「やっぱりFC3Sはカッコ良い・・・」素直にそう思わせてくれる極上のクールビューティ

日本のスポーツカーが最も華やかだった時代に幼少期を過ごし、気づけば30代へと突入した平成生まれ。子供の頃に憧れた流線形のマシンを所有し走らせられる喜びを心から味わっている。仲間にも恵まれ、好きではじめただけのクルマ作りは、あれよあれよと話題となって、海外雑誌の表紙にまでなった。なぜか人を惹きつけてやまないモッテる男の物語は続く。

美観を追求してサイクルフェンダー化まで敢行

トップビルダーの技術力と若きオーナーの情熱

延期を経て8月に最新作の公開が決定した映画ワイルド・スピード。回を重ねるごとに話は大げさになる一方だが、2001年に公開された第一作を見返すと、あらためてその作品が世界中のカスタムシーンに与えた影響の大きさを考えさせられる。

平成元年生まれの宮田晃平さんも、そんなワイルド・スピードの世界観に洗礼を受けた一人。父親の影響で自然とクルマ好きに育った宮田さんにとって、大好きな90年代のスポーツカーがアメリカ人によってチューニングされ、ストリートを疾走する姿を(画面を通して)目撃することは何よりの情操教育になった。

カーショップに就職してから、すぐに購入した愛車は左ハンドルのS2000。そして、現在も所有するそのS2000と同じくらい手を加え、大切にしている愛車が自分と同じ年式のFC3S型RX-7である。

FC3Sのどこが好きなのかと問うと、宮田さんは車体の後方に回り込んでリヤフェンダーから前方に伸びるキャラクターラインを指差しながら「ここ分かります? これなんですよ、このライン! これが昔から本当に好きで、たまんないんですよね(笑)」。

人はとかくメーカーや車種、スペックなどに固執しがちだが、宮田さんがその時に浮かべた純粋な笑顔には、クルマを好きになる理由なんてそれで十分でしょ、と言わんばかりの説得力が感じられた。

まずは手始めに、ボディをBNR34純正色のミレニアムジェイドでお色直し(オールペイント)するところからスタートした宮田さんのFC3S。勢いそのままに、2016年のWekfestジャパンに参加することを目標に、横浜市港北区に店舗を構える国内屈指のカスタムビルダー“N-Stage”で本格的なエンジンルームメイキングに着工。

「Vマウントは他にも実例がありましたけど、FCでサイクルフェンダーは当時まだ見たことがなかったので、じゃあやってみようと。でも純粋なショーカーにするのではなくて、カッコ良いクルマに普通に乗りたいと思っていたので、エアコンとパワステを残すことも大事なポイントでした」。

N-Stageの技術力が注ぎ込まれたエンジンベイは、まさに珠玉の一言だ。13B型ロータリーエンジンには、N-StageのワンオフEXマニを介してTD06SH-25Gタービンをマウント。HPIのコアを使用したインタークーラーをフロントに置き、ワンオフのラジエターとエアコンコンデンサーとともにVマウントを構築している。

吸気系にはフジタエンジニアリングのサージ変換キットでFD3S純正インテークとスロットルボディを接続し、2段噴射方式を採用するインジェクターはサードの650cc大容量タイプに交換。制御はパワーFCで行い、ロータリーチューン専門店のERCでセッティングを行っている。

ストラットタワー前方を覆うサイクルフェンダーも、エンジンルームの美観向上に大きく貢献しているポイント。D1GP車両などでは15年以上前から行われていた手法だが、ハードチューンのドリフト車両を数多く手がけてきたN-Stageの得意とするカスタムだ。

エクステリアはアニバーサリーのフロントバンパー以外は純正品で構築。リヤスポイラーは前期型純正、特徴的な形状のドアミラーはUS純正部品で、日本仕様だとステッカーとなるリヤエンブレムもUS純正の立体文字に変更されている。

ホイールは往年のディスモンド・リーガマスターEVOをリペアし、クロームポリッシュでフィニッシュ。サイズは9.0J×17+18の前後通しとなっている。以前は3ピースホイールを履いていたが「年齢とともにスポーツカーはスポーツカーらしい見た目にしたい」と、考えが変化してのチョイスだそうだ。

フロントブレーキには定番のFD3S純正キャリパーを流用。サスペンションにはテインの全長調整式車高調であるスーパードリフトを装着し、フロント20kg/mm、リヤ18kg/mmというハイレートのスウィフトスプリングを組む。

一方のインテリアは当時感を追求。シートは限定車であるRX-7アンフィニの純正バケットで、ステアリングはアメリカのレナウン製をセレクト。メーターもマイル表示のUS純正品に交換されている。ロールケージは5点式だ。

こうして仕上がったFC3Sは、Wekfestジャパンを足がかりに、東京オートサロンやホットロッドカスタムショーなどの国内主要イベントにも参加し、立て続けにアワードを獲得。さらにその評判は海外にも伝播し、ついには米専門誌スーパーストリートの表紙を飾る快挙も成し遂げている。

「子供が2歳半なんですけど、男の子なのでクルマ好きになってくれると信じてます(笑)。奥さんもクルマ好きで、いつも自分のことを理解してくれて本当に感謝しています」。

まるでワイルド・スピードの世界を地で行くように、ファミリーとクルマを大切にする宮田さん。FC3Sを通して得た経験や出会いは、クルマそのものの価値を超えたようだ。

PHOTO:Akio HIRANO/TEXT:Hideo KOBAYASHI

キーワードで検索する

著者プロフィール

weboption 近影

weboption