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カンサイサービス流ND5RCチューニング論
エアロや補強パーツも駆使して安定感を向上させていく
「小排気量でローパワーだが、走りはハイレスポンスで刺激的」。そのように、NDロードスターのキャラクターを分析するカンサイサービス。
ただし「ノーマルは腰高でロールが大きく、ハードに攻め込んでいくとストロークが不足して姿勢が乱れる傾向がある」と指摘。その対策としてデモカーは、HKSのハイパーマックスMAX IV SP(F8kg/mm R5kg/mm)を中心に、程よいローダウンで乗り心地を損なわずにロールを適度に抑制。バンピーな路面でも衝撃を柔軟に吸収できるフットワークを構築している。
タイヤは「NDの排気量とパワーであれば、とくにワイド化を推進しなくても、高性能ラジアルのグリップで十分にカバーできる」と、215/40R17のアドバンネオバAD08Rを選択。NDのようなライトウエイトモデルでは、バネ下の重量が増えるだけでもドタバタとした乗り味を誘発するため、ホイールは軽量なアドバンレーシングRZII(7.5J)を選んだ。
エンジン系は、オリジナルのスポーツECUとHKSリーガマックスプレミムマフラーのみというライトチューン仕様となる。ECUチューンは、燃調や点火時期、可変バルタイなどを統合的にコントロールし、パワーよりもレスポンスを重視したセットアップを行っている。
ボディについては「オープンカーとしては剛性も高く、よく作り込まれているが、スポーツ走行を前提とするなら、やはり適度な強化は必須」と、ボルトオンで取り付けられる補強パーツを開発。
フロントメンバープレートとロアブレスバーは、前後方向のタワミを抑えて縦方向のグリップを積極的に活かすためのパーツだ。サーキットなどでのハードユースはもちろんだが、高速道の巡航でも接地性が高まり、しっとりとした乗り味が得られるはずだ。
左右方向のネジレ抑制に有効なのが、タワーバーによる剛性アップ。それでも軽量なNDでは重量増を最小限に抑えたいので、シャフトには薄肉化を図っても頑強さを維持できるクロモリ鋼を使用。また、リヤはトランクルーム内の限られた積載スペースを犠牲にせず、剛性を大幅に高めることに拘った。
また、カンサイサービスではフットワークパーツだけでなく、空力パーツも積極的に取り入れて挙動の安定を図っている。ただし、NDはもともと抵抗軽減を強く意識したデザインワークを展開しているため、パーツ開発には相当苦労したという。
まずフロントは、抵抗を抑えながらもダウンフォースを獲得してフロントリフトを抑制するために、ショートリップを開発。デザインの自由度は限られているが、それでもブレーキダクトの開口面積を拡大するなど、機能性を充実させた。
サイドステップは、フロントのスポイラーだけでダウンフォースを獲得しようとすると抵抗が大きいため適度な張り出しを与え、ダウンフォース獲得の役割を担わせている。また、フロア下に走行風が入り込み、リフトするのを防ぐ効果もある。
本来はリヤでもダウンフォースを獲得して安定を図りたいところだが、せっかくの美しいプロポーションを損なう可能性がある。そのため、ボリュームを最小限に抑えたリヤリップを設定。トランクの加工は不要で両面テープで固定できる。
そして、リヤタイヤのハミ出しをカバーする目的のリヤフェンダーエクステンションも設定。飛び石でボディに小傷が付くのを防ぐ効果もあるそうだ。
このチューンドを試乗したレーシングドライバーの谷口信輝選手は「よく曲がり、ノーズがスムーズに入るので、とにかく楽しい。リヤが適度に動いてフロントの旋回を助け、4輪がうまくリンクしている。小細工をしなくても勝手に曲がっていくほど素直に回頭するけど、ドライバーが意のままに操れるだけの自由度もある。エンジンもよく煮詰められていて、ストレスのない爽快な吹け上がりが楽しめたよ」と絶賛。
決して派手なスペックではないが、全てのチューニングに意味を持たせてトータルバランスを高めていくカンサイサービスの技。さすが老舗である。
●取材協力:カンサイサービス 奈良県奈良市小倉町1080 TEL:0743-84-0126
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