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OPTIONはAE86デビュー時にターボチューンの盛り上がりを勝手に予想!
ハチロクが遂に発売! 歴史を刻む一歩はここから幕を開けた!
FF車が全盛に向かおうという1980年代。ライトウエイトスポーツとして前代モデルのFRプラットフォームを引き継ぎつつ、新世代の4A-Gエンジンを搭載して1983年にデビューしたのがAE86(ハチロク)だ。
適度にコンパクトで取り回しの良いボディは、エントリーモータースポーツ参加層や走り屋たちからも大きな支持を受け、あらゆるステージで大活躍。このクルマで腕を磨いたというプロドライバーも多く輩出した。
もちろん、発売当時はそこまでの存在になるなど誰も予想していなかったが、少なくともOPTION誌はハチロクがチューニングベースとしてブレイクすることを早々に予見していた。
OPTION誌1983年7月号、後に日本を代表する歴史的名車となるAE86の新車紹介記事をプレイバック!
【噂のホットモデル】新型エアロ・レビン&トレノに4A-GEUの130馬力パワー
兄貴たちも真っ青の、ゼロヨン15秒9!
世界のベストセラーカー、トヨタ・カローラ/スプリンター・シリーズがFMCした。そのポイントは、世界的な動きであるFFへの転換だ。しかし、このFMCで最も注目されていたのは、スポーティ版のレビン/トレノである。セダンのFF路線と区別され、FR方式のままで登場した。
そして、さらに注目されていた1.6L直4DOHCエンジン、4バルブ・システムが採用されているのだ。各気筒2コの吸気バルブは、T-VIS(トヨタ・バリアブル・インダクション・システム)で吸気制御され、低中速と高速のバランスをとっている。その燃料噴射方式は、新たにEFI・Dと名付けられ、従来のエアフローメーター方式でなく、吸気系に取り付けられた圧力センサーで、燃料の噴射量をコントロールするシステムである。ボア×ストローク=81×77mmの1587ccは、130ps/6600rpmと強烈。最大トルクは15.2kgm/5200rpm。
スタイルも、トレノはリトラクタブル・ヘッドライトでスポーティ性を強調し、レビンはサイドまで回り込んだフロントライトが高級ソアラ風だ。ボディバリエーションは3ドアと2ドア。2ドア・レビンはミニソアラと呼ぶのがふさわしい。
面白いのは、エンジン冷却温によって、フロントグリルが自動開閉するという、エアロ・ダイナミックスを追及したアイデアである(レビンGT・APEX)。性能のほうも、900kg台という車重ではあるが、社内テストでゼロヨン15秒9をマークしているほど。このタイムは兄貴分の2.8L DOHCや1.8L DOHCターボをも脅かす勢い。
チューニングの可能性は、ターボがベスト
レーザー&4Aツインカム16。この4A-GEUパワーは、いうまでもなく2T-Gに代わる新世代のテンロク・ツインカムだ。パワー的にも従来より15psアップで、世界的に見ても1.6Lクラスではトップパワーを誇る。
しかし、ノーマルに満足できないのがOPT精神だ。そのチューニングや潜在性能が気になる。
例えば、T-VISの6発1G-Gは、高回転こそよく回りパワーはあるものの、低中速のパンチ力が欠けている。新しい4A-GがEFI-Dを採用したといっても、5200rpmで最大トルクを発生するくらいだから、まさしく高回転型の特徴だ。やはり1G-G同様に、低中速をもっと使いやすくしたい気がする。
パワーだって上がるはずだ。なんといっても1.6LクラスのDOHCは、チューニングも手軽にできるのがいい。
やはり、ストリート用のターボチューンが最適になる。そこで威力を発揮するのが、EFI-Dの圧力センサーによる燃料噴射方式だ。従来のエアフローメーター方式では、パワーを限りなく上げていく場合、吸気抵抗が増大するというネックがあったが、EFI-Dではかなりスムーズに吸気できる。
ただし、ターボチューンによる燃料増量システムは、複雑化するのも事実だ。徹底的なコンピューターチューンが必要になるからである。しかし、このコンピューターをチューン度に合わせ的確に変更すれば、低速から高速までスムーズな燃料増量ができるわけだ。
パワーアップに伴い、4A-Gのブロック剛性なども気になる。4A-Gが3Aのボアを3.5mm広げてあることを考えれば、これ以上ボアアップしないほうが無難といえる。
したがって、ノーマル排気量でのターボチューンが、ブロック剛性からみてもリーズナブルだろう。4A-Gのターボチューンによるメリットは、もう明らか。元来、高回転は強いので、ターボで低中速のトルクをカバーしてやるという考え方だ。
エンジンばかりでなく、新型レビン/トレノの特徴はサスペンションが旧型と基本的に同じである点である。むろん、新型ではサスペンションは改良され、ブレーキもフロントにベンチレーテッドが採用されているが、このサスペンションを強化するにも、旧型のチューニングパーツが使用できるわけだ。
ミッションやデフの駆動系にも、流用できるパーツが多い。新型といってもFFでなく、FR車に固執してくれたメリットは、オレたちチューニング派、スポーツ派にとってありがたい要素ばかりである。セリカ、カリーナの陰に隠れていた、トヨタの「走り小僧」が、再び街を暴れ回るのは確実だ。
終わりに
デビュー後、AE86はグループAやN2など多くの競技カテゴリーで活躍。小振りなボディにFR駆動というパッケージはクルマ好きたちのハートを鷲掴みにし、長年ドライバーを育てる手頃なベース車として親しまれてきた。
「頭文字D」などの影響もあり、近年では中古車相場が高騰しているが、それでもハチロクを求める人は後を絶たないという状況が続いている…。