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クルマ遊びの楽しさを広めるのがブランドアンバサダーの使命
MY24 GT-Rニスモの実力や、いかに?
元R35GT-R開発責任者としてお馴染みの田村さん。現在は、日産自動車ブランドアンバサダーとして各方面で活躍している男が、今回は日本唯一のドラッグレースシリーズ戦「ドラッグフェスティバル」に来場。会場の熱気を肌で感じると共に、GT-Rニスモのステアリングを握りドラッグスリップを疾走した。
日産自動車ブランドアンバサダーという立場は、その名の通りクルマ好きにもっとGT-Rの魅力を伝えることが使命。そのため、レースやイベントなど、クルマ好きが集まる楽しそうな場があれば足を運ぶことも仕事のひとつ。しかし、立場が変わったとしてもその根本は単なるクルマ好き&チューニングカー好き。速いクルマが集まるとなれば自ずとテンションも上がってくるというものだ。
「ドラフェスは3年前にTスペックをリリースした時にも視察させてもらっているんです。ドラッグレースなどGT-Rの実力が発揮できるイベントをもっと盛り上げたいと思っていたんですが、なかなかスケジュールが噛み合わなくて…。今回はタイミングも良かったし、有志が僕にGT-Rニスモを貸してくれることになったので、見学だけじゃなくて走っちゃおうってことになったんですよ」。
田村さんが乗るのは、GT-Rニスモは走行距離わずか2000kmのフルノーマル車。カタログ上での数値ではなく、実際にそのパフォーマンスを知り、魅せるいい機会でもある。ちなみに、社内のテストコース上での参考タイムは11秒3とのことだ。
エキシビションとして対戦するのは2023年シーズンで、オープン11クラスシリーズチャンピオンを獲得した女性ドラッガー“まるるん”のTスペック。国産市販車最高峰となる、R35GT-R頂上決戦の火蓋が切って落とされたのだ。
ちなみに、まるるんが乗るTスペックは軽量化など一切行なっていないが、リヤタイヤのみドラッグ向けのNITTO NT555RⅡ(305/35−19)を装着。同じノーマル同士とはいえシリーズチャンピオンとして勝ちに拘る姿勢を見せつけている。これには田村さんも「相手はドーピングしてるじゃん!」と苦笑い。
注目の戦いは、勝利に執着したまるるんのフライングによって田村さんが勝利。タイムは11秒162、終速201.68km/hという好記録をマークし、GT-Rニスモの高い実力を証明した。
ところが、この結果に納得がいかなかったのがまるるん。再戦を希望して第2ラウンドへと発展することになったが、田村さんの乗るニスモがスタートでミッションの加熱による違和感を覚えたため、アクセルを戻して戦線離脱。結果として1勝1敗のドローでGT-R対決は幕を閉じたのだ。
GT-R対決を終えて、改めて今回の感想を伺ってみることにした。
「僕らの若い頃は、良い悪いは別としてカジュアルなゼロヨン遊びは盛んでした。今は時代が変化して、ストリートで競争なんてナンセンスですからね。その代わりドラッグレースイベントは、より洗練された“競技”に進化したって感じなんでしょうね。路面コンディションは普通の道路とは全く違うし、クラッチのミートタイミングとか、速く走らせるためにやらなきゃいけないことを考えなくちゃいけない。GT-Rはノーマルでも高出力なこともあり、楽しめる要素がたくさんあるように感じます。たかが直線なんですが、その勝負にはストールやホイールスピンを避けるべく、走るごとに工夫しながら、それでいて自分のクルマでアクセルを踏み抜く楽しみが味わえる。これこそクルマの楽しみ方の全てであって、モータースポーツの原点なんじゃないかな」。
「R35GT-Rに関していえば、やっぱり難しいなって思いましたね。ローンチを使えばタイムはもっと速くなるんだけど、隣に対戦相手がいてスタートの駆け引きがあるわけじゃないですか。自分のタイミングでスタートできるならローンチは効果的だけど、並んじゃうと威力を発揮しきれなかったりもするんです。この点はさっき2000psのR35GT-Rをドライブしている方とも話したんですが、やっぱり駆け引きとか頭を使うという楽しみもドラッグレースにはあるんですよね」。
「でも、ニスモはノーマルで11秒ってすごいよね。自分がLメカとかで走っていた40年前は想像もできないタイムだし、終速200km/hオーバーなんて夢にも思わなかったよ。昔からサーキットでは日産車が好まれていたけど、チューニングの歴史が自動車メーカーの技術を押し上げてきたとも思うんだ。だからチューニングカーがその実力を測る場として、ドラッグレースは盛り上がって欲しい。そしてGT-Rに関していえば楽しく遊べる場なんだから、その性能を十分に味わえるドラッグレースに足を運んでみてもらいたいって感じましたね」。
今回は慣らしも終わっていない真新しい借り物のGT-Rニスモだったこともあり、若干遠慮気味だった様子の田村さん。フル装備で1740kgの車体でも、クラッチに当たりがついたら11秒フラットも余裕で狙えると語る笑顔は、単なるクルマ好きの顔そのものというわけだ。
⚫︎取材イベント:DRAG FESTIVAL WEST 2024 RD3 セントラルサーキット