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ワンオフパーツ&他車種流用でEG33をフルメカチューン
水平対向ツアラー、ここに覚醒!
6気筒チューンドと言えば、どうしても定番のRBやJZ系、VQエンジン搭載車に注目は集まっていく。しかし、スバルが誇る水平対向エンジンにも6気筒モデルは存在し、アルシオーネやレガシィ・ランカスター、トライベッカといったツアラーモデルには、大排気量でトルクフルな水平対向の6気筒NAが投入されてきた。
そんな水平対向ツアラーでスポーティな走りを楽しみたいというオーナーの要望を叶えるため、アルシオーネSVXに搭載されたEG33チューニングに取り組んだのが愛知県の“ラック”だ。
そもそものきっかけは、純正パーツが製廃となりリビルド品も見つからなかった4速ATをEJ20ターボ用の5速MTに換装したこと。当初は、走りを楽しむというよりSVXを長く乗り続けるためのMT化だったが、レブリミット6500rpmで低中回転に振られたエンジン特性と、中高回転をターゲットとしたギヤ比のEJ20用MTは相性が合わない。
折しもオイル消費が進んでオーバーホールを考えるタイミングだったこともあり、オーナーはMTで楽しく乗れるエンジンチューニングを決意。手っ取り早くポテンシャルアップが可能なEJ20ターボへの換装という案も浮上したが、オリジナルの6気筒に拘ったEG33のNAチューンがチョイスされた。
「MTが楽しめるエンジンに仕上げましょうと引き受けましたが、過給機チューンはスペース的に厳しいですし、EG33のチューニングパーツも皆無。オーバーホールに必須のガスケットキットすら生廃だったので、とにかく全ての作業が手探りと苦労の連続でした。結果的にスバルだけでなく、トヨタや日産など他メーカーのエンジン部品にも目を向けたパーツ流用やワンオフパーツで、EG33改3.5Lが完成しました」とは、ラックの伊藤さんだ。
メカチューンのデータが全くないEG33だけに、あらゆる作業が手探り。戸田レーシングにオーダーした264度のハイカムも幾度となくプロフィールやリフト量を見直し、ラッシュアジャスターは高回転まで回せるようにRB26用バルブスプリングや3S-G用リフターといった他メーカーのエンジンパーツ流用でソリッド化した。
アメリカで見つけたライナーに打ち替えて、戸田レーシングの特注99.5φピストンを投入したブロック。HKSのEJ20用H断面コンロッド、EG33純正クランクのバランス&ラッピング加工など、細部まで抜かりなく仕上げられる。
また、ヘッドは吸排気ポートや燃焼室に手を加えるのはもちろん、EJ25用ビッグバルブに合わせたシートカットやシートリング拡大加工も実施。バルブガイドはEJ207用に打ち替えている。
3.5L化しただけでなく、中高回転もしっかり使えるように仕上げたEG33改は、メインECUの書き換えではそのポテンシャルを引き出せない。レブリミットを1000rpm引き上げて高回転域まで最適に制御できるようにフルコンのEMtronを投入し、Dジェトロ化も行なった。
エンジンルームでチューンドらしさを感じさせるのが、アルミの光沢を放つサクションパイプだ。クリーナーボックスは純正を使いつつ、Dジェトロ化に合わせて吸気温度センサーを備えたGC8用のエアフロレスアダプターに変更された。
鍛え上げたEG33改のポテンシャルを余さず引き出すために、排気系もテコ入れ。等長集合としたワンオフのステンEXマニとエキゾーストマフラーを与え、高回転までしっかり回せる水平対向6気筒へ仕上げている。
ダイナパックで補正係数を掛けていないため、パワーチェックの結果はカタログスペックに及ばない232ps&28.49kgmとなっている。しかし、4000rpmから盛り上がっていくパワー&トルクは、低中回転に振ったツアラー向けエンジンと思えない刺激的なフィールを楽しませてくれる。
エンジンチューンのきっかけとなったMT換装。当初はGC8用5速MTだったが、GDB用6速MTが入手できたために変更。ワンオフミッションサポートやプロペラシャフト加工、ファイナルギヤを合わせるためのGRB用デフ搭載が行なわれている。
当初は街乗りオンリーだったオーナーは、MTに換装してからサーキットでのスポーツ走行も開始。タイムよりも楽しさを重視するスタンスだが、フットワークの仕様変更や機械式LSD、ブレーキシステムといった周辺セットアップも少しずつ進めていたため、3.5L化で手に入れたNAチューンドのポテンシャルが存分に堪能できる1台へと仕上げられている。
●取材協力:ラック 愛知県長久手市岩作琵琶ケ池20-1 TEL:0561-63-0101
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