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スズキ・キャラならではの個性で痛車度アップ!?
購入から27年間をかけて作り上げた独創スタイル!
オールジャンルのカスタムカーミーティング「Street Wheelers Spring Session」で発見したスズキ・キャラ。ご存知、マツダ オートザムAZ-1のOEMモデルとして販売されていたマニアックなモデルだ。
このスズキ・キャラ、チャームポイントのガルウイングを全開状態で展示しているところに、実はマニアのツボをくすぐるポイントがあった。それは、ドアの前方に配置されたカラフルなひし形の装飾だ。と、ここまでくれば分かる人はピンとくるはず。長年人気のシューティングゲームとして知られる『東方Project』のキャラクターであるフランドール・スカーレットをモチーフにした痛車なのである。
東方Projectの中でも、東方紅魔郷という作品に登場するフランドール・スカーレットはいわゆる吸血鬼のようなキャラクター(小柄で赤い服を着ている吸血鬼姉妹の妹)で、彼女のデザインのキーとも言える羽をガルウイングで表現している。
痛車としての再現度を『グラフィックではなくクルマとキャラクターとの関係性』で作ってしまうとは…。早速オーナーにその真意を直撃したところ、実はこのスズキ・キャラは二十歳の頃に新車購入して以来、浮気せずに30年近くワンオーナーで乗り続けているという、さらに驚きの答えが返ってきた。
「当時、自動車関係の仕事をしていた父親が“付き合いのあるメーカーだったら半分お金を出してくれる”ということで、4WD、軽自動車、オートマを条件に選んだんです。そんな中でカッコ良いと思ったのがキャラでした」とはオーナー。
続けて「そこから20年以上は外装もほぼノーマルのままでした。だけど、東方にハマっていく中でちょっと痛車に憧れが出てきて、モチーフにするキャラクターを考えてるうちに東方紅魔郷に出てくるフランドール・スカーレットがこのクルマにピッタリだなと思ったんです」と、その経緯を話してくれた。
このクルマの一番の拘りとも言える羽のデザインは、オーナーの自作。ドアに脱着できるマグネットバーに配線固定用のステー、アクリルのカラー下敷きをカットするという、全て100均で揃えた材料でメイキングしているというから恐れ入る。
フェラーリのエンブレムをパロディしたステッカーにもフランドール・スカーレットの姿が。こちらはデザインを業者に依頼したものだ。
他にもキャラクターをモチーフに作られたステッカーをさり気なく配置。これらは、ヤフオクで販売されていたものを出品者にサイズオーダーして作ったものだ(東方は二次創作OKの作品)。
痛車イベントに参加した際のステッカーも貼られているが、「そういう場所だとグラフィックの派手な痛車の影に隠れてあまり注目されないんです」とポロリ。しかし、マイナー車種で派手すぎない痛車ということもあって、オールジャンルイベントにも気兼ねなく展示参加できることがメリットなのだとか。
自作ナンバープレートの『ふ・495』も痛車ポイントのひとつ。フランドール・スカーレットは不老不死的な吸血鬼で、作中での設定年齢は495歳なのである。
フェラーリF430スクーデリアを意識して作ったというイタリア国旗色のストライプは、実はこのクルマを痛車にする前から貼っているもの。
ゴールドの6本スポークホイールは友人からのプレゼント。キャラクターが金髪なのでカラーもそれに合わせたのかと思いきや、意外と後付けな理由だった。
車庫保管のおかげで内装のコンディションは超極上、ほぼ新品状態と言える美しさをキープしている。ハンドルとシフトノブはスズキの他車種から純正流用してスポーティさをアップ。
エンジンはAZ-1と同型のF6Aを搭載。所有18年目でブローした際にリビルトへと交換、それに合わせて補機類もリフレッシュしたそうだ。メーターでは現在12万4000キロを迎えたところだった。
痛車というカテゴリーでは地味なルックスに見えるが、このベース車両を生かし切ったメイキングは素晴らしいの一言。分かる人だけが分かるスズキ・キャラの隠れ痛車、オーナーの美学が強く感じられた1台だ。
TEXT:長谷川実路
PHOTO:土屋勇人(Hayato TSUCHIYA)