「“価格が高ければ程度は良い”時代は完全終了!?」スモーキー永田が語る第二世代GT-Rの現実

衰えをまるで見せない人気振り。今や日本だけでなく世界が熱狂。

1989年デビューのBNR32に始まり、BCNR33を経て、2002年に生産が終了したBNR34まで、RB26DETTにアテーサE-TSを組み合わせた第二世代GT-Rの人気にはいまだに陰りがない。むしろBNR34も“25年ルール”に縛られなくなった今、北米を中心に海外からも引く手あまたな様相を見せている。それに触発され、国内では中古車価格が高騰。その一方で、純正新品パーツの入手が困難になるという問題も出てきた。多くのクルマ好きにとって憧れの1台ではあるけど、今や憧れだけでは購入も維持も厳しいのが第二世代GT-R。2024年におけるその現実を、トップシークレット代表スモーキー永田に聞いた。

相変らず高値安定傾向の中古車価格相場を知る

第二世代GT-Rで、まず話題に上がるのが中古車価格。取材前に最新の状況をネットで調べてみると、BNR32が398~1480万円(掲載台数99台)、BCNR33が520~1480万円(同43台)、BNR34が1580~7700万円(同56台)だった。一時よりも相場は落ち着いたと言われるけど、高値で安定しているという傾向は、もうここ何年も変わらない。こうした状況をスモーキー永田はどう考えているのか。

「まず中古車価格は、その個体の内容や状態によりけり。その中で“これは価値が高い”と思う自分の基準は三つある。一つは、ノーマルまたはノーマルに限りなく近く、程度が良くて、走行距離が少なめ。もう一つは、そこそこ手が入ってチューニングやメンテがしっかり施されてきたクルマ。あとは、ウィークポイントの手直しや各部のリフレッシュが済んでる個体だね。中でもBNR34は、映画“ワイルドスピード”で取り上げられたことや、最後の直6スポーツということも中古車価格に大きく影響していると思う」。

それにしても、だ。最低400万円、平均600~800万円になるだろう中古車価格は絶対的に高いと思っているクルマ好きが圧倒的に多いはず。

「でも、考えてみてよ。例えば、屋根付きガレージ保管、新車ワンオーナーで程度極上のBNR32が出てきたとする。駐車場代がひと月3万円なら、年間36万円でしょ。オーナーが30年所有していたとすると、もうそれだけで1000万円以上掛かってるということ。程度がいいクルマには必ず根拠だったり理由だったりがあるわけで、そのクルマに付随するところまで見ないとね。そう考えると1500万円でも決して高くはないと思うんだ」とスモーキー。この話には確かになるほどと思った。そこで、「ただね…」と前置きした上でスモーキーが言葉を続ける。

「そういった本当に価値があるクルマにつられて、程度が良くない個体の価格まで上がってしまっているのが現状。年式や走行距離が似通っていれば、“高い方がモノもいい”というのが中古車に対する一般的な認識かもしれないけど、第二世代GT-Rにはそれが全く当てはまらないんだよね」。

詳しくは後述するけど、トップシークレットでは2018年から、『第二世代GT-R再生プログラム』を展開。これは同社が培ってきた技術とノウハウをフル投入してコンプリートカーを作り上げるプロジェクトだ。そのためには当然ベース車の確保が必要になるが、この6年で中古車を取り巻く状況は大きく変わったとスモーキーは言う。

「当時ベース車は400~600万円で買えたんだけど、今では黙って1.5倍の800~1000万円にまで跳ね上がってる。年々タマ数も減ってきているから、そこはまぁ仕方ないとして、困ったことに程度が悪い個体は2~3倍になってるんだ」。

パーツ供給には改善の兆し。ただ根本的な解決は程遠い

年式が旧いクルマに乗り続けると必ず直面するのが、製造廃止に伴って困難になる純正パーツの入手方法。第二世代GT-Rもその例に漏れないが、日産自動車と日産モータースポーツ&カスタマイズ、さらにサプライヤーがタッグを組み、製造中止となった純正パーツを復刻生産する『ニスモヘリテージ』が本格的に稼働。すでに300点ほどの純正パーツが用意され、少しずつではあるけど、事態は徐々に改善の方向へと向かっている。

スモーキーが言う。「メーカーのこういう動きには感謝してるよ。代用できるところはアフターパーツでも構わないけど、純正パーツでなければならないところもあるからね」。ただし、ニスモヘリテージで十分に事足りているかというと、現実はなかなか厳しい。例えば、シリンダーブロック(標準仕様とN1仕様)やシリンダーヘッド、トランスファーASSY、マフラーなどはヘリテージパーツのリストに並ぶものの、現在は受注停止中だったりする。

「あとは、新品がなくて困ってるのはABSユニットとかね。BNR32に関して言えば、サイドウインドウとかリヤウインドウも欠品してる。サイドウインドウは、モールの劣化によって表面に線状の傷が入っちゃうんだけど、その傷は消せないから交換するしかない。タイプM用を流用しようと思ったけど、それも新品がなかったし。正直、ウチでストックしている部品取り車からパーツを取って、それで回してる部分は多いよね」。

ちなみに、ニスモヘリテージでは順次パーツラインアップを追加。価格が高いという声も確かに聞かれるけど、どこにもパーツがなくて交換できないという事態を回避できるなら、オーナーとしてはそれに越したことはない。それが本音だろう。

第二世代GT-Rを甦らせる再生プログラムの内容

今回トップシークレットに足を運んだ理由は二つある。一つは、ここまで綴ってきた話を直接スモーキーに聞きたかったから。もう一つは、『第二世代GT-R再生プログラム』から生み出された実車を取材したかったからだ。非常にタイミング良く、ファクトリーにはBNR32、BCNR33、BNR34のコンプリートカーが並んでいた。

「お客さんから注文が入った時はベース車を手配して作業を進めるけど、そうでない場合は納得のいくベース車が出てくるのをジッと待つしかない。大事に乗られているクルマはオーナーがなかなか手放さないこともあって、程度のいい個体を見付けるのは年々難しくなってきてるよね」とスモーキー。

また、事故歴についての見解を問うと、「メインフレームを修正しているクルマは基本NG。ただ、フェンダーとかリヤパネルとか、走りに大きな影響を与えない部分の修復歴は気にしない。基準はそのあたりだね」との答えが返ってきた。

こうして選ばれたベース車は一度ホワイトボディ状態にまで戻され、まず錆を完全に撤去。侵食を防ぐため、場合によってはモノコックを部分的にカットして鉄板で貼り替える作業まで行なわれる。

その上で、スポット溶接増しや補強バー追加など各部に効果的な剛性アップ策を実施。こうして、ハイパワーを許容する強靭さと、走行距離を重ねてもヤレが少ない耐久性を兼ね備えたボディが生み出される。

「ステアリングホイールや、シフトレバー&サイドブレーキのブーツはオリジナルを用意してるけど、内外装は基本的に純正パーツを使用する。あれば新品、なければストックしてる中古品でね。その時、程度がいいクルマにはできるだけ程度のいいパーツを…って考えてる。それとシートやドアトリム。もしくたびれてたらウルトラスエードで貼り替えてばっちり仕上げるよ。そういう一つ一つの部分でコンプリートカーとしての完成度が決まるから、細かい所にまで拘ってるんだ」。

ベース車の程度と作業内容によって変動するため、コンプリートカーの販売価格は明記できないが、その内容とスモーキー永田が込めた思いを知れば、今の中古車相場に照らし合わせても納得できる価格になるのは間違いない。

相手は打てば響く逸材。オーナーとしての心構え

所有年数に関わらず第二世代GT-Rオーナーは、今後も乗り続けていく覚悟を決めている人がほとんどだと思う。その一方で、真剣に購入を検討しているオーナー予備軍も相当数いるに違いない。

登場からすでに35年が過ぎたBNR32は旧車、生産終了から22年が経つBNR34はネオクラシックと言っていい。そんな第二世代GT-Rを所有し、乗り続けていくには当然、オーナーにも心構えが必要だ。

「年式を考えれば、何らかのトラブルが出たとしても当然。クルマは全てにおいて消耗するからね。ただ、幸い今時のクルマとは違って、全てが電子制御されてるわけじゃないのが第二世代GT-R。だから、メカニカルな部分でも電気的な部分でも、トラブルの原因は必ず見付けられる」とスモーキー。また、トラブルが発生してから対処するのではなく、未然に防ぐことが重要だとも説く。

「クルマと対話するというか、クルマの気持ちを分かるようになることが大事。というのも、トラブルには何らかの予兆があるから、それを感じ取れるかどうかがってことが大きなポイントになるんだ。あとはクルマの面倒をしっかりみてくれるショップを探すことも、長く楽しく乗るためには必須だと思うよ」。

憧れだけで購入&所有して、「こんなはずじゃなかった…」と後悔するのは悲しすぎる。であれば、第二世代GT-Rが置かれた状況を理解し、オーナーとしての心構えも持つべきだ。

「調子が悪い所があれば、一つずつ直していけばいい。それが一生続くわけじゃないし、どこかで完成するからさ。第二世代GT-Rはそれに応えてくれるし、いいクルマに仕上がることは約束するよ」。スモーキー永田は、そう締め括ってくれた。

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●取材協力:トップシークレット 千葉県千葉市花見川区三角町759-1 TEL:043-216-8808

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