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SOHCのL型をプライベーターがDOHC化!
ノーマルルックの外見からは想像の付かないハイチューン仕様
S30型フェアレディZが搭載したエンジンは、SOHCのターンフローを採用するL型の直列6気筒エンジン。DOHCのS20型を搭載したZ432という一部の例外は存在するものの、L型の動弁機構はSOHCで不変だった。
初めてL型のDOHC化を現実のものとしたのが日本の“OS技研”。同社が30年前にわずか9基製作したTC-24B1こそ、最初のL型用DOHC4バルブヘッドだ。現在、その復刻版であるTC-24B1Zが受注生産されていることはご存じの方も多いだろう。
そして、今回アメリカで取材をしたのは、そのTC-24B1Zとも異なるアメリカ製のDOHCヘッドを搭載した71年式の240Z。『KN20』という聞き慣れない名前のDOHCヘッドは、フロリダ州にあるDatsunworks(ダットサンワークス)というプライベーターが製作したものだ。
創業者であるデレク・ミネッティが個人で経営するダットサンワークス。3Dプリンターを使った砂型の製作や鋳造技術、CNCによる切削技術を持ち、デレク自身が自分の240Z用にツインカムヘッドが欲しいという願望を原動力に、KN20ヘッドが誕生した。
バルブガイドとバルブシムが打ち込まれた鋳造のヘッド本体に、削り出しで製作されたヘッドカバーがセットされる。写真に写っている削り出しのカムホルダー、カムシャフト、チェーン駆動システム、DCOEインテークマニホールドなどは個別に購入を選択可能。
ホンダの直列4気筒エンジンであるK20型のDOHCヘッドを3Dスキャンし、L型6気筒の寸法に合わせてCAD上でデザイン。コピーする対象がK20型だった理由は、カムシャフトを保持するカムホルダーが元々取り外し可能な設計になっているため。
カムホルダーが後付けできると分かっていればCAD上でのデザインの自由度が上がり、ヘッド本体にカムを受ける凹面を設けなくて良いので、鋳造する時に求められる精度のハードルも下げられる。KN20というネーミングは『K20』に日産の『N』を足した造語だ。
現在、17基が存在するというKN20ヘッドのうちの1基を搭載したのが、カリフォルニア州サンノゼにあるZ Car Garage(ズィー・カー・ガラージ)の240Z。エンジンを組んだのはアメリカの老舗チューナーであるリベロレーシングだ。腰下にはリベロのストローカーキットで排気量を3.1Lまで拡大したL28型ブロックを使用。4バルブ化に合わせてバルブやピストンなどもリベロでマッチングが図られ、最適なものが調達された。
KN20ヘッドとL型ブロックを合体させる上では、特別な加工は必要ないとのこと。ただし、燃焼室や付属される削り出しのカムシャフトは未完成の状態で出荷されるため、エンジンを組むビルダーがポート研磨やカムシャフトの切削仕上げを施す必要がある。
インマニはKN20ヘッドに付属されるDCOEタイプで、それにジェンビーの6連スロットルボディとインジェクターダイナミクスの大容量インジェクターを接続。
ワシントン州にあるRACECRAFTが製作したワンオフの等長エキゾーストマニホールドを装着。KN20ヘッドに水を回すオリジナルのラインも製作してある。
点火系にはGMの純正品によく使われる6気筒用のイグニッションコイルを流用。クランク軸に設けた歯車で、クランク位置を検出するクランク角センサーも設けてある。ちなみに、KN20に付属される削り出しヘッドカバーはダイレクトイグニッション化にも対応しており、各気筒にイグニッションコイルを固定するビス穴を開けるためのドリルホールが前もって設けられている。
インジェクション化に加え、ハルテックのエリート750による緻密な制御も行なったことで最高出力は約357ps、最大トルクは約337Nmを実現。最高出力の発生回転数は8100rpmに達し、ゴキゲンなフィーリングとサウンドをもたらす。
トランスミッションはベルハウジングアダプターを介してZ33純正のCD009型6速MTをドッキング。室内の雰囲気に合わせてシフトレバーもレトロフィットされている。
ホイールはパナスポーツのG7-C8S。Z Car Garageオリジナルのビッグブレーキと強化アクスル、OS技研のLSDなども備わるが、ノーマル然とした姿からはそう感じさせないスリーパーだ。
完成後、ツーリングイベントなどにも自走で参加したりしているが、全くのノントラブルということで信頼性もしっかり担保。L型チューンの最新にして究極とも言えるメニューが、またひとつ爆誕した。
PHOTO:Akio HIRANO/TEXT:Hideo KOBAYASHI