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電脳4連スロットル仕様の衝撃
インマニはCADを駆使して3Dプリンターで製作!
第二世代GT-Rを筆頭に、気軽に手を出せる存在ではなくなっている黄金世代の国産スポーツモデル。そんな中で狙い目となっているのが、NB系のロードスターだ。
大ヒットとなった初代NA系に続く2代目として、1998年に登場したNB系。搭載エンジンは1.6LのB6-ZE(NB6C)と1.8LのBP-ZE(NB8C)の2本立て。2000年のマイナーチェンジで、1.8Lは可変バルタイ採用のBP-VEに変更されている。シャシーは基本的にNAと共通だが、サスペンションジオメトリーの見直しと補強追加で走行性能を向上。エクステリアの特徴は、リトラクタブルから固定式になったヘッドライトだ。
そんなNB8Cの10周年記念車を20歳の時に中古で手に入れてから、14年間乗り続けているのが金田拓也さん。国内500台限定のレアモデルだけにかなりの拘りで…と想像したが、実はロードスターは仕方なく購入したのだという。
「危険だから駄目だという父に、内緒でバイクに乗っているのがバレまして。すぐに売ってクルマにしろと言うので、選んだのがNBだったんです。オープンでFRなら、多少はバイクに近いかなって…」と金田さん。
購入からしばらくして、金田さんは疑似バイク的な快感を求めてNBのチューニングをスタート。最初はショップに依頼したが、そこで嫌な思いをしたのをきっかけに「だったら自分でやろう」と、軒下ガレージでのプライベートチューンへ進んでいくことになった。
とはいえ、当初はチューニングのノウハウなどまるでなく、峠で知り合った仲間たちに教えを請いながら独学で経験値をアップ。メカチューンやボルトオンターボなど様々な仕様を作り上げてきたそうだが、金田さんが一貫して拘り続けているのが4連スロットルだ。
最初はソレックスキャブ、次にソレックス改のインジェクション。そして、最終進化系として辿り着いたのが現在のフライバイワイヤー(電スロ)方式なのである。
スロットルボディはケイヒン製のスーパースポーツバイク用。接続に使うインマニは、何と自身でCAD設計したデータを海外に送って製作した削り出しのワンオフ品というから恐れ入る。
制御はアメリカ製の汎用フルコンをキット状態で購入し、基盤にパーツをハンダ付けするところから自作したものだ。ちなみに、この電動4連スロットル化のきっかけは純正スロットルワイヤーが廃番になったからとのこと。
現在のエンジン仕様は腰下ノーマルで、ヘッドは2mm面研とラッシュアジャスター化してNA8用マツダスピードカムを装着。他にもトヨタ純正流用のダイレクトイグニッションなど、注目すべき点が満載だ。
助手席エアバッグスペースに収まるのが、米国メガスクート製のフルコン。プラグインの完成品もあるが、金田さんは格安なキット品を購入してイチから組み立てた。グローブボックスに左側が、メガスクート用の電スロ制御ユニットDBWX2だ。
電スロ化に伴って不可欠となるアクセルスイッチは、ND型ロードスターの純正品をペダルごと流用。吊り下げ式からオルガン式になったため、フロアマットもワンオフ製作した。
ECUとパソコンはBluetoothによる無線接続。もちろん、セッティングも全て自身で行なっている。
「全ての機能を捨てない」がチューニングのコンセプトなので、エアコンやオーディオももちろん装備。純正の油圧計位置には、液晶を埋め込んでマルチモニター化。電子制御スロットル化により、クルーズコントロールも可能だ。
また、ECUに備わっている機能は全て使わないと気が済まないのが金田さん。「ローンチスタートやトラクションコントロール、エアコン制御、液晶モニターへの各種データ出力などは行なってますが、VVT制御やアンチラグもできるんですよ…」とポツリ。どうやら、次はこれらを生かすために、エンジンをBP-VEに載せ替えて、2.0Lターボ仕様などという恐ろしいことを考えているらしい…。
PHOTO:水川尚由/REPORT:川崎英俊