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“渡りに船”のFA24改2.5L仕様
タービンやブースト圧が同じでも排気量の差がパワーに直結
ZN6前期型をデモカーとして迎え入れ、ボルトオンターボ仕様でサーキットアタックを開始した“t-get(ティーゲット)”。ところが、程なくしてFA24搭載のZ#8が登場することに…。
「ホント、出鼻をくじかれた感じでした。排気量400ccの差は大きいですから。これで同じボルトオンターボ仕様だったらFA20じゃ勝てないだろ?と思いましたね」と、t-get代表の境さんが振り返る。
そこからの行動は早く、境さんはFA20でのチューニングに見切りをつけて、すぐさまFA24を手配。さらに、タイミング良くHKSがFA24用2.5Lキットを開発しているという情報も飛び込んできた。
大幅なパフォーマンスアップを一気に図りたい境さんにとって、これはまさに“渡りに船”と言える話。「どうせエンジンを載せ換えるなら排気量アップまでやって…」と考えるのは当然で、デモカーのエンジンルームにはHKS製キットを組んだFA24改2.5L仕様が収まることとなった。エンジン換装にあたってメカニカルな部分は一部に細かい加工が必要だが、基本はほぼボルトオンで搭載可能。
一方、これまでWEB OPTIONでも伝えてきたが、ベースがZN6前期型ということで制御系システムの構築に苦労した。
境さんが言う。「ZN6は前期型と後期型でクランク角センサーの信号が違うんです。後期型ベースなら問題ないのですが、ウチのデモカーは前期型だったので、ボディハーネスを数本追加した上で後期型メインハーネス移植。ECUも後期型を使うことで解決しました」。
また、ボルトオンターボ化に伴って制御系にはHKSフラッシュエディターも導入。そのセットアップは難航したけど、HKS本社の全面的な協力を得て、FA24改2.5Lボルトオンターボ仕様のポテンシャルを引き出すことに成功した。ちなみに、タービンはFA20時代と同じHKS GTIII-RSだ。
「FA20では350ps前後だったのが、FA24改2.5Lでは450ps近く出ました。ブースト圧はどちらも1.0キロで変わらないんですけどね。やっぱり排気量の差は大きいなと痛感しましたよ」と境さん。
FA24純正ピストン(左)とHKS製ピストン(右)。ボア径は共に94.0φで変わらないが、HKS製は素材にA2618材を使った鍛造品で、高温強度を高め、混合気のタンブル流を持続させる3D冠面形状を採用。2層式モリブデンコートにより低フリクション化も実現している。
HKSキャパシティアップグレードキットステップ2に含まれる、クロモリ鋼の専用削り出しコンロッド。座屈強度の向上に重点を置いたI断面形状を採用し、肉厚の最適化で重量増を最小限に抑えながら約30%の強度アップを達成した逸品だ。
ノーマル比4mmアップとなる90.0mmストロークのHKS製鍛造クランクシャフト。カウンターウエイトはバランスを考慮した無駄のない形状で、ピンジャーナル径は専用サイズに設定される。これで排気量は2387ccから2498ccへと拡大。
前置きインタークーラーはHKSターボキットの付属品。バンパー右側開口部の奥にはHKS製オイルクーラーも追加される。境さんいわく、「エンジンオイルクーラーはオイルパンバッフルプレートと併せて装着必須。サーキットを走るなら、ノーマル(NA)でも必要なパーツです」。
排気系はセンターパイプをワンオフ製作した上で、RH9フルチタンマフラーをセット。中間パイプ70φ、テールエンドは100φの左右デュアル出しとなる。サブサイレンサーがパワー&トルクと静粛性を両立。
車高調はDG-5ベースで、ウィステリアと共同開発したt-getオリジナル。スプリングレートはフロント8kg/mm、リヤ10kg/mmで独自の減衰力セッティングが施される。ブレーキはTRD製モノブロックキットで強化。キャリパー&ローターはフロント6ポット+355mm、リヤ4ポット+345mmが組み合わされる。
大幅なパワーアップにより新たな不安も出てきた。それが駆動系の耐久性だ。そこでt-getでは、まず5速直結となるクワイフ製6速ドグミッションに載せ換え、クラッチはHKS LAクラッチからORCメタルツインプレートに変更。ドライブシャフトにはナガオテクノ強化タイプが組み込まれる。また、トラクション性能の向上を狙ってOS技研スーパーロックLSDも装着。ファイナル比は3.9をチョイスする。
「筑波だけに限定するなら、ファイナル比は4.3や4.8という選択肢もアリだと思います。ただ、ウチではオールラウンドに使えることを最優先したので3.9に落ち着きました」。
このFA24改2.5L仕様の戦闘力は想像以上に高く、筑波サーキットでのシェイクダウンであっさり1分0秒2(タイヤ:アドバンA052)をマーク。つまり、ファイナル比さえ合わせ込めば確実に59秒台を狙えるポテンシャルを持っているということだ。
「エンジン型式は同じFAなのに20と24はまるで別物。どこまでやるかによりますけど、チューニングベースとしては、やっぱりZ#8の方が魅力的ですよね。ボディ剛性も優れていて、トータルで考えるとチューニングコストを抑えられると思いますから。でも、パワー重視でなければZ#6でもオッケー。チューニングする愉しみは大きいですし、もし予算が限られているなら、むしろZ#6を選ぶのが正解だと思います」。境さんは、そう締め括ってくれた。
●取材協力:ティーゲット 埼玉県行田市藤原町2丁目6-9 TEL:048-554-1345
【取材協力】
ティーゲット
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