「ハードトップの陰に隠れたセダンのシグマ!」B級感が全身から溢れるギャランシグマセダン2000エクシードと遭遇

高級感の無理くりな演出がたまらない!

ラインナップのねじれ現象に巻き込まれた不遇のセダン

駆動方式をそれまでのFRからFFに改め、1983年8月に発売された5代目ギャランのE10系。当初は4ドアセダンΣ(シグマ)のみのラインナップだったが、1984年10月に先代では2ドアハードトップだったΛ(ラムダ)の後継モデルとして4ドアハードトップが登場し、それにもΣを名乗らせてしまったあたりから、すでに三菱の迷走は始まっていたように思う。

それが決定的になったのが1987年10月。E10系が存在しながら6代目ギャランとしてE30系が発売されてしまうのだ。マツダで言えば、GE系テルスターがあるのに「CG系テルスターIIが登場!」というような話だ。

しかもE30系ギャランは4ドアセダン。当然、同じセダンならばメーカーとして新型E30系を推すわけで、その煽りを受けたE10系ギャランΣは本来Λの後継に過ぎなかった4ドアハードトップが中心となり、本流だったセダンのラインナップが大幅に縮小されるという“ねじれ現象”が発生することになった。

そうした背景を踏まえた上で、今回の主役、E17A型ギャランΣの4ドアセダンを見ていく。取材車両は下位グレードのエクシードなのだが、後付け感が強いマスコット付きフロントグリルや各部のメッキ処理など、少しでも高級に見せようと頑張った跡が各部に伺える。

それはルーズクッションタイプのシートを始め、内装も同様だ。フロントシートは見た目の通り、身体が包み込まれるようなソフトな座り心地を味わえる。運転席にはシートリフター機能も装備。

もはやシートというよりソファという方が相応しい後席。ヘッドレストは前後&左右方向の調整が可能だったりする。また、レバー操作による手動式ではあるが、左右別々にリクライニング機構も備わる。

1本スポークのステアリングホイールが特徴的なダッシュボード周り。当時流行ったサテライトスイッチはステアリングコラム一体型で、チルト機構に合わせて上下に動く。

右から電圧/水温計、タコメーター、スピードメーター、デジタル式時計/燃料計が並んだメーターパネル。セダンとハードトップでわざわざデザインを変えているあたりが変態的だ。

エアコンの設定温度や風量はサテライトスイッチで調整するが、吹き出し口はセンターコンソールのプッシュ式スイッチで切り替えるという謎のシステム。AM/FM電子チューナー+カセットデッキは標準装備品で、よくこの状態で残っていたと感心するしかない。

エンジンは、シリンダー内に強力な“超高速流”を発生させてレスポンス向上を実現していることから、ハードトップに搭載された直4のG63BターボやG62Bと合わせて“サイクロン”エンジンと呼ばれた2.0L・V6の6G71型。

事前にカタログで確認しておいたスペック(105ps/16.1kgm)から、正直あまり期待していなかったが、走り出したらこれがなかなか好印象。2000rpm付近でもしっかりトルク感があるし、吹け上がり自体はモッサリしながらも5500rpmまでは6発らしくスムーズに回ってくれる。この感覚、何かに似ている…と思い返してみたら日産のVG20E型で、実用エンジンとしては良くできていると感心した。

それから三菱が高級車路線を狙っていたことは、かなりソフトな足回りやシートの座り心地からも明らか。そこがいかにも80年代車らしく、三菱に限らずトヨタも日産もホンダも、目指す方向性は似たようなものだった。

余裕の動力性能を誇る170ps/26.0kgmのG63B型2.0L直4、通称“ダッシュターボ”を載せたE15A型4ドアハードトップのような華やかさは皆無。しかし、そこがマニアにとっては“ツボ”なわけで、ギャランΣといったら存在感が希薄なE17A型4ドアセダンを真っ先に思い浮かべてほしいと願うばかりだ。

■SPECIFICATIONS
車両型式:E17A
全長×全幅×全高:4660×1695×1395mm
ホイールベース:2600mm
トレッド(F/R):1445/1415mm
車両重量:1250kg
エンジン型式:6G71
エンジン形式:V6SOHC
ボア×ストローク:74.7φ×76.0mm
排気量:1998cc 圧縮比:8.9:1
最高出力:105ps/5000rpm
最大トルク:16.1kgm/4000rpm
トランスミッション:4速AT
サスペンション形式(F/R):ストラット/3リンクトーションアクスル
ブレーキ:FRベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:FR185/70R14

●TEXT&PHOTO:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)

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