「日本市場でウケないことは分かりきっていたはず・・・」なのに、セプタークーペを導入したトヨタの英断に拍手!!

基本設計はウィンダムと共通。その実態は北米カムリクーペ

3.0L V6の豊かなトルク感。ゆるい走りがアメ車的だ!

セプターは北米カムリの日本市場における呼称。1990年代前半、すでに日本国内では1.8~2.0LクラスのFFミドルセダンとしてカムリが存在していた。そこに北米カムリが“カムリ”として導入されるとややこしい事態になるため、日本ではセプターという車名が与えられたというわけだ。

ボディバリエーションは、日本導入順にステーションワゴン(1992年9月)、4ドアセダン(1992年11月)、2ドアクーペ(1993年11月)の3つ。ステーションワゴンとクーペはアメリカのケンタッキー工場、セダンは日本国内工場での生産となる。基本コンポーネンツは、セプターと同じVCVという車両型式を持つウィンダム(と、北米で販売されたレクサスES300)に準じている。

セプタークーペは当初、2.2L直4の5S-FE(140ps)を搭載する2.2と、3.0L V6の3VZ-FE(200ps)を載せる3.0/3.0Gの3グレードで展開。2.2に対して3.0系はABSやTCS、キーレスエントリー、クルーズコントロール、運転席パワーシートなど装備が充実し、3.0Gは本革シートも標準だった。

その後、1994年10月のマイナーチェンジで、フロントマスクのデザインを変更。グレードも2.2と3.0Gに簡略化され、3.0Gのシート地はモケットが標準、本革がオプション設定となった。

ライバルは2代目アコードクーペ(KA8)で、新車価格は標準グレードが380万円台、上級グレードが440万円弱。対するセプタークーペ3.0Gは、本革シート標準の前期型が342万1000円、モケットシート仕様の中期型が301万7000円、円高差益が還元されたであろう後期型は、なんと280万9000円(ちなみに2.2は220~230万円台!!)と、お買い得感が凄まじかった。

早速、実車をチェックしていく。セプタークーペは、まずスタイリングがおかしい。顔付きはどことなくAE111レビトレを思わせ、Bピラー以降のフォルムがS14シルビアに似ていたりする。そして4.8mの全長に対してホイールベースが2620mmと短く、結果前後オーバーハングが間延び。最大のライバルにして2830mmというホイールベースを持つレジェンドクーペの堂々とした姿に対して、セプタークーペは微妙なのだ。もっとも、そのバランスの悪さがマニア指数を高めているのは間違いないが…。

ホイールはTOYOTAの刻印が確認できる奇跡の純正15インチ! タイヤは標準装着と同サイズとなる205/65R15のミシュランエナジーXM1が組み合わされる。

一方、室内は2ドアクーペとは思えないほど広々。特筆すべきは後席で、身長180cmの人が2人乗ってくつろげるだけの余裕がある。数字を調べてみたら、セプタークーペの室内長は1905mm。これは新旧国産クーペの中でトップ3に入る。

ダッシュパネルはメータークラスターからセンタークラスターまで一体感が持たされ、90系マークIIなどにも通じる90年代のトヨタ車らしいデザインだ。メーターパネルにはスピードメーターとタコメーターが並び、その右側に水温計、左側に燃料計が配置される。

また、センターコンソールは最上段にハザードスイッチとデジタル式時計、その下にエアコン吹き出し口、オートエアコン操作スイッチ、2DINのオーディオスペースが設けられる。

ステアリングコラム右側にはチルト&テレスコ調整用レバーと、乗降性を高めるためステアリングコラム全体を跳ね上げるチルトレバーを装備。ダッシュパネルにはメーター照度調整ダイヤルも確認できる。

ちなみに、日本での新車販売台数をトヨタ広報に確認したところ、「ワゴンとクーペで約4万台なのですが、クーペはそのうち1000台に満たないですね」との回答を得た。その数字を聞いて「意外と売れたんだ…」というのが率直な感想だ。

前後スライドと座面前後の高さ調整のみ電動という運転席のポジションと、チルト&テレスコ機能を持つステアリングを合わせて試乗に出る。

3.0L V6エンジンは至って滑らかな回転フィールで、ラグジュアリークーペのパワーユニットとして相応しいと思う。2000rpmも回っていればトルク感も十分。ミッションはワイドでロングな4速ATだが、モッサリ感はない。

アクセルペダルを踏み込むと、雑味をまるで感じさせることなくパワーを盛り上げながら、スムーズにエンジンが吹け上がる。今回は5000rpm手前までしか回さなかったが、このV6、さすがトヨタが初めて作った1VZ-FE(2.0LでカムリV6プロミネントに搭載)の流れを汲んでいるだけのことはある。

一方、足回りはかなりソフト。タイヤが15インチの65扁平ということもあって、路面が荒れてようが多少の段差があろうが快適性がスポイルされることはなかった。

どさくさ紛れに日本でも販売されてしまった感のあるセプタークーペ。マニア車好きとして、「トヨタ、良くやった!!」と思わずにはいられない。

■SPECIFICATIONS
車両型式:VCV15
全長×全幅×全高:4790×1770×1405mm
ホイールベース:2620mm
トレッド(F/R):1545/1500mm
車両重量:1520kg
エンジン型式:3VZ-FE
エンジン形式:V6DOHC
ボア×ストローク:φ87.5×82.0mm
排気量:2958cc 圧縮比:9.6:1
最高出力:200ps/5800rpm
最大トルク:28.0kgm/4600rpm
トランスミッション:4速AT
サスペンション形式:FRストラット
ブレーキ(F/R):ベンチレーテッドディスク/ディスク
タイヤサイズ:FR205/65R15

●TEXT&PHOTO:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)

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