目次
ただの風変わりなスワップ車で終わらない驚異のAE85ドラッグ仕様
2JZやRB26といったハイパワーユニットを搭載するドラッグマシンは数多く存在するが、このチューンドはそれらとは一線を画す仕上がりだ。900psを発揮するモンスターFRでありながら、ゼロヨン9秒台を安定して叩き出すことができる戦闘力。そのメイキングを見ていこう。(OPTION誌2004年1月号より抜粋)
900馬力を活かしきる独自のトラクションアップチューン
エンジンスワップを得意とする愛知県の“C&Yスポーツ”。デモカーである2JZ換装のAE85ドラッグ仕様は、東海エリアのドラッガーでなくてもその存在を知っているはずだ。
トライ&エラーを繰り返した結果、2004年の秋に10秒の壁をついに打ち破り、KSPエンジニアリングが保持していたFR最速タイム(当時)を上回る9秒573をマーク。しかも、9秒台を連発できる安定感まで身に付けたのだ。
エンジンはヘッドから腰下まで手の入った2JZで、ブースト圧2.0キロ時に900psを発生する。パワーバンドは5800〜8800rpm。1速時のみテクトムのIIC-460の制御による点火カットで、レブリミットを7800rpmに設定し、ブースト圧をキープしたままホイールスピンを抑えるセットアップだ。2速以降は、F-CON Vプロで設定された8800rpmレブとなる。
タービンはオリジナルのEXマニを介してセットされたトラストT88H-38GK。これまで使用していた34Dでは、6000rpmスタートと同時にフルブーストが掛かり、その後はタレていく特性だったという。これが38GKに変更したことで、フルブーストを維持したまま走れるようになった。
ラジエターはトランク内に移設。ばっさりカットされたトランクパネル上部から走行風を取り込み、リヤパネル下部へと流す。水温はバーンナウト後で80度、走行後も85度で安定する。電動ファンは2つ装着しているが、走行風だけでも十分に冷却されるとのこと。
ミッションはドグだが、クラッチを切って大事にシフトしているというホリンジャーの6速シーケンシャル。クラッチ操作レスの全開シフトを可能にするには、サスセッティングをさらに煮詰める必要があるそうだ。
足回りを見ていく。フロントは純正を加工したピロロアアームを装着。ノーズが浮き上がった時のトー変化が最小限になるように、メンバーの取り付け位置はノーマルよりも大幅に下げられている。テンションロッドの取り付け位置も同様だ。さらに、ロアアームを少し引っ張ってホイールベースを伸ばし、直進安定性の向上を狙っている。
フロントのダンパーはエナペタルのワンオフ品でバネレートは6kg/mm。リヤはコニのプロストック用ダンパーにベステックスの6kg/mmという組み合わせだ。
デフはスイッチで完全ロックとフリーを選択できる電子ロックデフ。それを内蔵したランクルプラド用のホーシングを加工流用している。当然、リンクは現物合わせのワンオフ品だ。
デフがオフセットしているため、プラド用ホーシングは左右で長さが異なる。AE85に組み込むにあたっては、短い方に合わせてホーシングをカットする必要があるが、それを行うとホイールが内側に入り過ぎてしまいボディ加工が必要となる。そこで、厚さ100mm以上のスペーサーを製作してホイールを外側に出している。
剛性面は市販のロールケージをベースに、エクストラバーを張り巡らせることでボディを徹底補強。バーが追加されているのは、ダンパーのアッパーマウント部やホーシングを支えるアームの付け根などリヤサスからの入力を受け止める部分。つまり、リヤセクションはほぼパイプフレーム化されていると言ってもいい。
コクピットはタコメーターを中心に、右側には油圧計と排気音計が、左側には燃圧計とブースト計がセットされる。ダッシュボード中央に並ぶのは水温計と油温計だ。その右下にあるのは、排圧と2.0キロ以上のブースト圧を確認するための追加メーターだ。
トランクパネルを延長するような形状のドラッグウイングはC&Yオリジナル。東海エリアのドラッグマシンでは装着率の高いパーツだ。また、パラシュートは減速のためだけではなく、フィニッシュラインを通過した後のブレーキング時に不安定になりがちなマシンの挙動を抑える効果がある。
単なるハイパワーエンジンのスワップ仕様ではなく、トラクションをかけるための駆動系セッティングやボディメイキングなど見所が尽きないAE85。FRチューンドのゼロヨン最速を狙って製作された本気の作り込みは、まさに走る伝説と言っても決して過言ではないだろう。
●取材協力:C&Yスポーツ 愛知県愛知郡東郷町大字春木太子32 TEL:0561-38-8325記事が選択されていません
【関連リンク】
C&Yスポーツ
http://www.c-ysports.com/