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全ての要素が噛み合った熟成のマシンメイク
快適装備満載の車体に1000馬力のVR38改4.1Lを搭載!
「R35GT-R鈴鹿サーキット最速」という目標を掲げてアップデートを続けてきた“ウイングタケオ”のワークスカーが、2022年1月のタイムアタックイベント『Attack SUZUKA』でついに悲願を達成した。フェニックスパワーの記録(2分4秒218)を破り、“2分3秒721”というコースレコードを樹立したのだ。
タイムだけを追い求めるなら快適性は不要だ。しかし、ウイングタケオのGT-Rはあくまでもストリート仕様ということに拘り、エアコンをはじめとする快適装備は全て搭載済み。内装撤去などの軽量化も一切行っていないのだ。
この理由について竹尾代表は「すでにデビューから10年以上が経過しているR35ですが、サーキット専用マシンを作ろうというユーザーはごく限られています。そのため、デモカーも徹底した軽量化などを行ったサーキット専用スペックではなく、あくまでストリートの延長線上にあるクルマ作りを行なっているんです」と語っている。
注目のエンジンは最高出力重視の仕様だ。排気量を4.0Lから4.1Lに拡大した上で、タービンをTD06SH-20RXからTD06SH-25Gへとサイズアップ。「昨シーズンは20RXだったんですけどドライバーの佐々木さんから“レスポンスが良すぎてアクセルワークに気を使う”と言われまして。それでサイズを上げたんです」とのこと。最大ブースト圧は1.9キロの設定(最高出力は推定1200psオーバー)だ。
RH9のチタンマフラーはメイン90φから100φのモデルへと変更し、高出力化に備える。ガソリンは市販ハイオクにレースガスを混ぜて使用している。
シートは運転席がレカロのRS-G、助手席にはSR-7を装備。コクピットにセットされているのは、前後のトルク配分を細かく設定できるネココーポレーションのETSコントローラーだ。
サスペンションはクラックス製をベースとしたウイングタケオのオリジナル品。アーム類も前後にトップシークレット製の調整式を投入し、コースに合わせたセッティングを可能としている。
タイヤはタイムアタックシーンでも定番になりつつあるフージャー・DOTラジアル(FR335/25−20)。熱の入れ方やメンテナンスといった管理がシビアとはいうものの、現状のパワーを生かして走るには最適なタイヤだという。
エクステリアはトップシークレットのフルエアロ仕様で、GTウイングはオリジナルのドライカーボン製をセット。昨シーズンからの変更点はカナードの枚数(片側2枚→片側1枚)と、ウイングステーの高強度化(カーボン→アルミ)だ。
アタッカーを務めた佐々木雅弘選手は「昨シーズンの仕様からサスペンションや4駆の制御を見直して、エンジンも中間のピックアップを落とす方向で調整してもらいました。以前は、エンジンが過敏すぎてコーナー脱出からのアクセルオンでタイヤがスリップしていましたから。これらのモディファイがうまく噛み合った結果ですね。鈴鹿での300km/hオーバーアタックって本当に凄い世界で、超スリリングなんです。だから当分は“誰もこのタイムを抜かないでもらいたい!”っていうのが正直なところです(笑)」とコメント。
R35GT-Rとしては初の鈴鹿2分3秒入りを果たしたウイングタケオのワークスカー。マシンメイクを見ると、突出したスペックを与えずにトータルバランスを最重視した仕様であることが分かる。そのバランスこそが、このチューンドの生命線なのかもしれない。
●取材協力:ウイングタケオ 三重県三重郡川越町高松86-1 TEL:059-363-2104
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