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ボディ色ブレイズレッドでガラスサンルーフ付き
カタログのトップを飾る、まさにそのままの仕様!
日本がバブル景気の波に飲み込まれつつあった1987年5月、カペラとしては5代目となるGD系が登場。当初、ボディバリエーションは4ドアセダンと5ドアハッチバックのCG、2ドアクーペのC2の計3タイプとされた。
GD系カペラは、圧力波を瞬間的に利用する過給システム、P.W.S.(プレッシャーウェーブスーパーチャージャー)を搭載した2.0L・RF型ディーゼルエンジンや、電子制御車速感応型4WSなど、世界初となる先進のメカニズムを採用したマツダの意欲作だった。
左リヤの足回りを見ると、後輪を操舵するラックとタイロッドが確認できる。ちなみに、これらのユニット追加によってスペースが食われたため、4WS車の燃料タンク容量は非4WS車の60Lよりも少ない57Lとなっている。
スペシャリティクーペという位置付けだったC2は、2.0LモデルのGT-Rが直4DOHCのFE型を、1.8LモデルのGT-Sが直4SOHCのF8型を搭載。1988年2月にはCGに初めて採用された4WSがC2 GT-R/GT-Sにも設定され、ラインナップが拡大した。
取材車両は1989年6月に実施されたマイナーチェンジ後の最終型で、FE型エンジン搭載の最上級グレードC2 2000DOHC 4WS。GT-R/GT-Sというグレード名が消滅し、F8型がDOHC化されたのもこの時だ。
このFE型エンジンは、前年発売された限定300台のアンフィニに先行搭載されたハイオクガソリン仕様。5速MT車が150ps/19.0kgm、4速AT車が145ps/18.8kgmと、組み合わされるミッションによってスペックが異なり、それぞれの発生回転数も5速MTの方が500rpmずつ高くなっていたりする。5速MT車はスポーティな走りを、4速AT車はイージードライブを楽しめるよう、わざわざエンジン特性を変えてきたところにマツダのクルマ作りに対する真面目さが感じられる。
そんなC2は、前後ブリスターフェンダー化によってセダンやCGとは見た目の差別化が図られる。ボディ色は鮮やかな赤が印象的なブレイズレッド。さらに4WS系にオプション設定されていた電動ガラスサンルーフも備えるなど、カタログの巻頭に出てくる仕様そのままだったりする。
世界的に絶滅の危機に瀕している3ボックスのノッチバッククーペは端正なフォルムで今の時代には新鮮に映るし、5人乗り(実質4人乗りだが)で独立したトランクスペースを持つなど実用性も文句なし。前席の背もたれを倒さないと後席にアクセスできない手間はあるが、そもそも後席に人を乗せる機会など、そうあるものではない。
前席はホールド性を考えたバケットタイプを装着。運転席のリクライニング機構はレバーとダイヤルを併用することで微調整を可能とし、座面全体を上下に調整できる平行リフターも備わる。
座面をくぼませることでヘッドクリアランスを確保した後席。頭上にリヤウインドウが迫るが、身長175cmでも窮屈な思いをすることなく座れた。背もたれは60:40分割可倒式でトランクスルーが可能。
上からエアコン吹き出し口、2000DOHCにメーカーオプションとして設定されたオートエアコン操作パネル、シガーライター&灰皿、2DIN分のオーディオスペースが配置されたセンターコンソール。
横長デザインのメータークラスターが特徴的なダッシュボード。2.0Lモデルと1.8Lモデルの5速MTは3~4速のギヤ比とファイナル比に違いが見られるなど、エンジン特性に合わせた変更が施される。
FE型エンジンは2000~3000rpmのトルク感が十分で、まず街乗りが楽。アクセルペダル操作に対するレスポンスも良く、日常域でもスポーティな印象だ。しかし、がぜん面白くなるのは4000rpmから。タコメーターの針の上昇に合わせてパワーが盛り上がり、5000rpmを超えてVICS(可変吸気システム)が高速側に切り替わると7000rpmまで豪快に吹け上がってく。洗練されたスタイルとのギャップが痛快だ。
足回りはダンピングが効いていて、全体的に引き締まっている印象。電子制御車速感応型4WSは、コーナーで限界域まで攻めれば不穏な挙動を見せるかもしれないが、少しペースが速いかな?くらいで走る分にはよく曲がってくれる。
スポーティな走りを楽しめるだけでなく、両親に子供2人という家族構成ならファミリーカーとしても十分に通用するカペラC2。かつてFD3SタイプRSの後席にチャイルドシートを2脚くくりつけ、帰省に行楽に乗っていた筆者が言うのだから間違いないし、同時に2ドアクーペの復権も願いたい。
■SPECIFICATIONS
車両型式:GDEB
全長×全幅×全高:4450×1690×1360mm
ホイールベース:2515mm
トレッド(F/R):1455/1465mm
車両重量:1230kg
エンジン型式:FE
エンジン形式:直4DOHC
ボア×ストローク:φ86.0×86.0mm
排気量:1998cc 圧縮比:10.0:1
最高出力:150ps/6500rpm
最大トルク:18.8kgm/4500rpm
トランスミッション:5速MT
サスペンション形式(FR):ストラット
ブレーキ(F/R):ベンチレーテッドディスク/ディスク
タイヤサイズ(FR):195/60R15
●TEXT&PHOTO:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)