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筑波53秒入りへのシナリオはすでに完成している
空力の大幅アップデートで自己ベスト54秒828の更新を狙う!
筑波サーキットを中心に、激しいチューニング合戦が繰り広げられているタイムアタックウォーズ。ほぼ改造無制限ということもあり、各アタックマシンのメイキングは信じられない速度で進化を続けている。
そんな中、2018シーズンに自己ベストを更新し、さらに上を目指すべくアップデートを重ねているのがこのBNR32(車名:ADMIXスノコ ショーリン ケミテック種馬R)だ。2019年から着手した空力の大規模モディファイもようやく完了。それに合わせてエクステリアをロスマンズカラーでデコレートし、サーキットに映える仕様を作り上げた。
エアロパーツ類はドライカーボン製のワンオフスペシャルで、これらは全て静岡県のベネテックが開発を担当。同社はレーシングカー用の空力デバイスも手がけるスーパーサプライヤーなのだが「本来、こういうクルマの相手はしてくれないメーカーなんですが、なんとか口説き落としました(笑) 今では全面的にバックアップしていただいています!」とは、オーナーにしてアタッカーを務める枡本さん。
フロアはフラットボトム化され、リヤにはベンチュリー効果を作り出す大型のディフューザーを配備。これらは、強力なグランドエフェクトを味方に付けるためのメイキングである。リヤウイングはスワンネックマウントの1860mm幅で、ドライカーボンのリヤウインドウにはシャークフィンも与えられている。
ちなみにロスマンズカラーはバイクのNSRをオマージュしたそうで、「サーキット仕様といっても見た目は大切でしょ? “カッコ良くて速い”。それが僕の理想なんです」とのこと。メインロゴはRothmansではなく、枡本さんの通り名を組み合わせてTanemansとしているのがチャームポイント。
一方のパワーユニットは、名将“アドミクス”のチューニング哲学が投影された作品となる。N1ブロックをベースにBCのストローカーキットで排気量を2.9Lまで拡大。そこにGTX3584RSタービンを組み合わせることで最高出力711ps、最大トルクは84kgmにまで高められている。
「インターセプトは4300rpm、5200〜5300rpmも回ればフルブーストに達するので本当に乗りやすいですよ」と枡本さん。
無骨なチタンタワーバーはザウルス製。スロットルはワイヤー式からZ33の電子制御式(70φ)に置き換えて、LINKフルコンでアンチラグやオートブリッピング機能を実装している点も注目したい。
足回りは、ニスモ製アームなどを使用してタイムアタックに最適化したアライメントを実現。ダンパーはエンドレスのジールファンクションをベースにしたアドミクスオリジナル仕様だ。スプリングはハル(F34kg/mm、R28kg/mm)を組み合わせる。ブレーキもエンドレスのモノブロックを使用し、安定した制動力アップと軽量化を図っている。
駆動系も根本から見直され、大雑把な駆動制御しか行わないアテーサシステムは撤去。代わりにモーテックのダッシュロガーC127の3軸Gセンサーを利用し、電子制御で前後のトルク配分をコントロールしている。LSDはフロントがニスモ、リヤがATSだ。イニシャルトルクはかなり低めのセッティングとなる。
ホイールは拘りのBBS RI-A(FR10.5J+18)。タイヤにはアドバンA050(295/35-18)を組み合わせる。
一方のボディは、ストリート仕様からタイムアタック専用に転向したこともあり、室内を中心に軽量化を推進。ロールケージにはガゼット付きのクロスバーも取り入れ、ボディ剛性アップと安全性を両立している。車重は1250キロだ。
スパルタンに仕上げられた室内。ステアリングはナルディクラシック、シートはレカロのSP-Aだ。なお、電気系統はPDM(ヒューズ機能が盛り込まれたスイッチング&ブレーカーボックスのモジュール)によってイチから再構築する予定とのこと。
ミッションはホリンジャーの6速シーケンシャルを採用しているが、シフトはこれまでのIパターンからエア圧制御のパドルシフトに移行。これは、モーテックのソレノイドバルブと汎用コンプレッサーを使ったオリジナルシステムで、電子制御スロットルを含めた綿密なマネージメントによって電光石火のシフトチェンジを可能としている。
今後の予定を尋ねると「10月からサーキットでの走り込みを開始、各部を煮詰めながらタイミングを見てアタックする計画です」という回答が返ってきた。当面のターゲットタイムは53秒入り。もちろんそれは夢物語などではなく、すでにシナリオは完成していると言っていいだろう。
準備は整った。チューンドGT-Rの頂点に君臨するであろう1台、栄光のロスマンズカラーで彩られた美しきBNR32が間もなく奔り出す。
PHOTO:土屋勇人