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IMSAやDTMを彷彿させるアグレッシブなレーシングスタイル
SEMAショーやモントレー・カーウィークのペブルビーチ・コンクール・デレガンスにも愛車の出展経験を持つカーガイが、念願の東京オートサロン2024出展を果たした。自ら「リコ・スタイル」と名乗る情熱家は、日本のクルマ好きに最大限の愛とリスペクトを捧げる。
夢だった東京オートサロン出展も果たす!
ド派手な黄金色の72年式ダットサン240Z(S30フェアレディZ)と、空冷最終モデルであるタイプ993の97年式ポルシェ911タルガ。その両車のオーナーこそ、「RIKO STYLE(リコ・スタイル)」の名義で活動するリチャード・ジュリアス・グティエレスだ。
文字通り「これが僕のスタイルだ!」と、大のクルマ好きとしてのアイデンティティーを主張することがリコの流儀。ちなみに、「リコ」はリチャードを縮めた愛称なので本来は「RICO」なのだが、日本人にも読みやすいようにわざと「RIKO」にしているそうだ。
オートサロンに出展したS30Zと911の他に、ワイドボディのAE86も所有しているリコ。全てカスタムペイントのゴールドで統一しているのだが、RWB仕様の911を作った折には、日本の仲間たちから「吉原のス●ベ椅子みたい」と面白がられ、そのままYOSHIWARA YUUKAKUもショーカー・ネームに追加。そんな国境を越えたカーガイ同士のコミュニケーションもリコ・スタイルの重要なファクターだ。
240Zはエンジンスワップが当たり前のアメリカではむしろ珍しい、日本伝統のL型チューン。その理由を聞くと「エデュケーション(教育)」という意外な答えが返ってきた。
「アメリカと日本に共通する現象として、若者がクルマに興味を持たなくなっていますよね? 特に味のある古いクルマに対して。なんなら親が子供の出世を望むあまり、率先してボロなクルマを取り上げてさえいますが、私はそれには反対です。私は今45歳で、配管工事の会社を経営しています。それなりの地位と収入を得て、どこに出ても恥ずかしくない身なりだって整えています。でも、見てくださいこのZと911を!伝統を重んじると同時に、クルマを自分の実力でカッコ良く、より速くしていく。こんなに楽しくて、情熱を注ぐ価値のあるものが他にありますか? 私はそんなパッションを日米の若い人たちにも届けたいのです」。
そう自信を持ってリコが紹介する240Zには、280ZX(S130)由来のL28を3.1Lに拡大し、5速MTと共に搭載。キャブはマニア垂涎の50PHHニスモだ。
エキマニも70年代にBREのために製作された当時物のニスモ製をコレクターから買い取って装着。デスビに見えるパーツも123ignitionというメーカーの電子制御イグニッション。旧車らしい雰囲気をそのままに、メンテフリーを実現した優れものだ。最高出力は283psに達している。
インテリアもリアルレーサーを彷彿とさせるスパルタンな雰囲気。ドリルドのステアリングはLongrace製だ。ブリッドのジーグ4を取り囲むワンオフのロールケージは、いつもリコの相棒としてファブリケーションを担うノーキャルのMARCUS FRY RACINGが製作。
アメリカのZTrixが手掛けるIMSAスタイルのワイドボディ&Gノーズを装着。東京オートサロン2024出展に合わせて、OPTIONグループ総帥の稲田大二郎(Dai)へのリスペクトを表現した「初代稲田大二郎」のバナーも添えた。センター2本出しの直管マフラーを製作したのもMARCUS FRY RACINGだ。
もう一方の911も3.6L水平対向6気筒に、パフォーマンスを高める吸排気系パーツを採用。直管のエキゾーストパイプを長く伸ばしているのは、街道レーサーからインスピレーションを受けてのものだ。
RWBのフェンダーは中井啓さんが渡米して現地で取り付けたものだが、実はその時はリコの所有車ではなかったそうだ。リコはその作業に立ち合い、手伝いもしていたのだが、前オーナーはついぞ完成させることができず、ドンガラだった車体をリコが買い取ることになったのだとか。
エンジン&ミッションからパーツ類まで、リコが新たなに一式用意して10年以上の年数を掛けて完成させていったのだという。
3.6L水平対向6気筒エンジンには、アメリカのワシントン州にあるRASANTというメーカーの48φタイプITB(独立スロットルボディ)を装着。一般的にGT3プレナムと表現される大型のサージタンクも備わる。エアコンやパワステは排除し、ダイレクトイグニッションを導入したほか、制御にはMoTeC M800を奢る。最高出力は263ps。
ドライバーの真ん前をクロスバーが横断する強固なロールケージを構築。レナウン製のステアリングとBRIDE製のシートも、RWBとコラボしたリミテッドエディションだ。ゲトラグ製のG50ミッションを操るCAE製シフターには、純レーシングモデルの917用シフトノブを装着している。
ゴールドボディの着想は、元々、F1のジョン・プレイヤー・スペシャルから来たものだったが、いつの間にか悪友たちに吉原遊郭が起源と印象付けられてしまった。ベース車両はルーフ部分のみ開閉ができるタルガで、解放されたルーフを覆うようにLEXANのパネルでカバーしている。
「オートサロンの前には大黒PAにも行きました。インスタで私のことを知ってくれていた日本の若いクルマ好きと交流しましたが、言葉は通じなくても一緒に写真を撮るだけで満足。彼らの笑顔はプライスレスです」。日米を股にかけるカーカルチャーのアンバサダー。それこそ「リコ・スタイル」の本質ということなのだろう。
Photo:Akio HIRANO/Focam Tokyo Text:Hideo KOBAYASHI
●取材協力:アルティメットガレージ横浜本店 神奈川県横浜市西区浅間町4-351-22 UG BLDG1F
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