目次
スタビリティまで考慮した高バランスチューニング
扱いやすさも耐久性も十分なブーストアップ仕様がベスト!
Z31までのロングノーズ&ショートデッキから、現行型RZ34にも受け継がれるワイド&ローへとスタイリングの基本を大きく変えたZ32。日本がバブル景気に沸いた1989年に登場し、国産車で初めて自主規制280psを謳ったモデルだ。
今回紹介するZ32は大阪の老舗、“トライアル”が完全なストリート仕様として仕上げた1台。VG30DETT+5速MTを搭載する2by2 300ZXツインターボがベースとなる。
エンジンは純正タービンのブーストアップ仕様。エアクリーナーやインタークーラーなど吸気系には手を加えず、マフラー交換で排気効率の向上を図り、EVCを使って最大ブースト圧をノーマルの0.7〜0.8から1.1~1.2キロへと引き上げる。チューニングメニューとしては非常にライトなものと言えるだろう。
「燃調と点火時期はF-CON iSで補正。これで純正タービン容量使い切りの380psが狙えます。ただ、ノーマルでも熱的に厳しいエンジンなので水温対策は必須。それさえクリアすれば、コストパフォーマンスを考えてもブーストアップで楽しむのが良いと思いますよ」とは、トライアル山下さん。
実はZ32好きで、中身をS15純正ボールベアリングに入れ替えたニスモタービン改500ps仕様の2シーターツインターボに乗る。
そんな山下さんがブーストアップ仕様を勧めるのは、もちろん自身の経験を踏まえてのこと。というのも、ポン付けタービン仕様でパワーが500ps前後に達すると、アクセル操作に対するクルマの挙動がピーキーになりがちだから。
ホイールベースが短い2シーターは特にその傾向が強く出がちだが、2by2でも基本は変わらない。だとすれば、乗りづらさや扱いにくさを感じる手前まででパワーを抑えておくのが正解。当然、エンジンを始めクルマに掛かる負担は少なくて済むし、それが長く楽しめることにも繋がっていくわけだ。
燃調と点火時期のセッティングはF-CON iSが担当。純正インジェクターは370ccのため、ブーストアップ仕様であれば容量的にはギリギリもつ計算。また、経年劣化を考えると燃料ポンプは交換しておきたい。
ブースト圧はHKSのEVC-Vで制御。最大値をセットするだけでなく、エンジン回転数とスロットル開度を軸としたマップを作成。それを元に、状況に応じてブースト圧を最適にコントロールする。
ステアリングホイールがMOMOコマンド2に交換されている以外、ノーマル状態を保ったダッシュボード周り。山下さんいわく、「前中期型に標準装備のオートエアコンは壊れているクルマが多いですね。マニュアルエアコンになった後期型はトラブルも少ないです」とのこと。ステアリングコラムの下にはテインEDFCのコントローラーも確認できる。
足回りにはテインスーパーストリートダンパーを装着。EDFCを追加して室内からの減衰力調整を可能にしている。また、ブレーキはフロント6ポット&リヤ4ポットキャリパーと大径ディスクローターを組み合わせたブレンボ製キットで容量アップが図られる。
アブフラッグ製フルエアロでアグレッシブなイメージを強めたエクステリア。マフラーも左右デュアルテールのアブフラッグ製を装着する。ホイールはボルクレーシングTE037の19インチ。フロント235/35、リヤ263/30サイズのアドバンネオバAD08Rが組み合わされる。
山下さんが語る。「VG30は基本的に丈夫なエンジンですし、前期型でトラブルが頻発した点火系のパワートランジスタも後期型で対策されました。パワーがあって乗り心地も良く、今でもカッコ良いと思えるクルマがZ32。最終型でも20年以上が経つのでお客さんは激減しましたけど、オーナーの方にはこれからも大事に乗り続けてもらいたいですね」。
ストリート仕様であれば、快適性を犠牲にしないのは大前提。その上で、ストレスを感じないだけのパワーがあれば十分と考える。旧車とは言わないまでも、完全にネオクラシックの領域に入っているZ32で過度なチューニングは禁物。ブーストアップで適度に楽しむのが大人の嗜みというものだ。
●取材協力:トライアル 大阪府堺市美原区丹上87-1 TEL:072-369-3539
【関連リンク】
トライアル
http://www.trial.co.jp/