「冗談が現実に!_」EP82スタタボでパイクス・ピークに挑むサラリーマンの熱き物語

夢のパイクス・ピーク参戦談

軽い気持ちで発した言葉が現実に!?

パイクス・ピーク・インターナショナル・ヒルクライム。例年、独立記念日の前後にアメリカのコロラド州で開催されているこの偉大なレースは、ロッキー山脈にある標高4301mの頂上(=パイクス・ピーク)を目指し、全長19.99kmのコースを駆け上がるヒルクライム競技だ。

そんな“The Race to the Clouds(雲へ向かうレース)”の別名で知られる、度胸試しのレースに、2年連続、愛車のEP82型スターレットを持ち込んで参加した強者が今回紹介する八木さんだ。

モータースポーツはあくまで趣味で、仕事は普通のサラリーマン。節約して資金を蓄え、有給休暇などで時間を作り、アメリカの随一のヒルクライム競技に参加してきたのだという。いちばん最初のクルマはファミリア(BMFP)で、時代背景もあって峠通いから林道走行にハマり込み、その後レガシィに乗ったことでラリーやダートラに参戦した。

八木さんとEP82の出会いは、30歳の頃。地区戦からのステップアップを目論み、全日本ラリー参戦用の車両を探していた時に、2WD部門のEP82はリーズナブルで戦闘力が高い&参戦コストも節約できそうだと選んだのだ。ちなみに、普段はZC6型BRZを足として使っており、過去にはインプレッサWRXなども乗り回してきたが、“操る楽しさ”という観点でEP82に勝るクルマはないと今でも考えているという。

その後、身の丈にあった競技として御岳高原ヒルクライムに参加するようになり、2018年からパイクスピークに遠征を重ねていた小林昭雄選手と交流が始まってその魅力を聞かされた。半分冗談で「出たいですねー」と言ったら、段取りやノウハウ、参戦予算の内訳などを教えられ、さらに「行くなら協力するよー」などという聖人が次から次へと名乗りを上げてくる状況に。その結果、「1回くらいなら出れるかも!?」と気持ちが変化していったのだ。

とはいえ、選考基準も厳しく競争率も高いのがパイクス。ダメもとで参加申し込みをしてみたところ、あっさり受理された。参加のためには、レギュレーションに合わせた車両の改造を加え、渡航や車両運搬の準備や現地ショップにサポートの要請など大量のタスクに追われつつ、アッという間に現地入りのタイミングを迎えた。

そして初参戦の2023年6月、現地に集ったマシンは500psオーバーのモンスターばかり。軽さだけが取り柄のスターレットでの参戦に、不安な気持ちが込み上げたという。ちなみに、スタートは予選順。八木選手のスタートは約70台の参加のうち60番手。予選からトラブルが続いたが、12分33秒959というタイムでなんとか完走し、総合54位&クラス13位で競技を終えた。もちろん、満足のいく結果ではなく翌年の参加でのリベンジを誓ってパイクスピークを後にした。

そして、日本に戻ると2024年の参戦準備。まず、パワー不足と不調があったエンジンは知人に紹介されたダンディ田中に相談し、BNR34用純正改をセットした220馬力仕様に。クルマが別物になるほどエンジンパワーとレスポンスが向上したという。さらにサスペンションはBILSに依頼し、クルマの動きは大きく改善された。

国内で流通していたロールケージにはパイクス・ピークのレギュレーションに合致するものが無かったため、完全ワンオフで製作された。

2024年の参加台数は60台、八木さんのターゲットは2016年に同じスターレット(KP61改/4A-G搭載)が出した11分42秒877に定めた。昨年不調な車両で12分33秒959だったことを考えると十分狙えるタイムだ。

6月という時期でありながら、練習走行日はアッパーセクションで降雪があるなど、富士山を越える標高での天候は侮れず、練習走行の順延も発生。高山での圧力変化によるものなのか、EP82は走行中にオーバーヒート傾向。対策としてウォータースプレーシステムを現地で追加。予選結果から走行順序は55番手ということになった。

迎えた決勝当日は天候にも恵まれ、1年間かけた準備の成果を見せるべくスタート地点で順番を待つ。そしてレース開始。去年より50秒ほど速いタイムを目指していたが、どうしてもアベレージスピードが伸びない。気持ちを奮い立たせながら攻め続けるも、総合タイムはメカニカルトラブルを抱えたまま挑んだ2023年とほぼイコールの12分31秒200という結果に。順位は総合43位&クラス12位だった。

目標に届かず、苦渋を味わった2年目の戦いだったが、八木さんは子供のように目を輝かせながら語る。

「1年準備して走るのはたったの10分ちょっと。でも、なんだか充実してるんですよね。で、また行きたくなるんです。2年計画だったけど、1年休んでもう1回だけ行っちゃおうかな? なんて今自分の中で考えを巡らせているところなんですよ」。

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