「2.0L V6ツインターボ搭載!」初代と3代目の間で、忘れられた存在の2代目ギャランVR-4を再考する

同じ2.0Lでも4G63ターボとはまるで性格が違う!

高回転型エンジンを5速MTで楽しむ歓び

グループAマシンで争われるWRCに参戦するため、ホモロゲーションモデルとして登場したのが初代VR-4。しかし、そのバトンをランエボに託したことで2代目VR-4は必然的に方向転換を迫られることになった。明確な目標に向かって邁進すれば良かった初代に対して、2代目は同じVR-4を名乗りながら全く別のコンセプトを掲げなければならず、それを思うと開発も難航したのではと想像する。

そこで三菱は決断した。上級モデルへのシフトである。開発時期がバブル景気に重なっただけでなく、折しも自動車税の改正が行われ、ボディサイズ(3/5ナンバー)には関係なく排気量のみが課税対象となったことで、“排気量2.0L以下の3ナンバー車”が一気に増えた時代。2代目VR-4もその波に乗ることになったのだ。

カタログを開くと、『新しい、上級セダンの資質。V6 WIDE NEW』というキャッチフレーズが躍り、「新たな資質を、5ナンバー枠を超えることで手にしました」、「新しいプレステージ・カーが誕生しました」という文言も確認できる。こうして、フォーマルかつラグジュアリーな路線へと舵を切った2代目VR-4は1992年5月に登場した。

全幅を1730mmとした3ナンバーボディに、クラス最強を目指して新たに開発された2.0L V6ツインターボの6A12型エンジンを搭載。初代VR-4に搭載されたロングストローク型の4G63から一転、6A12型はショートストローク型となる。

5速MTモデルの240ps(4速ATモデルは215ps)という最高出力は、同じく1992年登場の初代ランエボに載せられた4G63ターボの250psに一歩譲るものの、31.5kgmという最大トルクは肩を並べていた。また、6A12はNAでSOHCの145ps仕様が用意され、翌93年にはDOHCにMIVECを搭載した200ps仕様も加わるなど幅広いバリエーションを誇った。

ミッションは5速MTだけでなく、当初から4速ATも用意。さらに、4輪マルチリンク式サスペンションや電子制御可変ショックアブソーバー(ECS)、アクティブ4WSなどの新機構によって、“新たなVR-4像”が構築されることになった。

それは内外装のデザインや装備を見ても明らか。伸びやかな個性をテーマとした外装はワイドなボディにロングホイールベース、大きくスラントしたボンネットなどが低重心フォルムを生み出し、同時にCd値0.29という4ドアセダンとしては世界トップレベルの空力性能も実現している。

一方、内装のデザインテーマはパーソナル感。快適性を高めるため、ダッシュボードからフロアコンソールやドアトリムへの一体感を演出し、各部に使われる素材にも上質さを追求。さらに3ナンバーボディがもたらすゆとりの居住空間も手に入れている。そこに競技ベース車両として生まれた初代との連続性は当然ながら見出せない。

メーターは右側に7300rpmからレッドゾーンが始まるタコメーター、左側にスピードメーターが並び、その両脇に水温計と燃料計を配置。また、タコメーター下側の“TOUR”と“SPORT”のインジケーターは電子制御可変ダンパーECSのモードを表示する。

シートはグレードによって4種類が用意されていたけど、VR-4はサイド&ショルダーサポートを張り出させたスポーツタイプシートを標準装備。運転席には前後独立で座面の高さを調整できるハイトアジャスターも付く。

後席の背もたれはヘッドレスト一体型のハイバックタイプ。センターには格納式のアームレストも設けられ、大人2人が快適に乗れるスペースが確保されている。

試乗して真っ先に感じたのは、2000~3000rpm付近のトルク特性。思いのほか薄かったのだ。圧縮比は、この頃のターボエンジンとしては標準的な8.5:1。しかし、同じ6A12のNAは10.0:1で、過給を見込めない3000rpm以下の領域では正直NAの方が扱いやすくトルク感もあるように思う。

しかし、ツインターボ仕様の6A12は、そこから上の回転域が面白い。3000rpmからトルクを乗せ始め、4000rpm手前から2基のターボチャージャーが本格的に稼働してパワーを高めていく。4000rpmを超えて7000rpmまでが、このエンジンのハイライトだ。吹け上がりはシャープだし、タコメーターの針の上昇に合わせてパワーもしっかり追従してくる。高回転志向の特性は、そのフィーリングを含めてスポーツユニットと言っても全く差し支えないと思う。

同じ2.0Lという排気量にしてメカニズムもフィーリングも実に対照的。直4シングルターボの4G63と、V6ツインターボの6A12が並行してラインナップされていた90年代前半は「贅沢な時代だったんだなぁ」と、今さらながらに痛感する。

結局、2代目も走りへの拘りは変わらなかった。それが三菱にとってVR-4を名乗らせる上での命題だったのかもしれない。しかも、走りの質感は向上。競技ベース車両として誕生した初代では速さに加え、強さや武骨さを感じたが、2代目にはしなやかさとスマートさがプラスされていた。

競技から切り離されたことで新たな着地点を見つけた2代目。そのコンセプトは3代目に受け継がれていく。

■SPECIFICATIONS
車両型式:E84A
全長×全幅×全高:4630×1730×1410mm
ホイールベース:2635mm
トレッド(F/R):1510/1505mm
車両重量:1430kg
エンジン型式:6A12
エンジン形式:V6 DOHC+ツインターボ
ボア×ストローク:φ78.4×69.0mm
排気量:1998cc 圧縮比:8.5:1
最高出力:240ps/6000rpm
最大トルク:31.5kgm/3500rpm
トランスミッション:5速MT
サスペンション形式(F/R):マルチリンク
ブレーキ(F/R):ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ(F/R):205/60R15

PHOTO&TEXT:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)

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