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ミニバンカスタムの枠を遙かに凌駕した超大作!
怒濤の馬力が巨体に別次元の加速を与える
この北米仕様の4代目オデッセイ(ラグレイト)は2013年のSEMAショーで初披露され、大きな話題を呼んだ作品だ。
グリルから溢れんばかりのインタークーラーが強烈なインパクトを放つが、よく見ればルーフキャリアやチャイルドシートも装備済み。本気なのか洒落なのか分からないムードを漂わせつつ、車両の側に置かれた解説ボードにはしっかりと「パワーは1029ps」と書かれているではないか…。
メイキングを担当したのは、アメリカで最も注目を浴びるチューニングファクトリー「ビシモト」。代表のビシ・エゼリオハ氏はナイジェリアからアメリカに留学してきた人物で、ホビーとして楽しんでいたドラッグレースの世界で名を馳せ、ショップを開業するに至った。
ビシのポリシーは、とにかく壊れないマシンを作ること。このオデッセイにしても1029psは実測値で、フルチューンエンジンを組んだら6回は組み直し、セッティングも細かく出して全てを科学的、理論的に検証しながらメイキングしていったという。いわゆる理論派チューナーなのである。
細部を見ていく。エンジン本体はJ35A型がベースだが、腰下はARIASのローコンプ鍛造ピストンを軸に徹底強化。ヘッドもオリジナルのハイカムやメタルガスケット等を組み込みながら、高出力に対応できるパワーユニットを作り上げた。ミッションはアキュラTLの6速MTをドッキングしている。
そんな強心臓に、オリジナルのEXマニを介してターボネティクスのBTX7265タービン&RG45ウエストゲートをセットアップ。メカニカル感の演出も徹底し、SPARCOのインタークーラーはグリルを突き破るようにレイアウトしている。最大ブースト圧は2.83キロの設定だ。
また、燃料系はアメリカのカスタムシーンで定番になりつつあるフレックスフューエルシステムを導入。エタノール混合燃料のE85とハイオクガソリンを兼用してパワーを稼ぐのだ。ポート噴射用インジェクターは2200ccに増量され、燃料ポンプも750L/hという超大容量タイプを組んでいる。
6速MT換装に伴い、シフト周辺は綺麗にアレンジ。メーターパネルもリメイクし、レースパックのデジタルダッシュをスマートにインストールしている。
リヤドアを開けると、カスタムロールケージと娘さん専用のチャイルドシートが…。非常にシュールな絵である。ちなみにシートは全て高級レザーで貼り替え済みだ。
AIRRIDE EQUIPMENTNOのエアサスでベッタリと落とされた車高と絶妙のマッチングを見せるホイールは、ストリートだけでなくレースシーンでも高い支持を集めるFIFTEEN52のTARMAC R40。タイヤにはプロクセスT1スポーツ(255/30-20)を合わせる。20インチ履きでスラムド車高というスタンス系の要素も取り入れているわけだ。
SEMAショーに間に合わせるために、製作期間はわずか6週間足らずだったそうだが、決して見かけ倒しでは無いのが凄いところ。完成後に『トップギアUSA』の「壊れるまで走ろう」という無茶な企画で、パイクスピーク登頂を含む数千キロの旅に出掛けたが、「ポルシェカイエンは壊れたのに、このオデッセイは壊れなかった」と誇らしげに語ってくれた。流石である。
Photo:Akio HIRANO TEXT:Takayoshi SUZUKI