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高い資質を磨き上げるRE雨宮流のチューニングメソッド
ダウンフォースを味方にする高機能エアロも超重要
今でこそ、過熱する筑波スーパーラップの影響もあり1分切りでラップできるチューニングカーは増えてきたが、その大半は内装ドンガラのいわゆるサーキットスペシャルばかり。1分の壁というのは、普通のナンバー付き車がたやすく突破できる領域ではない。そこをオーディオ&エアコンなど快適装備満載のFD3Sブーストアップ仕様であっさり59秒台をマークしたのだから、これはとてつもない快挙と言っていい。
速さの秘密をRE雨宮の代表にして、レジェンドチューナーである雨さんに尋ねると「強いて挙げるとするなら純正ターボの制御方法だね。改造って言うとパワーにばかり目がいくけど、ウチはフルブーストに達するまでの時間を短くして有効なパワーを早く出すことを重視してるの。それが速さに直結するから、ブーストアップでもタービン交換車をブチ抜けたりするんだよ」との答えが。
FD3Sはシーケンシャル式のツインターボを採用している数少ない車種だ。このシーケンシャルとは、低速トルクとレスポンスを追求した結果の産物で、低回転域ではプライマリータービンを回し、4500rpmを境(シーケンシャルタイミング)にセカンダリータービンが駆動するというツインターボシステム。これを生かすも殺すもチューナーの腕次第で、純正タービンを使ったブーストアップ仕様の場合、このシステムの攻略がいかに重要であるかは言うまでもない。
RE雨宮ではメインECUにパワーFCを使い、プロフェックでブースト制御する方法を取る。パワーFCを使う理由は簡単。この価格帯(FCコマンダーセットで10万8000円)のフルコンで、シーケンシャルタイミングを自由に変更できる唯一の存在だからだ。
そしてブースト制御にプロフェックを使用することについては、「パワーFCでブースト制御もできるけど、複雑なコントロールは不可能。だからブーコンを使うんです。車速や回転数ごとのブースト制御が可能だしソレノイドの性能も高い。やり方次第でブーストのレスポンスや立ち上がりスピードを飛躍的に上げられますから」と、雨さんに代わって制御系担当の掘さん。
シーケンシャルタイミングの雨宮流セッティングを大まかに説明すると、上り側(アクセルオン時)のポイントはノーマル4500rpmから4000rpmに下げてツインターボ領域を増やす。逆に戻り側(アクセルオフ)はノーマル3000rpmから4000rpmに上げて、シングルターボ領域を増やし再加速時のモタツキをなくす。つまり、考え方としてはシーケンシャルツインターボの美味しい部分を見極め、その領域を使い切ることにある。
そしてこれらがプロフェックでセッティングされた緻密なブースト制御と絡み合うことで、とんでもないブーストレスポンスを持ったパワーユニットが誕生する。これこそがRE雨宮流の13B-REW調律術なのだ。
その他にパートについても、「足と空力もポイントだよ。セブンはスピードが上がっていくとピーキーな特性が顔を出してきて、フロントタイヤの接地感も無くなっていく。それを解消するためのサスセッティングと、確実にダウンフォースを発生させるエアロが重要!」とのこと。
この車両は、RE雨宮が絶対の自信を持つクァンタムベースのオリジナル車高調を装備。アーム類はサスペンションに入力される負荷に対して、リニアに足を動かすことを目的にフルピロ化している。
「ブレーキに関してはノーマルでOK。このセブンには4ポッドを装着しているけど、これは上級者向け。中級者までなら純正17インチにメタルパッドで十分。セブンって軽くてブレーキにかかる負担が少ないからね」。タイヤは前後ともアドバンネオバ(255/45-17)を装着。最近では18インチを選択するユーザーが多いが、雨さんいわく17インチの方がバランスは良いとのこと。
そしてエアロパーツは、全てスーパーGTで得たノウハウをフィードバックして開発されたRE雨宮製をインストール。カナードやGTウイングも含めて車検対応というのも、ストリートに拘るRE雨宮製品ならではだ。
FD3Sが生まれ持った資質を壊さないように、エンジンとサスペンション、サスペンションと空力、空力とブレーキ、ブレーキとエンジン、というように、あらゆるパートをリンクさせながらチューニングを考えていく。後は各パートを少しずつポテンシャルアップさせてやるだけで良い。もちろんそのさじ加減は、RE雨宮がこれまで積み上げてきた経験とノウハウがあってのものだが、それだけでFD3Sは驚くほどの動力性能を発揮してくれるというわけだ。
●取材協力:RE雨宮 千葉県富里市七栄439-10 TEL:0476-90-0007
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