「粗悪コピーホイールの真実」本物と偽物の差は!? 禁断の強度試験を実施してみた!

それでも君は“ニセモノ”を選ぶのか?

卓越したクラフトマンシップで世界のスポーツホイールシーンを牽引し続ける「ボルクレーシング」だが、残念なことに粗悪で安価なコピー品の流通も年々増えている。そこで今回は、一時代を築いたボルクレーシングCE28Nの本物とそのコピー品を用意した上で、レイズ全面協力のもと禁断の性能テストを実施。“ホンモノ”と“ニセモノ”の違いを、全方位から検証していく。

CE28Nのコピー品を13度衝撃試験機にかけてみた

右:本物/左:偽物

テストに使用するのは、徹底的に強度と剛性を追求するTE37シリーズに対し、軽量を突き詰めた鍛造ホイールの頂点という位置付けで1999年に誕生した名作「CE28N」。今やスポーツホイールの定番になっている鍛造10本スポークの“始祖”と言っても決して間違いではないだろう。その後、たゆまぬ進化を続けて現在はCE28N-plusが現行モデルとなっているが、市場に出回っているコピー品の9割は初代モデルのため、それと揃える意味で今回はあえて絶版のCE28Nを用意(強度試験ではCE28N-plusを使用)した。

【見た目の違い】ホンモノとニセモノ、7つの差異。

スポーク形状

左:本物/右:偽物

スポークの太さは歴然の差だ。軽量を追求するCE28Nは鍛造製法の利点を活かして極限まで細くしているが、鋳造のコピー品では再現不可能だったわけだ。

ブリッジ形状

左:本物/右:偽物

本物はスポークとリムの結合部を大きく広げて強化し、タイヤからの入力を理想的に分散できるよう設計されている。機能美を感じさせるデザインなのだが、コピー品はそれが再現されていない。

装飾

左:本物/右:偽物

リムに刻まれた記号や文字もまるで異なる。なお、最新モデルになると、レイズの特許技術であるA.M.T.(アドバンスド・マシニング・テクノロジー)による切削加工で刻まれているが、これはコピー防止の意味合いも強いそうだ。

センターサークル

左:本物/右:偽物

CE28Nのアイデンティティでもあるティアドロップ型ディンプルはコピー品も再現しているが、面取りが行われおらず仕上げは非常に荒かった。

ナットホール

左:本物/右:偽物

CE28Nのナットホールは、ホイールナットを通す穴と軽量化のための穴が等間隔で開けられている。本物はユーザーが迷わないようにそれぞれのホールサイズ&形状が異なるのだが、コピー品は全て同じピッチで開けられていた。

安全基準ステッカー

左:本物/右:偽物

レイズの市販ホイールには、独自のJWL+RステッカーとJAWA認定ステッカーが必ず貼られている。コピー品はJAWAの旧ステッカーのみ貼られていたが、印字が薄くフォントも怪しかった。

重量測定

左:本物/右:偽物

本物=6.460g
偽物=8.818g

サイズはどちらも17インチでJ数やインセットもほぼ共通。そもそも、CE28Nは軽量化を突き詰めるために当時の鍛造製法の限界に挑んだ作品だ。コピー品は見た目だけの鋳造模倣品のため、とにかく重かった。

衝撃(インパクト)試験

本物と粗悪コピー品のディティールの違いを理解したところで、本命の強度試験へ。使用する設備は、レイズが所有する13度衝撃試験機だ。

これは、斜め方向からの衝撃を想定した試験で、JWLの基準ではホイールサイズごとに定められた重量物を230mmの高さから落とすのだが、レイズではさらに厳しい独自基準「JWL+R」を設定しているのがポイント。

具体的には、鋳造ホイール基準のスペック1( 255mmの高さから落とす)と、鍛造ホイール基準のスペック2(305mmの高さから落とす)が存在し、今回のテストでは本物(CE28N-plus)をスペック2で、偽物をスペック1&スペック2で行った。

これが衝撃試験の設備。タイヤ付きのホイールを13度の角度で固定し、強度的に不利なバルブ位置側(頂点)に規定の重さと高さで衝撃を与えるのだ。テスト後、一分間放置してエアが漏れていなければ合格となる。

コピー品は衝撃音とともにリムとディスクが破断!?

本物(JWL+Rスペック2試験)=クリア

当然ながらクラックすら発生せず、直撃箇所は凹みすらなし。エア漏れも起こらなかった。

偽物(JWL+R スペック2試験)=破断

固定していたスポーク部を残し、全ブリッジが折れてリムが分離するという衝撃の結果に…。

偽物(JWL+R スペック1試験)=破断

鋳造ホイール用のスペック1試験でも結果は変わらず。重りが直撃した瞬間に破断した。

当たり前ながら本物はクラックすら発生せず、エア漏れも皆無。衝撃を与える前と何も変わらない状態だった。一方のコピー品は、強烈な炸裂音と共に一発でスポークとリムが破断。念のために用意していた予備のコピー品で、レイズ鋳造ホイール基準のスペック1をテストしたところ、こちらも同じ結果に…。つまり、コピー品はそもそも鋳造ホイールの強度すら保持していなかったわけだ。

【総括】

ホイールは命に関わる重要パーツ、だからこそ粗悪なコピー品に手を出すべきではない。

レイズ 企画部 広報マーケティングGr. 南 雅志

今回の試験結果を受けて、レイズ広報担当の南さんは次のように語ってくれた。「想像以上の結果でした。コピー品の破断面を見るかぎり、一般的な鋳造ホイールのJWL基準試験でも壊れていたでしょうね。このレベルだと、高速走行中にギャップを拾ってリムが割れたりスポークが折れたりする危険性があります。形状はコピーできても、製法や素材までは真似できておらず、それどころか市販ホイールの基準にすら達していないわけです」。

破断部分をチェックする南さん。「偽物はアルミの素材自体も粗悪ですね。当然、フローフォーミングも行っていないですし、本当に見た目だけの危険なコピー品です」。

続けて「レイズ製のホイールは、独自の安全基準をクリアしなければ絶対に製品化できません。ホイールは命に関わる重要なパーツ、安いからといって出所不明のコピー品に手を出すのは本当に危険なのでおやめください」。

なお、今回の強度試験の模様は動画でも公開しているので、ぜひご覧いただきたい。レイズ製ホイールの性能と、JWL+R基準の試験がどれほど厳格で過酷なものかが理解できるはずだ。

【関連リンク】
レイズ
https://www.rayswheels.co.jp

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