「存在そのものが矛盾の塊!?」ロードスタークーペという異端児を徹底的に振り返る!

特装車両部門のマツダE&Tが開発、生産。

思わず見とれるBピラー以降の造形美!

「小粋で魅力的なデザインのレトロスポーツクーペ」を開発コンセプトとし、量産車にはない個性と自由な表現を持ったクルマが2003年10月に登場したロードスタークーペだ。

その開発と生産に深く関わったのが、少量生産技術についてのノウハウとスキルを持つ“マツダE&T”。ロードスタークーペの生産プロセスは、まずマツダの量産ラインに流れるプラットフォームと、サイドシルアッセンブリーなどの流用部品を生産工程の途中から抜き取って“マツダE&T”に搬入。

そこで、量産車と同じスチール材を使い、マツダ試作部が新規に製作したルーフやリヤクォーター(アウター&インナー)、リヤバルクヘッド、トランクなどの各パネルを溶接して車体をコンプリートする。その後、車体工場へと戻され、通常の車両と同じように塗装、組み立ての工程を経て完成をみる。

ただし、溶接は試作車と同じように手作業だったため、一般的なライン生産のような効率は求められない。そこで、月産台数40台(2台/日)、生産期間20ヵ月、総生産台数800台というプランが打ち出された。

モデルラインナップは、1.6L直4のB6-ZE型(125ps/14.5kgm)を載せるベーシックなロードスタークーペと、1.8L直4のBP-VE型(160ps/17.3kgm)を搭載する同タイプS/タイプA/タイプEの計4つとなる。

このうち、ロードスタークーペとタイプSが飾り気のない最もプレーンなスタイルで、タイプAはイタリアンテイストを表現し、タイプEはクラシカルでエレガントな雰囲気を漂わせる。ちなみに、4つのモデルを合わせた総生産台数は179台。その中から、今回取材したのはタイプSとタイプAの2台だ。それぞれをチェックしていく。

ロードスタークーペ・タイプSをチェック!

まずはタイプS(白)。フロントフェンダーに付くサイドウインカーやリヤバンパーのリフレクターをクリアタイプに交換。小さなパーツだが、これで見た目の印象も大きく変わる。

ホイールはエンケイRPF1 RSで前後8.0Jオフセット+28。そこに195/50R15サイズのミシュランパイロットスポーツ3が組み合わされる。

跳ね上げ式のステアリングボス、ラフィックスGTCにセットされるのはナルディクラシック340φ。また、シフトノブはジョイファスト製、エアコンパネルはRSプロダクツ製が装着される。

運転席はロードスター専用設計のフルバケットシート、エスケレートタイプ1。クッション材には低反発ウレタンが使われ、三次元成形された腰部と背面の形状によりサポート性が高く、疲労感も抑えられる。専用ブラケットを使い、純正シートレールへの取り付けが可能だ。

エンジン本体はノーマルで吸排気を軽くチューニング。EXマニは、マシニングセンターによる削り出しフランジを採用したマキシムワークス製TDエキゾーストマニホールドが装着される。オールステンレス製で42.7φ→48.6φ→54φの4-2-1タイプ。

テールエンド側面にロゴが入るオートエクゼ製エキゾーストマフラー。マキシムワークス製EXマニと併せて全回転域でのレスポンスアップを約束する。また、中高回転域においてはノーマルを上回るパワー感と、NAエンジンらしいカン高く乾いたエキゾーストサウンドも楽しませてくれる。

ロードスタークーペ・タイプAをチェック!

一方のタイプA(赤)は、フェンダーアーチモールを装着するのが外装における特徴のひとつ。他のタイプは全幅1680mmだが、これで1695mmまで拡大される。カーボン製フロントリップスポイラー、サイドステップ、リヤアンダースポイラーもタイプA専用。ホイールは純正16インチで、標準より1サイズ太い215/45サイズのミシュランパイロットスポーツ3を履く。

ディーラーオプション品のアルミ製シフトノブ&サイドブレーキレバーハンドル&シフトプレート、エアコン吹き出し口のアルミべゼル、アルミペダル&フットレストセットを装着。オーディオのヘッドユニットは真空管アンプを使ったCDプレイヤー2DINデッキのパナソニックQC-TX5500だ。

タイプAはブラックの本革シートが標準。タイプEはベージュの本革、ベースグレードとタイプSは撥水加工されたブラックのクロス製となる。また、取材車両はフロアトンネル周辺やシート直後のコンパートメント部をナカマエ製作のキルティングレザーマットでカバー。上質感をさらに高めている。

位置は変わらないが、リヤフェンダーの形状変更に伴ってフューエルリッドも当然リメイクされる。ボディ形状を変えながら、こういった細かい箇所の辻褄合わせもやっていたと思うと、いかに手間のかかる作業だったのかということも察しが付く。

ラゲッジスペースはロードスターよりも室内側(奥)が深い分、クーペの方が容量も大きそう。トランクパネルはクーペ専用品で、トランクを開ける時にアシストしてくれるトーションスプリングも強化型となる。ちなみに、トランクのウェザーストリップはもう純正部品が出てこないとか。

2つの新たな魅力を手にしたクーペ

ロードスタークーペは、ロードスター最大の魅力と言える“爽快なオープンエア”を放棄した代わりに、それを補って余りある2つの新たな魅力を手に入れている。

まずひとつは“スタイリング”だ。セミファストバックのキャビンから、ボリューム感たっぷりなリヤフェンダーへと流れるライン。真横、あるいは斜め後ろからの眺めは見飽きることがなく、2シーターだからこそ成し得たそのデザインが旧き時代の古典的スポーツカーを彷彿とさせる。

もうひとつ、クローズド化による“ボディ剛性の向上”も大きな魅力。それは素のロードスターと乗り比べれば、一瞬で分かるほど差が歴然としている。路面の凹凸やギャップを拾ってもフロントウインドウ周りが小刻みに震えることは当然ないし、ステアリング操作に対する挙動もリニア。フロントが向きを変えてから、わずかなタイムラグを伴ってリヤが追従してくる感覚もない。

ボディのユルさが素のロードスターの味になってる部分はたしかに認めるが、2シーターFRスポーツとしてのパフォーマンスはもう圧倒的にロードスタークーペの方が上だ。また、遮音性に優れるし、2人のオーナーは「ソフトトップに比べてエアコンの効きが断然良い」と口を揃える。

唯一、難点があるとすれば、サイドウインドウとゴムモールの密着度が低くて雨漏りすること。ただ、それを言ったら素のロードスターも同じだ。

「屋根が開かなければロードスターじゃない」という意見はごもっとも。しかし、ロードスタークーペがスタイリングと走りを高い次元で両立した異色にして出色のモデルなのも、また事実なのだ。

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TEXT& PHOTO:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)

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