「生産台数8台!? SW20のオープンモデルに乗った」最終V型ベースのMRスパイダーは存在自体が奇跡だ!!

背後から飛び込んでくる3S-GEのサウンドが快感すぎる!

III型以降に設定されたスペシャルモデル。製作はトヨタテクノクラフトが担当!

1989年10月に発売され、1999年まで生産された2代目SW20型MR2。マイナーチェンジによって足回りやエンジンのリファインが重ねられ、その年次によって最初期I型から最終V型までが存在する。

TRD(トヨタテクノクラフト)が、限定100台の受注生産でMRスパイダーを発売したのが1996年2月なので、ベースのMR2はIII型からIV型に切り替わる直前だった。

MRスパイダーは、完成車両をトヨタテクノクラフトに持ち込んでルーフをカットするという作業を実施。生産台数はプロトタイプ3台、III型74台、IV型7台、V型8台の計92台で、プロトタイプを除く89台が販売されたとアナウンスされている。ベーシックグレードGがベースのため、MRスパイダーには電動格納ミラーが装備されない…などという話は小ネタとして使えそうだ。

MRスパイダーが他の国産オープンカーと決定的に違うのは、「屋根を閉められるクルマ」という点に尽きる。「え?」と思われるかもしれないが、一般的な量産オープンカーは「屋根を開けられるクルマ」だ。発想が逆なのである。

常にオープンで乗ることが前提のMRスパイダーは、だからこそソフトトップがビニール製の簡易タイプで、しかも脱着式となっている。雨をしのげれば問題なし、ソフトトップの耐候性や遮音性なども関係ないのだ。

取材車両のソフトトップは傷みが激しかったこともあって、フレームを活かしながら新たにキャンバス地でリメイクしたそうだ。ソフトトップはフロントロック2ヵ所、クォーターピラーロック2ヵ所、ホック15ヵ所で固定される。

ソフトトップは開閉式でなく脱着式というのが他の国産オープンカーとの大きな違い。取り外したら折り畳んでシート後方のスペースに収納する。フロントロック2ヵ所にベルト&フックを引っかけて固定できるようになっている。

「そんな程度なんで雨漏りは当たり前。洗車時も車内に水が…」とオーナー。言われるがままにカタログを見ると、「ソフトトップをかけた状態でも一部雨水が浸入することがありますのでご了承ください」という一文が! それも、下の方の小さくて読めないような注意書きでなく、正々堂々ソフトトップの説明書きとして、である。いくらTRDの特装車両とはいえ、その振り切れぶりが見事すぎる。

外装における大きな特徴が、左右に大きな膨らみを持つフェアリング形状とされたエンジンフード。センターにルーバー、左右にメッシュのアウトレットダクトが備わる。

また、雨水などが直接エンジンにかからないよう、フード裏にはターボ用パネルが装着されるのも特徴と言える。

それと、オープン化にあたってフロア周りの補強は一切なく、目に付くところだとターボ用リヤタワーバーの追加くらい。見えない部分に補強が入っている可能性もあるが、恐らく最低限だろう。というのも、通常はオープン化に伴って最低でも50kg以上は重くなるはずなのに、MRスパイダーはベース車Gの1210kgに対し1230kg(ともに5速MT車の数値)と、わずか20kgしか増えていないのだから。

リヤミッドに搭載される3S-GE型エンジン。最終V型に載るのは吸気側カムに連続可変バルタイ機構が与えられたVVT-i仕様だ。最高出力200psを7000rpmで、最大トルク21.0kgmを6000rpmで発生する高回転型ユニットで、吸気音を“聴かせる”チューニングも施される。

なんにせよ希少なこと確実なMRスパイダーだが、取材車両は生産わずか8台というV型。しかもV型専用ボディ色ベージュマイカメタリックは、この1台しか存在しない激レアぶりだ。

外装ではブラックメタリック塗装のAピラーとフロントウインドウ枠、グロスブラック仕上げのドアミラーも独自の表情を生み出すのにひと役買っている。

ステアリングホイールに赤いステッチが入らないことから、ベースはGリミテッドではなくGということが分かる。また、ステアリングスポークが4本から3本になり、メーターの目盛りが赤になるのはIV型からの変更点。タコメーターのレッドゾーンは7250rpmからだ。

V型ベースのMRスパイダーには標準車とSパッケージが存在。取材車両は標準車で写真のシートが装着されるのに対して、Sパッケージは座面と背もたれのセンター部がブルーになり、それに合わせてドアトリムもコーディネイトされる。

試乗は西湘バイパスで。生産台数の少なさに加え、MR2ベースのオープンカーということもあり、特別感は十分。たまたま遭遇したS2000から、ビシビシ視線を感じたのは言うまでもない。車内への巻き込みが激しいものの、クルージングしながら全身で風を感じられるのが気持ち良い。

状況を確認したら2速まで落としてフル加速。VVT-i仕様の3S-GEはレスポンスが良く、7000rpmまでシャープに吹け上がる。背中越しに飛び込んでくる吸気音が、右足に力を込めさせる。

ボディは割とユルめだ。真っ直ぐ走っていても路面から入力があるとAピラー付近がブルブルッ…と震えるし、レーンチェンジではステアリング操作に対して一瞬遅れてリヤが追従。もうひとつ言えばボディのねじれ感もある。しかし、MRスパイダーはこれで良いのだ。ここまで純粋かつストイックにオープンカーであることを追求した国産車など、他にはないのだから。

■SPECIFICATIONS
車両型式:SW20
全長×全幅×全高:4170×1695×1245mm
ホイールベース:―mm
トレッド(F/R):―/―mm
車両重量:1230kg
エンジン型式:3S-GE
エンジン形式:直4DOHC
ボア×ストローク:φ86.0×86.0mm
排気量:1998cc 圧縮比:11.0:1
最高出力:200ps/7000rpm
最大トルク:21.0kgm/6000rpm
トランスミッション:5速MT
サスペンション形式(FR):ストラット
ブレーキ(FR):ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ(F/R):195/55R15/225/50R15

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TEXT&PHOTO:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)

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