイプ。エンジンルームのスペース的な制約から、インタークーラーはトップマウントが採用される。スペックは5速MTモデルの230ps/29.5kgmに対して、4速ATモデルは220ps/30.5kgmと、トルク重視のセッティングが施される。

その登場から20数年が経った今、改めて思うのは、時を前後して2.0L・5ナンバークラスの国産ミニバンでターボエンジンを載せたのはプレリーリバティ(SR20DET搭載)くらいしか見当たらず、それとて4速ATのみの設定だったことを考えれば、リゾートランナーGTの特異性が際立ってくるというものだ。

独立したメーターナセルを持つダッシュボード周り。その高さを抑えつつ、アップライトに座らせるポジションもあって、前席の開放感を生み出している。4本スポークのステアリングホイールには運転席エアバッグを内蔵。

また、スピードメーターを中心として右側にタコメーター、左側に燃料&水温計が配置される。7000rpmからレッドゾーンが始まり、9000rpmまで目盛りが刻まれたタコメーターが実力をアピール。おしゃれなグレード名に騙されてはならない。その実体は、ミニバンの格好をした7人乗りのランエボに他ならないのだから。

オーナーからステアリングを託されて大黒PAを後にする。フロアから比較的高い位置に座らされ、見晴らしの良いドライビングポジションは明らかにミニバンのそれ。シートはサイドサポートとニーサポートを張り出させたスポーツタイプだが、休みの日に家族を乗せてドライブに行くお父さんの気分だ。

ところが、4000rpmを目安に2速、3速とシフトアップしながら左回りのループを駆け上がっていくと、1470kgの車重をまるで感じさせることなく、易々とスピードを乗せていく現実を知ることに。ただのミニバンではなく、底知れぬ力を秘めた1台であることをそこで初めて実感する。本線に合流して4速から5速にチェンジ。回転数と速度をチェックすると、この時代の2.0Lターボ車のギヤリングとしては平均的なところだ。

オーナーがおもむろに口を開く。「旧いミニバンだから、高速道路を走っていてもしょっちゅう煽られるんですよ。そういう時は、ひとまず道を譲って即、追撃態勢に。もちろん相手がGT-Rやポルシェだと歯が立ちませんけど、同じ2.0Lターボのランエボやインプレッサだったら、結構イケますよ(笑)」と。

5速ホールドのままアクセルペダルを深く踏み込むと、それが7人乗りのミニバンとは思えないような力強い加速を披露。スピードメーターの針がスルスルと上がっていく。なるほど、ギヤをひとつ落とせば、油断しているランエボやインプレッサのテールを突き回すことも、たしかに不可能ではなさそうだ。

BCNR33と同寸の2720mmという長いホイールベースのおかげで、中高速コーナーやレーンチェンジでもビタッと安定。速度域が上がるほど、リゾートランナーGTにとって有利になってくる。しかも、試乗車はバネレート20%アップの純正形状スポーツスプリングを装着。ロール剛性を向上させつつ低重心化も実現しているだけあって、安定感やハンドリングがより確かなものとなっている。

早い時間帯にも関わらず、交通量が少ないのを良いことにアクセルを踏んでいたら、運転免許証が無くなる領域に達しそうだったのでクルージングに以降。ともあれ、こんなミニバンが20年以上も前、日本には存在していたということが驚きであり、なぜか誇らしい気分にもなった。

経済性や燃費を始めとした環境性能が重視され、ダウンサイジングターボが世の中の本流になりつつある今、それを搭載するミニバンもちらほら見られるようになってきた。しかし、明らかにパワー志向のエンジンを搭載するリゾートランナーGTは、登場した時代も含めて立ち位置が違いすぎる。

表向きにはスポーツを謳ってはいないものの、ひとたび乗れば、熱いものを感じずにはいられない1台。三菱は何とも罪なクルマを出してしまったものだとつくづく思うし、メーカーを問わず、今後同じようなキャラクターのミニバンが登場する可能性はほぼゼロに等しい。

唯一無二とはまさにこのこと。オーナーは、だからシャリオリゾートランナーGTで走り続けるのだ。

■SPECIFICATIONS
車両型式:N43W
全長×全幅×全高:4555×1695×1670mm
ホイールベース:2720mm
トレッド(F/R):1470/1475mm
車両重量:1470kg
エンジン型式:4G63
エンジン形式:直4DOHC+ターボ
ボア×ストローク:φ85.0×88.0mm
排気量:1997cc 圧縮比:8.5:1
最高出力:230ps/6000rpm
最大トルク:29.5kgm/2500rpm
トランスミッション:5速MT
サスペンション形式(F/R):ストラット/セミトレーリングアーム
ブレーキ(F/R):ベンチレーテッドディスク/ディスク
タイヤサイズ:FR195/65R15

TEXT&PHOTO:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)

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