「国産フルコンの代名詞“F-CON Vプロ”はなぜ誕生した!?」HKS電子パーツの歴史を振り返る!

F-CON Vプロが広げたエンジン制御の可能性

フルコン時代の到来が自在なエンジンチューンを可能にした

モーテックが主流だったフルコン業界に殴り込みをかけて、国産+高性能を売りに一気にシェアを広げたHKSのF-CON Vプロ。その誕生は1999年6月までさかのぼる。

いつしか、都市伝説的に「Vプロ(金プロ)でセッティングすれば速くなる、壊れない」という評判が広まり、当時の走り屋たちは制御のVプロ化を熱望した。もちろんVプロは今なお進化し続けているが、ここではHKSのエンジンコントロールユニットの歴史を振り返っていこう。

昭和40年代(1970年代)

製品:フューエルコンピュータ&リターダー

当時、HKSが国内で初めて発売したターボキットの装着に対し、燃料をどうやって増量するか?という課題から開発されたのが、F-CONのルーツとなる「フューエルコンピューター」だ。コンピュータとは言うものの、現在からすると、かなり単純な電子回路で構成されており、調整するというよりは“増量する”ことを目的としたものだった。本体に内蔵された圧力計で吸入空気圧力(ブースト圧)を計測し、それに対して燃料を増量する仕組みを採用していた。

そして、もう一つの装置は点火時期を遅らせるための「リターダー」。こちらも、点火時期をターボ化に合わせて遅らせるという、今となってはかなり単純な機能。しかし、当時は開発モチーフとする製品もなく、情報や知識も乏しく、センサーや回路の入手も困難…など、作り手としての苦労は大きかった。

昭和57年(1982年)

製品:EGC(エレクトリック・ガバナー・コントローラー)

点火時期の全域遅角を行っていた「リターダー」に対し、回転域ごとの点火時期調整を可能としたEGCを開発。この製品の登場により、エンジンセッティングの精度が一気に飛躍することとなる。

昭和60年(1985年)

製品:PFC F-CON

ROMが組み込まれ、単純ながらもマップ制御が行われるようになった2代目にはF-CONの名前が刻まれた。また、初代が燃料の“増量”のみを目的に開発されたのに対し、領域ごとの増減性能も搭載。略称は本来ならF-COMとなるべきだが“エフコン”と読んで欲しかったため、あえてF-CONにしたという。

製品:様々な追加デバイス

平成時代が近づくにつれ、大型タービンの出現でパワーチューンが進み、セッティングに対する要求も増えていった。VPCは、エアフロの吸気流量計測限界を越える場合に、エアフロをキャンセルしてセッティングを行うためのデバイス。F-CONと組み合わせてセッティングするための存在でもある。この他、追加インジェクターを制御するAICや、回転域ごとの燃調が可能なGCCなども登場した。

製品:EC1

HKSがF1用エンジンの開発を行っていた昭和後半〜平成初期に、F-CON Vと並行して開発されたフルコンがこのEC1だ。当時としては非常に高性能であったが、製品化した場合の価格があまりにも高額になること、ECU市場が現在ほど熟成していなかったことなどから、販売は見送られたという伝説のフルコンだ。

平成7年(1995年)

製品:F-CON V

デバイス単品でエンジンの完全制御が可能なフルコンとして開発が進められたたが、フルコンはベースなしでゼロからセッティングを行う煩雑さがあり、市場がついてこないだろうとの判断から、当初は純正ECUの信号を変換するサブコンとしての発売が先行された。通信機能を搭載し、車載状態でリアルタイムにセッティング変更ができるようになったのもトピック。さらに、10万円という価格設定も話題となった。

そして平成10年(1998年)より、このF-CON Vのアップデート版として、一部プロショップ向けにF-CON Vプロ(銀プロ)が先行販売されることとなる。

平成12年(2000年)

製品:F-CON V Pro

発売に合わせて筐体がゴールドアルマイトとされたため、製品が市場に浸透するに連れ“金プロ”の愛称が広まっていった。その制御能力は非常に高かったため、金プロ装着車=高性能チューニングカーというイメージが持たれるようになる。この時期には、海外製の高精度フルコンも国内に流通しはじめていたが、サポートのないフルコンを使いこなせるチューナーはごく限られていたため、広がりは少なかった。

平成24年(2012年)

製品:F-CON V Pro Ver4.0/Ver3.4

平成後期になると環境性能対策などが求められ、新型車の装備が高度化、統合制御も進み従来の金プロでは対応しきれない要素が増えていった。電子制御スロットルや可変バルタイなど、旧金プロの開発時代には想定していなかった仕組みの制御が必要となったのだ。

そこで新たに開発されたのが新しいF-CON Vプロ。可変バルタイ&電子スロットル制御など、より複雑な制御が求められる車両に向けたVer4.0と、従来型に近い制御機能のVer3.4だ。サブコンのF-CON iSと合わせて、3ステップの選択肢がもたらされたというわけだ。

なお、現在は製品の統廃合によってVer4.0が廃盤となり、Ver3.4に一本化。その後、ハードウェア&ソフトウェア共に独自の進化を続け、点火系は8系統までの独立制御が可能となり、点火カットによるレブリミット機能も追加。また、より高度な燃調や点火時期の制御を行なうために信号入力機能が拡大し、オプション出力機能の充実化も図られた。

製品:フラッシュエディター

統一規格であるOBD2端子を備えた車両が普及し、この端子から純正ECUのプログラム書き替えが行われるようになると、各車からライトチューン向けのOBDII対応セッティングツールが多数発売された。F-CON Vプロでのセッティングを推奨してきたHKSでは、出遅れたことは否めなかったが後発であるがゆえに、各社製品の問題点を洗い出しての商品開発を行うことができた。

フラッシュエディター装着車は、データの書き替えに対してロックがかけられるが、これはディーラーなどでの不用意なデータリセットやリプロによるエンジンのダメージを防ぐための機能だ。

●取材協力:エッチケーエス TEL:0544-29-1235

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