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センターデフキット未使用でFR仕様に!
エンジンルームにも小技が光るワンオフチューンド
これまで、定番のドリ車ベースとして愛されてきたシルビアやツアラーV系は軒並み価格が高騰。そんな中で、オーナーが「手軽に遊ぶためのドリ車ベースはないか?」と探して選んだのが、25万円で手に入れたというこちらのBP型レガシィツーリングワゴン。
パワフルなEJ20ターボを搭載し、縦置きレイアウトで加工の手間が比較的少ないこともあって、ジワジワと人気が出てきているスバル4WD改FRドリ車を、自分の趣味の延長で作り上げたというのだ。
スバル車のFR化にあたっては、キット品として販売されているワタナベサービスの『ドリフトセンターデフ』でフロント駆動を排除するのが一般的。しかし、このレガシィはキットを購入する費用も節約するため、自分でデフを加工。純正ビスカスLSDを撤去して、デフからフロントへ戻るスプラインをカット。その上で内部ギアを溶接し、デフロック状態にすることでFR化を実現した。
さらに、リヤ重量の大きいツーリングワゴンではドリフト中に駆動にかかる負担が大きく、これまでに4本のドライブシャフトと2基のデフをブローさせた経験から、より太く強度の高い日産R200用ドライブシャフトを使えるようにデフケースごと移植。画像で見えるワンオフマウントの製作の他、ハブ側も干渉を防ぐための加工が施されているという。
一方、EJ20エンジンはごく一般的な吸排気チューンで留めている。カタログ値280psというパワーは、エンジョイレベルのドリフトであれば不満がないという判断だ。
ラジエターは、BP型の純正より厚みがあって冷却効果の高いBE型レガシィ用のコーヨー製アルミラジエターを流用。そのまま装着するとアッパーホースがベルトに当たってしまうため、ホースレイアウトを短縮することで回避。そこにスイッチ制御の強制電動ファンを組み合わせて、高負荷状態が続いても音を上げない環境を整えている。なお、水温に引っ張られて油温も下がるためオイルクーラーは装着されていない。
エンジンルームで興味深いのが、HKS製ブローオフバルブのレイアウト。このためのパイプを追加するよりも見た目がスッキリするからと、純正インタークーラーにそのまま取り付けできるアルミ削り出しのアダプターをワンオフ製作し、ノーマルと同じ場所に配置しているのだ。
室内は小径ステアリングやスピンターンノブ、セミバケが導入され、いかにもドリフト仕様という雰囲気。追加メーターは、コストパフォーマンス重視でオートゲージ製のハイグレードタイプをチョイスしている。
普段乗りはほとんどしない完全な遊びグルマとのことだが、見た目にも気を配って電動ファン用のスイッチはシフト脇にスマートにレイアウトしている。
エクステリアは購入時のままでとくに変更なし。排気系はフロントパイプを第一触媒のみのHKSメタルキャタライザーに交換して排気効率を引き上げている。
ドリフトに重要な切れ角アップは、ステアリングラックにワンオフの4.5mm厚スペーサーを追加することで達成。最初は6mmだったそうだが、ステアリングラック可動域を増やしすぎるとブローの危険性が増えることから少し減らしたという。ブレーキはフロントを純正流用の対向キャリパーで容量アップしつつ、ドリフト時にロックしやすいようリヤにプロジェクト・ミューのパッドを組み込んでいる。
サスセッティングはかなり苦労したそう。車高調はブリッツのダンパーZZ-Rだが、標準のバネレート(F6kg/mm R8kg/mm)では柔らかすぎたため、レート変更を繰り返しながら現在はフロント10kg/mm、リヤ12kg/mmに落ち着いた。タイヤはフロントにナンカンNS-2R、リヤにケンダKR20を履き、サイズは215/45-17で統一。
ボディ剛性アップはリヤタワーバーの追加くらいだが、これだけでもドリフト中のコントロール性アップにかなり効果があったとのこと。
自営の金属加工業を活かした趣味として、なるべくDIYで予算をかけずに製作するのがこのレガシィのコンセプトで、これまでの改造費用は20万円くらいとのこと。つまり、車体金額と合わせて約50万円で完成したドリ車というわけだ。オーナーのアイディアと技術力には、ただただ驚かされるばかりだ。
TEXT&PHOTO:長谷川実路
●取材イベント:Street Wheelers Spring Session 2021 in アルツ磐梯