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シンプルなエクステリアに秘められた650馬力の強心臓
純正+αに拘り抜いたトラックスタンス仕様!
限りなくシンプルだが、妙に説得力のあるフォルム。24歳という若きオーナーが駆るこのBNR32は、GT-Rらしい走りはそのままにスタンス仕様としても通用する、攻めたフェンダープロポーションを実現したハイレベルな一台だ。
タイヤとフェンダーのクリアランスはかなり攻めたものだが、車高自体はむしろ高い部類。エアロパーツを特に装備しているわけでもないにもかかわらず圧倒的な個性を放っているのは、やはりタイヤホイールやフェンダーを含めた足回りのセッティングだろう。
前後ともに11Jプラス18というサイズのボルクレーシングTE37SLに合わせられているタイヤは、グループAマシンのバルーンタイヤを彷彿とさせる295/35R18サイズのアドバンA050。ツメ折りこそされているものの、純正フェンダーでこのタイヤを収めるのは容易なことではない。
足回りはクスコのアーム類をフル投入し、フロントに5.5度、リヤに4度のネガティブキャンバーを付けている他、キャスターやトー角も計算し尽くした最適なセッティングとすることで、全開走行時も一切干渉しないクリアランスを実現している。
溶けたトレッド面が、このBNR32が単なるドレスアップ仕様ではないことを物語る。ここまで攻めたセッティングとなると、タイヤ選びもサイドウォール形状などで制限されるそうで、同じタイヤサイズでもA050以外を履く場合はリセッティングが必要となるほどだという。
サスペンションはHKSのハイパーマックスMAX-IV SPで、スプリングはフロントが26kg/mm、リヤが16kg/mmと固めのセット。ブレーキはフロントがF50、リヤがロータスブレンボで強化されている。
機関系もこのBNR32の見どころ。エンジンは、グループAでメカニックを務めた前田氏が代表を務める“ジーイング”で製作された2.8L仕様。N1ブロックをベースに、HKSのキットを用いて組み上げられた珠玉のユニットにTO4Zタービンを組み合わせ、655ps&66kgmというスペックを誇る。
燃料系はASNUの850ccインジェクターやHKSのフューエルデリバリーキット、ニスモの燃料ポンプで容量をアップ。
タービンが上置きとなることで、視覚的にもチューニング指数の高いビッグシングル仕様だが、扱いづらさは一切なく、普段乗りにもストレスは無いそうだ。
エンジンマネージメントはフルコンのモーテックm600が担う。スペック的にはかなりのハイチューン仕様だが、取材中の移動の場面においてもエンジンは必ず一発始動。文字通り、ストリート仕様として相応しいフレンドリーな特性に仕上げられている。
マフラーはガレージアクティブ製をベースに、ムーンテックが製作したフルチタン。スポーティさを演出すべく適度なかち上げスタイルとされているのが特徴だ。
室内はオーナー自ら内装やアンダーコートを撤去して軽量化を推進。シートは運転席にブリッドのガルディスIII、助手席にジータIIIをセットしている。
駆動系チューンも抜かりなく、ミッションはながおテクノのクロスミッションで、クラッチはATSのメタルツインプレートを組むなど、増大したパワーを受け止める環境を構築。
ロールケージはクスコのクロモリ7点式。ボディ同色のシルバーでペイントされ、純正然としたエクステリアとは対象的なまでのレーシーな仕上がりだ。
トラックスタンス仕様としては、完成形とも言える仕上がりだが、オーナーは次なるメイキングを画策中だったりする。「これまではオイルパンの容量アップを行なっている関係で、あまり車高が下げられなかったという事情がありました。そこで次はエアサスを導入します」とのこと。エアサスキット自体は既に手配済みで、仕様変更は秒読みの段階だ。
グループAの風を感じさせてくれるこのBNR32が、エアサスという新たな武器を手に入れた時、一体どのような化学反応が起こるのか非常に楽しみだ。