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先進的な技術の数々はBNR32やZ32に受け継がれた!
日産のスポーツモデル黄金期に大きな影響を与えた1台
日産の技術力を結集して製作されたMID4には初代と2代目が存在するが、今回取材させてもらったのは2代目の方。つまり、通称MID4-IIと呼ばれているモデルだ。
低く、ワイドなボディデザインはデビューから30年以上が経過した現在でも古さを感じさせない。サイズ的には全長こそ4300mmに留まっているが、全幅は1860mmという堂々としたもの。仮想ライバルの1台として挙げられていたフェラーリ328を始め、ヨーロッパのミッドシップスポーツと十分に渡り合えるだけの迫力を持っている。
初代MID4がデビューしたのは日本で行われる東京モーターショーではなく、1985年9月に開催されたドイツ・フランクフルトショーだった。このことからも、MID4は日本国内だけでなく世界中に日産の技術力、デザイン力をアピールするために製作されたものだということがよく分かる。
最終的に量産されなかったため、単純にコンセプトカーとして扱われてしまうことが多いMID4シリーズだが、実は展示だけではなく新技術のテストベンチとして本格的な走行実験にも使われていたことでも有名。初代はVG30DE(230ps)の横置きミッドシップのフルタイム4WDとなっており、当時を知る人からの情報によれば、追浜をはじめとするテストコースでかなり入念な走り込みを行っていたそうだ。
そして、その中で明らかになった改良点を盛り込んで製作されたのが、2年後の第27回東京モーターショーに展示されたMID4-IIである。
このMID4-IIは、初代とは違ってVG30DETTエンジンを縦置きとしているのが大きな特徴となっており、パワーもツインターボ化によって330psまで向上。初代と同様にHICAS(4輪操舵システム)や4WDシステムなども搭載されているスーパーMRスポーツだった。
なお、左右バンクにタービンとインタークーラーを1機ずつ持ったシステムは、その後さらなる改良を受けてZ32に与えられることとなる。
ダミーではないサイドダクトもミッドシップであることの証。ミッドシップの宿命でもあるが、冷却システムに関してはかなり苦労したのではないかと思われる。
エンジンフードには全面にルーバーを刻み、エンジンルームの熱を積極的に排出しようという意図が感じられる。ターボ化したことで熱問題は大きな悩みとなったのだろう。
インテリアはS13シルビア開発時に次点となったデザインを採用。2シーターとしては広さも問題なく、これならばロングツアラーとしても活躍できたに違いない。
一目見ただけでも、ステアリング形状はBNR32へ、メーター周辺のデザインはR32とZ32へとそれぞれ受け継がれていることが分かる。各部の仕上げはコンセプトカーとしては異常なほど高かったのだ。
フロントフードにもトランクスペースが存在している。リトラクタブルライトは初代/2代目ともにMID4のフロントマスクをイメージづける大きなポイントだ。
フロントサスペンションはダブルウィッシュボーンで、ドライブシャフトを避けるためにツインダンパー仕様となっていたのが特徴的だ。
あくまで参考出展とはいっても、それを1度ならず進化モデルまでデビューさせたことや、走行実験も引き続き行われたこともあって「ミッド4は市販されるのではないか?」と、世界中から注目されることになったのは当然と言えば当然である。
実は、撮影時にもリヤエンドのトランク内には当時の計測/制御機器が搭載されており、かなり真剣なテストが行われていたことは容易に想像できた。
MID4は夢で終わった。しかし、前述の通りエンジンはZ32が受け継ぎ、足回りや4WD+4WSシステムはBNR32開発への貴重なデータをもたらした。つまり、MID4は80年代後半から幕を開ける日産スポーツモデル黄金期に、多大なる影響を与えた存在だったのである。
■SPECIFICATIONS
全長×全幅×全高:4300×1860×1200mm
ホイールベース:2540mm
車両重量:1400kg
エンジン型式:VG30DETT
エンジン形式:V型6気筒DOHC24バルブ
排気量:2980cc
最高出力:330ps/6800rpm
最大トルク:39.0kgm/3200rpm
駆動方式:ビスカスカップリング4WD
ミッション形式:5速MT
サスペンション形式:Fダブルウィッシュボーン Rマルチリンク
ブレーキ:FRベンチレーテッドディスク
ホイールサイズ:−−−
タイヤサイズ:F235/55-16 R255/50-16