「アメリカ西海岸の風が漂う魔改造Z33ロードスター」オーナーの負けん気が作り上げた芸術作品

アワード総なめのZ33ロードスター改

最高出力400psの数値よりもツラを推すフィットメントキング

3歳でポケバイレースにデビューし、9歳の時に全日本チャンピオンを獲得したオーナー。ロードレースに進出してからは15歳で西日本シリーズチャンピオンに輝いた他、MotoGP日本グランプリに2度もスポット参戦するなど、華々しい戦績を残している。

25歳で現役を引退すると、元々「負けず嫌いで目立ちたがり屋(笑)」な性格も手伝い、ほどなくして四輪のカスタマイズに目覚めていった。「10代はずっとレースに明け暮れていましたけど、普通免許を取るタイミングがちょうどワイルドスピードがブレークした頃と重なって。こんな世界もあるのか!って刺激を受けてました」。

そんな風にアメリカのカルチャーに感化されていったオーナーは、「あえて走りに向いていない少数派で勝負したい」という気持ちからZ33型のフェアレディZロードスターを購入。そしてYouTubeでアメリカのカスタムシーンを貪るようにチェックしていたところ、ロサンゼルスを拠点とするLow’N Slow Crewというカークラブの存在を知ることとなる。

「デカくて深いホイールを履いて西海岸をクルーズする350Zのカッコ良さに衝撃を受けました」と振り返るオーナー。MAXオフセットの美学を教えてくれたクラブに自分も入りたいと思い、当時日本でも流行り始めたFacebookでメッセージを送ったものの、見事にスルーされてしまったそうだ。

そこで「もう直談判するしかない」と考えたオーナーは、なんと渡米することを決意。いざL.A.に渡るとチームクルーが集まるホームパーティに潜り込み、熱意を伝えたそうだ。その場で多数決が取られた結果、満場一致でメンバー入りが認められたという。

さすがは3歳からレースの世界に身を置いてきただけに、インスピレーションと行動力に長けるオーナー。Low’N Slow Crewという後ろ盾も得られたことで、ますますZ33のカスタマイズに熱が入っていった。

フィットメントの要となるホイールは、名前の響きとデザインが気に入ったVIPモジュラーのVXS110という3ピースメッシュを採用。リバレルすることでリバースリムに変更し、より深さと大径感を強調した。

それに合わせてワンオフで製作された鉄板製のワイドフェンダーは、フロント40mm、リヤ60mmの出ヅラを誇り、純正のような耳も再現。その角度とリムの角度がぴたりと揃い、斜めに広がりながら落ちていくラインが最大の自慢である。

サスペンションはエアサスではなく、T-Demandの80Kスペックフルタップダンパーを採用。当時まだ設定の無かったZ33用前後調整式アッパーアームもオーダーで製作してもらい、ライドハイトでもカッコ良さを維持できる車高調ならではのセッティングを追求した。

アメリカのDuraflex製フロントバンパーには、ワイドフェンダーに合わせた拡幅工事を実施。純正リヤバンパーもサクラムのマフラーがガッツリと見える開口処理が施されている。ボディカラーはBMWのラグナセカブルーを参考にオリジナルで調色したもので、オーナーはピーコックブルーと命名。エンジンルームに至る隅々にまでペイントされている。

オープンカーとしてインテリアのオシャレにも手を抜くわけにはいかないということで、シートはレカロのスポーツスターLL100HレザーSEを奮発。ボディカラーがBMWに近いということもあり、ホワイトレザーにレッドとブルーのラインが入ったモデルを選択した。

レナウンのレザーステアリングにもトリコロールステッチが施されており、アフターパーツだと感じさせない統一感も演出。シフトノブもLIKEWISEのTHE THICC BOIとアメ物で揃える。

そしてVQ35DE型V6エンジンには、HKSのGTスーパーチャージャーとビッグスロットル、サクラムのエキゾーストシステムなどを備えて、吸排気性能をアップ。最高出力は400psを実現している。

また、標準でカーボンのサイドカバーが備わるコスワースのツインプレナムインテークマニホールドは、それだけでも主役級の存在感を発揮。さらにアルミダイキャストの本体とタイミングチェーン周りのカバーにクロームペイントを施し、キラキラと輝く美しさを生み出した。

エアコンレス、パワステレスとしたことで抜け感を増したエンジンルームには、コアサポートの代わりにワンオフのパイプフレームを組み、HKSのインタークーラーやブリッツのラジエターをマウント。ワイヤータックやシェイブドベイの妙技を炸裂させるなど、見せるためのクオリティも極めた。

福岡県中間市のメイクアップヒローズ、直方市の原タイヤ工業所といったスペシャルショップの協力を得ながら、数多くのカーショーで30本以上のアワードを獲得してきたオーナー。

「払った努力に結果が伴わないことは許せない」という負けん気の強さを原動力に、今となってはクルーから「お前がキングだ」と認められるトップレベルのマシンメイクを実現。実力で憧れを現実に変えてみせた。

PHOTO:Akio HIRANO/TEXT:Hideo KOBAYASHI

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