目次
3.0LV6最上級グレードと、2.4L直4中間グレードという組み合わせ!
同じスペースギアでも走りの印象はまるで違う!
L型デリカスターワゴンに続き、PD型デリカスペースギアにまで手を出すとは…。それも3.0LV6を載せる“全部盛り”グレード、スーパーエクシードクリスタルライトルーフと、2.4L直4を搭載した中間グレード、エクシードIIハイルーフという2桁ナンバーの2台持ち。なんのことはない、雑誌『ManiaxCars』のVol.05に登場した変態デリカ乗り、滋賀の中西さんのことだ。
まずは、1994年式スーパーエクシードクリスタルライトルーフ。さすが最上級グレードだけあって、クロムメッキ仕上げのフロントグリルガードやサイドステップ、リヤアンダーガードバー、15インチアルミホイールを標準装備。フロントグリルガードに付くフラッグポールやフロントサイドウインドウのエクシードバイザー、整流効果でリヤウインドウの汚れを軽減するリヤデフレクターは純正アクセサリーとなる。
エンジンは、三菱の幅広い車種に搭載された3.0LV6の6G72型。スペースギアに載るのはSOHC24バルブでレギュラーガソリン仕様となる。そこに組み合わされるミッションは、“ノーマル”と“パワー”、雪道などの滑りやすい路面で2速発進を可能にする“ホールド”、計3つのモードを備えた電子制御4速ATだ。
また、フルタイム4WDにもパートタイム4WDにも切り替えられるスーパーセレクト4WDの採用や足回りの見直しなどにより、オフロード性能を落とすことなくオンロード性能を高めている点にも注目したい。
ドアを開け、よじ登るようにして運転席に収まる。デリカは初代120、2代目L型、3代目P型と試乗したが、着座位置&アイポイントの高さはPD型、通称“スペギ”が一番。見晴らしが良いのだ。
エンジンがフロント搭載になったこととダッシュボード形状の見直しによって、前後左右のウォークスルーを実現。センタークラスター最上段にはボディの傾きを示す傾斜計、外気温計と電圧計、電子方位計で構成されるマルチメーターが備わる。エアコンはデュアルフルオートが標準装備。
最上級スーパーエクシードのガソリン車はクリスタルライトルーフのみの設定。フロントは電動チルト&スライド式ガラスサンルーフ、リヤには電動サンシェード付きの4分割ガラスサンルーフが備わり、開放的なキャビンを演出する。ルーフ中央にはマルチシーンライティング大型ルームランプを装備。明るい白色光の直接照明と、淡いオレンジ光の間接照明を切り替えられる。
2列目シート右側に設けられたリヤオートエアコンの操作スイッチ。エアコンオンオフの他、温度や吹き出し口、風量などを調整できる。
最上級グレードらしくシート表皮にエクセーヌを採用。運転席、助手席ともセンター側には角度調整式アームレストが備わる。
また、シートバックには2列目の乗員がくつろげるよう格納式フットレストを装備。
650mmもの前後スライド量を持つ2列目キャプテンシート。3列目との回転対座はもちろん、1~3列や2~3列でのフルフラット、座面チップアップ+前方スライドでのラゲッジスペース拡大など、様々なシートアレンジを誇る。
50:50分割でリクライニングが可能な3列目シート。背もたれを寝かせ、横に跳ね上げ収納することでラゲッジスペースを拡大できる。2列目シートのチップアップ+スライドと合わせれば、約1800mmもの荷室長を確保できる。
滑らかに粛々とアイドリングする6G72型エンジン。コラムレバーでDレンジを選び発進する…と、もう1500rpmくらいからトルク感が凄いのなんの。車重は2トン超え、ミッションも4速ATなのに、それをまるで感じさせない加速感。さらに、動力性能もそうだが、速度域が上がっても静粛性が保たれていることにクルマとしての進化を痛感した。
しかし…デリカとして見た場合、それは進化ではなく方向性が大きく変わった、もしくはオーナーから叱られるのを承知で言うなら、むしろ退化しているんのではないかとすら思った。というのも、デリカとして良く出来過ぎているのだ。
L型もP型もそうだが、オンロードでの乗り心地とか静粛性とかを多少犠牲にしても、本格的なオフロード性能を追い求めたのがデリカではなかったのか? 今回はオフロード未走行だったので本当のところは分からないが、P型から300kg増えた車重や3.0LV6の下から湧き上がるようなトルクが、オフロード走行ではかえって足かせになるような気がしてならない。
しかし、名誉のために言っておくと高速道路を巡航するのは抜群に良い! あとは燃費を気にしなければ…。
続いて2.4L直4を載せた中間グレード、1995年式エクシードIIハイルーフの登場だ。2列目キャプテンシートの7人乗りってとこはスーパーエクシードクリスタルライトルーフと同じだけど、ファジィ制御の電子制御サスが省かれてたり、シート生地が起毛ニットだったり、デュアルエアコンがマニュアル式だったりなど装備を簡略化。
いや、正確には、快適性を犠牲にしない範囲で過剰装備を削ぎ落した実用グレードと言う方がいいかもしれない。
小型軽量化が図られた2.4L直4の4G64型エンジン。吸排気効率の向上を狙ってSOHCながら気筒あたり4バルブとされる。6G72型に比べるとパワーで40ps、トルクで6kgm下回るから非力に思うかもしれないが、最大トルク発生回転数が2750rpmと低く、低中速振りの特性とされている。
ダッシュボード中央にはナビモニターが設置されているが、ノーマルに戻すべく3連メーター(傾斜計、電圧計、内外気温計)を手配中。エアコンはデュアルながらマニュアル式となる。
後輪駆動の2H、フルタイム4WDの4Hの他、センターデフをロックした直結4WDのハイ(4HLc)とロー(4LLc)をレバーひとつで切り替えられるスーパーセレクト4WD。路面状況を問わず、常に安定した走りを約束してくれる。
シート表皮の素材は起毛ニット。角度調整式アームレストや腰の疲労を軽減するランバーサポートを装備するのはスーパーエクシードと同じだ。ドライビングポジションはL型やP型よりも高く、見晴らしが良い。
エクシードIIは2列目がキャプテンシート、ひとつ下のエクシードⅠはベンチシート。それをP型までのデリカに置き換えると、エクシードに相当するのがエクシードII、GLX(以下のグレード)に相当するのがエクシードIと考えられる。
リクライニング機構や角度調整式アームレスト、横跳ね上げ式格納など、シートの機能に関してはスーパーエクシードと変わらない。2列目をチップアップして前方にスライドさせれば、足元には広々したゆとりのスペースが生まれる。
ホイールは、スタイルドホイールと呼ばれるスチール製15インチが標準装備。最初期型は同じデザインだが、白く塗装されていたのが違いだ。1995年10月以降のモデルは写真と同じシルバーになった。
それでは2.4L直4の性能評価だ。3.0LV6に比べれば確かに低中速トルクは細いが、1速ギヤ比とファイナル比が低く設定されているおかげで出だしは思いのほか軽快。
それでも、アクセルペダルを深めに踏み込んでやらないと思った通りに加速してくれないし、とくに上り坂は気持ちを前向きにして「さぁ、上るぞ!」と思って右足に力を込めないと元気良く走ってはくれない。しかし、それでストレスを感じるほどではないし、むしろ頑張って走っている感があってL型やP型に通じる感覚…もっと突っ込むなら、デリカらしさを味わえると言っていい。
それからコーナーが連続する山道を上り下りして思ったのは、気持ちよく曲がってくれるってこと。同じスペギなのに、安定感ばかりが際立ってた3.0LV6搭載のスーパーエクシードとは別のクルマに思える…と思ったところで、中西さんから授かったカタログをめくると、車重はスーパーエクシードクリスタルライトルーフの2030kgに対してエクシードIIハイフールは1890kgと140kgも軽い。それも前軸重の差が大きいだろうから、ハンドリングが別物と感じたことにも納得できるというものだ。
自分でも意外だったが、印象が良かったのは断然エクシードII。そして、2桁ナンバーを付けたこの2台(とL型デリカ)を手元に置いて乗り分けている中西さんは、どれだけデリカ愛に満ちた変態なんだ!? との思いを新たにした次第。
スチール製ホイールに加え、フロントグリルガードやサイドステップ、リヤアンダーガードバーが白くなることで、ヘビーデューティ感を漂わせるエクステリア。本格的オフロード走行にも対応したワンボックス4WDということを考えると、スーパーエクシードよりもエクシードIIの方が「デリカスペースギアらしい」と言えそうだ。
■SPECIFICATIONS
(デリカスペースギアスーパーエクシードクリスタルライトルーフ)
車両型式:PD6W
全長×全幅×全高:4685×1695×2060mm
ホイールベース:2800mm
トレッド(F/R):1440/1435mm
車両重量:2030kg
エンジン型式:6G72
エンジン形式:V6SOHC
ボア×ストローク:φ91.0×76.0mm
排気量:2972cc 圧縮比:9.0:1
最高出力:185ps/5500rpm
最大トルク:27.0kgm/4500rpm
トランスミッション:4速AT
サスペンション形式(F/R):ダブルウィッシュボーン/5リンクリジッド
ブレーキ(F/R):ベンチレーテッドディスク/ディスク
タイヤサイズ:FR225/80R15
■SPECIFICATIONS
(デリカスペースギアエクシードIIハイルーフ)
車両型式:PD4W
全長×全幅×全高:4685×1695×2060mm
ホイールベース:2800mm
トレッド(F/R):1440/1435mm
車両重量:1890kg
エンジン型式:4G64
エンジン形式:直4SOHC
ボア×ストローク:φ86.0×100.0mm
排気量:2350cc 圧縮比:9.5:1
最高出力:145ps/5500rpm
最大トルク:21.0kgm/2750rpm
トランスミッション:4速AT
サスペンション形式(F/R):ダブルウィッシュボーン/5リンクリジッド
ブレーキ(F/R):ベンチレーテッドディスク/ディスク
タイヤサイズ:FR215SR15
TEXT&PHOTO:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)