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ただエコなだけではないコンバートEV仕様の底力!
究極のレトロフィットで生まれ変わったトヨタスポーツ800
エンジンを電気モーターに置き換える技術は、古くからメーカーはもちろん民間でもずっと研究されてきたもの。実際に、EV化されてナンバー取得に至った車両も数多く存在する。
OPTION誌としては、その技術がどこまでチューニング的な意味合いで有効なのかが気になるところ。そこで今回は、トヨタ東京自動車大学校が手がけた、トヨタスポーツ800(通称ヨタハチ)のコンバートEV仕様“トヨタスポーツEV”をモデルに、チューニングの可能性を探っていく。
エンジンルーム上の黒いボックスはモーターコントローラーで、その下には約50psのモーターがエンジンと置き換えられる形で配置される。モーター自体はアメリカ製で、本来はゴルフカートに搭載されていたものだという。
純正では45psという出力のヨタハチ。馬力的に見てモーターの方が優れていることは言うまでもないが、EVの魅力は電流を流した瞬間から100%で立ち上がるトルク特性。セッティング次第では、ドリフト向けの味付けすることも可能なのだという。
燃料のエネルギーを利用するデフロスターやヒーターが使えないため、灯油を燃料とするヒーターを設置。ちなみに、ヨタハチは空冷エンジン搭載車なので、純正でも同様のヒーターシステムが搭載されている。
鉛バッテリーはモーターの両脇に2個、助手席のボックス内に6個、合計8個を直列で繋ぎ、大型モーターに対応させている。バッテリー1個の重量は14kgで、これだけで112kg増となり、そのスペース確保と重量増にどう対応していくのかがEV化の鍵。
より大容量かつ軽量コンパクトなリチウムバッテリーを使えば解決できるかが、それ自体が非常に高価なため、コンバートEVでは現実的ではないというのが現状だ。
高圧電流が流れるため、バッテリーを繋ぐコネクターは強固な専用品を使用する。
車検の関係で1名乗車となるため、本来助手席がある場所にはバッテリーボックスとキルスイッチが設けられている。
メーター周りにはオリジナルには存在しないインジケーターや操作スイッチ類、電圧計、電流計などが追加されている。
車両重量は、オリジナルのヨタハチが580kgに対してスポーツEV仕様は650kg。車検をパスするためには車重に見合った剛性を確保することが不可欠なので、ストック状態ではナンバーを取得できない。
そのため、スポーツEV仕様には至るところに補強が入れられる。それが最も顕著なのが、助手席にあるバッテリーボックス固定バーを兼ねた補強バーだ。
トランクルーム内には、家庭用100Vコンセントで充電できるプラグを搭載。標準状態では30km程度の航続距離となるが、耐久レース参戦時にはトランクにもバッテリーを搭載して航続距離を稼ぐという。
電気で走るため、もちろんガソリンタンクは撤去。この給油口もいずれはプラグインシステムに改良する予定だという。
EV化ということで、もちろんマフラーも撤去。リヤバンパーにはマフラーの逃げのみが残されている。
ちなみに、このEV化にかかるコストはパーツや工賃合わせて150万円以内とのこと。通常のエンジンスワップ以下の予算で完成するわけだ。コンバートEVで旧車を現代の環境に合わせて進化させる、そんな時代はもうすぐそこまで来ているのかもしれない。
●取材協力:トヨタ東京自動車大学校 TEL:0120-76-1929
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