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SR20DE改2.2Lの心臓部はドライサンプ化でレブ9500回転を実現!
目指したのは「SR20NA最強」のドリ車
物語は、N2レースに使われたSRエンジンが“テックアート”に入ってきたところから始まる。
いわゆるN2仕様と呼ばれるそのエンジンは、織戸学選手の出世レースとして知られる、PS13ベースのスーパーシルビアチャンピオンカップのレギュレーションに合わせて製作された代物だ。NAメカチューンながら270ps以上のパワーを絞り出していたというから恐れ入る。
その時すでに「NAシルビアの限界を突き詰めたい」という思いを抱いていたオーナーは、「こういうのが手に入ったんだけど」というテックアート鎌田代表の提案に迷う間もなく飛び付いたのである。
最初は2.0Lのままで使っていたが、ドリフトの酷使でコンロッドがブロックを突き破り粉々に…。とはいえ、N2仕様の肝はブロックではなくヘッド側。ハイカム、ラッシュキラーやビッグバルブ&ポート研磨、ベリリウム封入ガイドといったパーツ類は無事で、それを活かし切るためのスペシャルチューンを施した腰下を用意し、究極のSR20DEを作ろうと考えた。
注目のエンジンメニューは、91mmストロークのBC製クランクシャフトにクロワー製コンロッドとCP製87φピストンでストロークアップ。ピストンはピストンリングを1枚減らしてショート化し、トップ、セカンドのみに。そしてコンロッドを6mm延長することで、短くなったピストンに対する角度を適正化してより高回転まで安心して回せるようにした。
一方のヘッドはN2仕様を踏襲。ビッグバルブ、ポート拡大が施され、ラッシュアジャスターではなく高回転でカムの追従性が良いパルサーGTi-Rのソリッドピボットになっているのが特徴だ。カムはIN312度、EX304度でいずれも13mmのハイリフト。バルブスプリングはナプレックのダブルだ。
スロットルは4連50φのN2スペック。いずれテックアートでワンオフ品を作って換えたいと考えている。インジェクター容量は400cc。
40φから60φ集合へ繋がる4-1等長EXマニはテックアートのワンオフメイド。通常クランク角センサーを避けて凹んでいるウォーターアウトレットは、オートサービスMORIのボトルネックがないものを使っている。
ウエットサンプのオイル供給では油圧の安定化が難しいと判断し、ナプレック製キットでドライサンプ化。そのため、ドライサンプ用のスカベンジポンプとオイルタンクなどメカニカルな装備が搭載されている。
使用オイルは、モチュール300Vの5W-40。合計9.0Lものエンジンオイルが入り、メンテの交換に使う量は6.0L。オイルクーラーやホースに残る量だけでも3.0Lあるそうな。
エンジンルーム内に可能な限りフレッシュエアを取り込むべく、ラジエターはD1GPマシンのようにリヤマウント化。トランクパネルに設けたダクトから取り込んだフレッシュエアは、そのままダイレクトに水平マウント仕様のラジエターを通過し、フロア下へと抜けていくレイアウトだ。
電動ウォーターポンプは定番のEWPで、容量は115L/分の中サイズ。ちなみに、冷却水の総量は純正の約2倍の13.5Lもあるそうだ。燃料は純正タンクからコレクターを通してデリバリー。
エンジンマネージメントにはフルコンのモーテックM84を使用し、セッティングはAVOが担当。レブリミットは9500回転、圧縮比も13.4の超ハイコンプ(純正NAは9.5だが)、通常のハイオクガソリンを使えば全く問題ないレベルのセットだそうだ。
足回りは、アラゴスタベースのテックアート謹製ドリフト用車高調を軸に構築。スプリングはスウィフトでレートはフロント9kg/mm、リヤ6kg/mm。切れ角アップはユラモードナックルで達成している。
切れ角アップに対応するネガティブキャンバーを手にするべく、ロアアームは50mm延長加工。車高調は立ててロアアームで寝かすセットアップだ。
リヤはD-MAXの3点アームが入ったオーソドックスな仕様。ドリフトを最優先したという車高はかなり高めだが、ルックス的にはもっと低くしたいとか。
鉄板で成形されたダッシュボードが目を引くインテリア。メーターはデフィ製で統一。ロールケージはセーフティ21製をベースに、テックアートでガゼットやサイド&クロスバーを追加したスペシャルだ。
純正の許容馬力を超えるため、ミッションはニスモ6速に変更。ファイナル4.6で、日光1コーナーに3速がピッタリ合うというセットだ。クラッチは吹け上がりを優先してATSのカーボンシングルとしている。
エクステリアは、大塚風ゼクスフルエアロにフロント不明ワイドフェンダー、リヤオリジンワイドフェンダーという構成。ホイールはワークエモーションCRkaiの9.0J+15を前後通しで履き、ワイトレはフロント30mmのリヤ50mm。タイヤはフロントがレブスペックRSスポーツ(245/40-17)、リヤがゼスティノ07R(235/45-17)を愛用する。
D1GPを中心に、パワー至上主義が蔓延する昨今のドリフト界で、そこまでNAを追求する理由は“浪漫”の一言に尽きる。サーキット専用と割り切っているからこその大胆仕様とも言えるが、こういう仰天チューンドが生息しているからドリフトの世界は面白いのだ。
●取材協力:テックアート 埼玉県八潮市浮塚54-1 TEL:048-994-2081
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