目次
吸気温上昇によるパワーダウンをどう抑えるかが重要だ
水冷式インタークーラーの強化が最優先課題
スカイライン400RとGRスープラ(RZ)の2台をデモカーとして導入し、新世代3.0Lターボエンジンの可能性を追求し続ける“フェニックスパワー”。
すでにどちらの車両もECUチューニングによるブーストアップを完了させているが、補機類ノーマル状態で行ったOPTION誌主催の最高速トライアルでは、いずれも事前シミュレーションで予測していたトップスピードには至らなかった。記録はGRスープラが284.22km/h、400Rが295.50km/hだ。
「最高速アタック中のログデータをチェックしていくと、2台とも吸気温度が想像以上に高くなっていたんです。それが原因で、GRスープラ(RZ)はリタード(ECU制御による出力ダウン)が発生、400Rは目標トルクマップでトルクを下げるスロットル制御が介入する…という感じです」とは、フェニックスパワー横山代表。
続けて「特に厳しいと感じたのは、スロットル制御の絡む400Rですね。ドライバーがアクセル開度100%にしていても実際には25%開度となっていましたから」。
これらの状態を改善するためには、吸気温度を下げるしか方法はない。つまりは、インタークーラーの大容量化だ。しかし、GRスープラも400Rも純正のインタークーラーは一般的な空冷式ではなく水冷式を採用している。
ちなみに、水冷式は空冷式に比べて「車速や走行風に影響されずに温度を安定させられる」「空冷と比べると同じパワーに対してコアを小さくできる」「コア設置場所の自由度が高い」など多くのメリットを持っているものの、その構造上、チューニング適合度は低い。
横山代表は、当初、インタークーラーの空冷化を考えたがコストまで含めて現実的ではないと判断。その後、多方面から情報を収集し、GRスープラ用として米フルーダイン社が販売する水冷式インタークーラー強化用のヒートエクスチェンジャーに辿り着き、導入を決意した。
「スープラのインタークーラーやエアコンの冷却に使用される低温ラジエターは純正が4.0L。対して、フルーダインのヒートエクスチェンジャーはアルミ3層で5.6L。その差は歴然で、メーカーのテストでは吸気温度が40度も下がったそうなんです。これなら、280キロからもうひと伸びするかもしれません」と、期待を膨らませる。
一方の400Rに関しては、アフター品が存在しなかったため、独自に大容量ヒートエクスチェンジャーを開発。コアの厚さを15mmから35mmへと拡大し、さらにアルミ3層構造とすることで、吸気温度上昇速度の大幅な遅延を狙うというわけだ。
「効果絶大ですよ。ノーマル状態でサーキットを走ると、一瞬でフェイルセーフが介入するレベルまで吸気温度が上昇してしまいます。でも、このヒートエクスチェンジャーを組んで的確なECUチューンを行えば、安定した連続周回が可能になりました」とのこと。
その言葉通り、フェニックスパワーのワークスカーは、2022年2月11日の最高速アタック(4回目)で300km/hの大台をついに突破! しかも、当日の路面はハーフウェット。アタッカーを務めた稲田大二郎に「コンディション次第では、まだまだ記録を伸ばせる」と言わしめたほどなのである。
「近代のスポーツモデルは、昔のようにパワーを出せば速くなるというわけじゃないんですよね。そこが難しくもあり、やりがいでもあるわけですよ。GRスープラも近々300キロ超えさせますので、ご期待ください!」。
一筋縄ではいかない新世代FRスポーツのチューニング。しかし、こうしたトップチューナーの努力は必ず素晴らしい結果として結実するはず。次回の最高速トライアルに期待したい。
●取材協力:フェニックスパワー福井店 福井県坂井市丸岡町朝陽2-317 TEL:0776-67-2980/京都店 京都府久世郡久御山町佐古外屋敷37-2 TEL:0774-48-1157
記事が選択されていません 記事が選択されていません【関連リンク】
フェニックスパワー
http://www.phoenixs.co.jp