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様々な仕様をテストしてきた老舗チューナーの金言
これまで何度となく“カンサイサービス”へと足を運び、チューンドRB26の取材をしてきた中で、ひとつ気づいたことがある。「そういえば、ツインターボ仕様しか見たことがない…」と。そこから導き出された結論は、“向井さんはツインターボ好き”ということだ。
が、ある時、雑談をしながら何気なくそれを問いかけたところ、「いやいや、そういうわけではないんやけどな」と予想外の言葉が…。何やら、これは面白そうな話が聞けるかも!? ということで、向井さんが“個人的に好むタービンチョイス”を軸とした、チューンドRB26の仕様について深く掘り下げてみたい。
カンサイサービス向井代表が語り尽くす
「ツインターボはノーマルっぽさを求める大人の選択」
BNR32が出てから、RB26ではそれこそ色々な仕様を作ってきた。
まずツインだとHKSのGT系はもちろん、その前にあったHKS T3/T3GトラストTD06、ニスモN1、ウチのオリジナルLCタービン…そういえば、シーケンシャルツインなんてのもやったな。
今回、取材のために用意したツイン仕様は2.8L+Vカム+GT2530。目標とするパワーやエンジン特性とは別に、ボンネットを開けた時の見た目や雰囲気もタービン選択の上では重要な要素やろ。
年令層が高いユーザーからは、「見た目はノーマルっぽく仕上げたい」というリクエストが結構あるんよ。となると、必然的にアクチュエーター式のツインターボになるわな。
吸気系はHKSレーシングサクションリローデッドで効率アップ。制御系にVプロを導入することで当然Dジェトロにしとるよ。
ブースト圧はHKS EVCでコントロールしとるけど、常時1.1キロで576.1ps/7400rpm、66.5kgm/5300rpm。さらに、最大1.4キロで600psオーバーや。
一方のシングルもHKS TO4系にT51系、トラストTD07/08、KKKのF1タービンと、大抵のタービンはテストしてきたと思う。
中でも多かったんは、このBNR34と同じ2.8L+Vカム+TO4Rタービン仕様。サクションパイプ周りのレイアウトもシンプルで、見た目の印象はツインターボ仕様と大きく違うやろ。インパクトがあるんは、やっぱりビッグシングルやしね。
TO4Rはもう絶版やから、今やとGTIII-4R(TO4Zの後継)を選ぶことになるけど、パワーが出すぎてしまうんで個人的にはコンプレッサー側の羽根がもう10%くらい小さいとええなぁ…と。でも、やっぱり2.8L+Vカム+GTIII-4RがRB26で最高のパッケージングやと思っとるよ。
ちなみに、VカムはGT2530ツイン仕様だとステップ1タイプBやけど、TO4R仕様には作用角/リフト量ともに拡大したカム(248→264度/8.6→10.0mm)を持つステップProを使っとる。これで618ps/7420rpm、最大トルク69.7kgm/4970rpmを発揮しとるよ。
色んな仕様を作って分かったんは、RB26=直6で低回転域からレスポンスを向上させようと思うと、ツインではどうしてもハーフスロットル時に吸気干渉が出てしまうこと。
ぎりぎりサージングしてないレベルやし、コンプレッサーの羽根を作ってやればある程度は消せるんやけど、乗ってるとそれが気になってしょうがないんよ。もちろん、アクセル踏んじゃえば関係ないし、性能とは次元の違う話ゆうことも分かっとるんやけどね。
後はL型キャブターボの存在。シングル仕様の上で伸びる感覚がたまらなく良くてな。もう30年くらい前のことやけど、その印象が未だ強烈に残っとるんよ。
RB26でツイン仕様かシングル仕様か?ってなった時、個人的に断然シングルが好きゆうのは、そのへんに理由があるわけや。
「ビッグシングルは吸気干渉とは無縁の気持ち良い回り方が魅力」
一昔前は800psとか900psとか、パワー志向のユーザーがシングル仕様を好む傾向にあったと思う。フィーリングは二の次で、追求するんはとにかく速さのみ。
ただ、タービンの性能が良くなって、それを活かせるエンジンチューンも確立されてきたことで、状況は大きく変わったと思うんよ。
例えば、今回取材してもらったBNR34が装着してるTO4Rは、低中速域でそこそこトルクがあって上も伸びてくれる。しかも、それを回すエンジンには2.8Lキットがあるし、Vカムも用意されてるやろ。これらを組み合わせると、2000~3000rpmのトルク特性が劇的に改善されて、ハーフスロットルからの踏み直しでもアクセル操作に対するトルクの“ツキ”が抜群に良くなる。
何より3000rpm前後で巡航してて、そこからアクセルを踏み込んだ時にスッ…と伸びてくれる感覚。これはシングル仕様ならではのフィーリングで、走っててとにかく気持ちええんよ。
それと、加速してる時の音な。直6のRB26だとシングル仕様の方が澄みきったええ音をするんや。元々、回転バランスに優れる直6はスムーズなフィーリングやけど、その邪魔をしないと言ったらええんかな。ツイン仕様は吸気干渉するポイントで一瞬、音が曇る。でも、シングル仕様にはそれが全く無いからな。
「求める特性によってタービン選択は大きく変わる」
ボンネットを開けた時に太いサクションパイプが通ってて、その先に大きなタービンがドン!と構えてる。見た目のカッコ良さという点でも、もう圧倒的にシングル仕様の勝ちやろ。
確かに、ツイン仕様であえてノーマル風に見せたいというオーナーもおるけど、チューニングカーらしさを思いっきりアピールできるんがシングル仕様の魅力やと思うで。
ただ、BNR32とBCNR33/BNR34とでは、選ぶタービンが変わってくるよ。基本設計が古く、軽量でホイールベースも短いBNR32やと楽しく乗れるんは500psまでやと思う。となると、TO4EやTD07あたりで十分やろな。
逆に、クルマがしっかりしてるBCNR33やBNR34なら600ps前後まで受け止められるから、TO4Zクラスを組み合わせてやるんが面白い仕様になると思うよ。
あ、ここで話したんは、あくまでも“RB26が大好きなオーナーとしての意見”やで。それをお客さんに押しつけたりすることはないから、くれぐれも勘違いせんといて!
●取材協力:カンサイサービス 奈良県奈良市小倉町1080 TEL:0743-84-0126
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