「深化を続けるJZA80、チャレンジを続けるDB42」スープラに秘められた魔力とは!?

パワーチューンは未だJZA80に圧倒的アドバンテージ

高速域でのスタビリティはGRスープラに軍配か!?

80年代後半から90年代初頭に掛けてのバブル景気に沸いた日本では、潤沢な開発費用を注ぎ込んだ国産スポーツモデルが数多く誕生した。中でもJZA80スープラは、世界の名だたるスポーツモデルと本気で渡り合うべく生み出された傑作だ。

特に心臓部に与えられた2JZ-GTEエンジンの持つパワー耐性はチューナー達の心を鷲掴みにし、そのポテンシャルを引き出して上乗せするチューニング技術&エンジンパーツが続々と誕生。まさに日本のチューニング史に大きな変革をもたらした存在と言っていいだろう。

そんなJZA80スープラのチューニングは、今もなお現在進行形で続いている。今回紹介するホワイトカラーの個体は、名門“フェニックスパワー”が最先端の技術を投入しながら仕上げた1000psクラスの最高速チューンドだ。

「このJZA80スープラは、今のトレンドと技術で仕上げているのが特徴ですね。昔みたいに狭いパワーバンドでピークパワーを引き出すのではなく、3.6Lまで排気量をアップしてトルクを活かして走れるようにセッティングしています。最高速の場合はバンクでハーフスロットルをキープしなければならない場面もあるので、そこでもパワーを殺さず、さらに出口で一気に加速できるように考えています。もちろん、最高速も余裕で200マイル(320km/h)をクリアできるスペック仕上がっていますよ」と語るのは、フェニックスパワー代表の横山さん。

完成間もないユーザーカーということもあり、ブースト圧は1.6キロに抑えて設定。それでも最高出力は960psに達しており、最高速(完全なトップエンドではない)は325.49km/hを軽くマークするほど。このパワーと速さは、現在、試行錯誤を繰り返している後継のDB42スープラを大きく引き離す結果となっている。

細部を見ていく。30年の熟成に加え、今時のトルク型チューニングの方向性を取り入れ、リアルスピードエンジニアリングの3.6Lキットを軸にセットアップを敢行。この大幅なストロークアップによって、レブリミットは当時の8000rpm狙いから6000rpm台まで引き下げられたが、600ccのキャパシティアップによる恩恵は絶大。可変バルタイとの相乗効果で、ビッグシングル(T88SH-38GK)タービンを下から楽に回すことが可能になったのだ。
低回転域から大トルクが湧き上がる特性は、最高速シーンのみならず街乗りでも有効であることは明白。この懐の広さこそが2JZ-GTEのメリットであり、これまで長い間培った経験を活かしたアドバンテージというわけだ。

その点でDB42スープラは、ブーストアップによる520psが現在のピーク値。ECU制御に大きな課題が残されているため、燃料を増量できないことなどがネックとなっている。

それでも初期モデルのDB42はECUの書き換えができるだけマシで、マイナーチェンジした2020年モデル以降では、書き換えのためのアンロックが出来ないなど完全に開発途上。中間の2019年モデルは、ECUへのアクセスや書き換えは可能(ベータ版)になっているが、まだ解析を進めている最中。プログラム製作者の改造防止への意図か、従来のECUと比べて“罠”のようなマップ構成も多数存在しているという。
このように、現行スープラのチューニングはまだまだ道半ば。さらに、適合する燃料系パーツやギア比の問題など、課題は山積みだ。

もちろん、JZA80と後継のDB42以降を比較した時、全てにおいてJZA80スープラが優れているというわけだはない。例えば、この30年の間に自動車メーカーのシャシー設計技術は格段に進化を果たしているため、高速域でのDB42の安定感は圧倒的。逆を言えば、JZA80スープラはパワーこそ圧倒的に勝るものの不安定であることはは否めない。

それでも、だ。野放図に贅沢を満喫した30年前に、たっぷり時間とお金を掛けて開発されたJZA80の魅力は褪せるどころか、今、ますます輝いているようにも思う。

●取材協力:フェニックスパワー 福井店:福井県坂井市丸岡町朝陽2-317 TEL:0776-67-2980/京都店:京都府久世郡久御山町佐古外屋敷37-2 TEL:0774-48-1157

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