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軽量化への執念がほとばしる車重900kg台の軽量S13
見た目とは裏腹に質実剛健にして盤石のマシンスペック
エンジンセッティング以外の作業は全て自分でこなす、生粋のプライベーターが作り上げた超軽量シルビアの登場だ。
ベースはS13。大胆なボディカットを軸に無駄を排除しながら、24点にもおよぶロールケージで剛性もアップ。もはや、ボディはセミパイプフレーム仕様と表現した方が正しいくらいの作り込みを誇る。
これらは、フォーミュラDで戦う車両を手本にイメージを膨らませつつ「軽量化と高剛性を両立させた最強のマシンを作る!」という情熱が原動力だったそうだ。
ちなみに、どれだけ軽くなったかを調べるために、元のボディから切った鉄くずを業者に持ち込んで計測してみたところ、250kgだったそうな。K’s純正重量の1150kgから差し引くと900kgで、追加した補強バーが約50〜60kgあるとしても余裕で1トン切りできる計算だ。
実は、オーナーがセミパイプフレーム化した車両を作ったのはこれが2台目。1台目は事故車の180SXをベースに製作したという。しかし、フレームがずれたまま補強をしてしまったせいで、真っ直ぐ走らないどころか軽量化もイマイチで失敗に終わった。このS13はその過去の失敗と経験を糧に、リベンジしたマシンでもあるのだ。細部を見ていく。
心臓部のSR20エンジンは、アペックスのハイカムにAXタービンをセットした330ps仕様。トラストサージタンクへのパイピングは自作溶接で取り回し、エアコンは潔く撤去している。ライトチューンスペックではあるが、凄まじいほどの軽量化のおかげで400psクラスのシルビアにも負けない加速性能を発揮するそうだ。
エンジンルームを見るとストラットタワーから前方は全てカットされていることが分かる。バンパーを装着するためのコアサポートは、純正を残すよりも軽くなるという理由でパイプで作り直し、ターンバックルで角度を調整できるようにしている。
軽量化のために灯火類も全て撤去しているが、リトラの角度は帝王古口の180SXを意識して指3本の半目位置で固定する。
リヤも凄まじい。フロント同様にトランクルームはバッサリとカット。軽量のパイプフレームを這わせて、リヤバンパーや38L安全タンク、GTウイングを固定する。完全にレーシングカーのメイキングだ。マフラーはJZX100用のチタンを流用している。
足回りも自作のオンパレード。ドリフトに重要なナックルはアッカーマンアングルよりも最大切れ角を重視して製作。ロワアームはフェンダーに合わせてトレッドを広げるために45mm自作延長した。アッパーマウントの横はロールバーが通り、各部のスポット増しもすることでボディ剛性は大幅に高められている。
リヤメンバーはリジット&補強&上げ加工に加えて、前側の取り付け部にスペーサーをかませて前傾でセット。トラクション重視のジオメトリーに改善しているのだ。
室内も超レーシング。シートはブリッドのジータIIIを2脚装備し、エンジンルームから移設したヒューズボックスはハンドル右手に配備、不必要なヒューズは全て撤去している。
運転席シートの右側に確認できるのは、ビッグキャリパーをドリフトで使いやすくするためのブレーキバランサーだ。サイドブレーキは純正を廃してキノクニの油圧キットに置き換えている。
ロールケージはサイトウロールケージの4点式クロモリがベース。各部に38φのバーを追加していき、直角に交わる部分にほとんどトラス補強のバーを追加、さらにボディと隙間ができる箇所はガゼットプレートを置いている。
軽量化のためにサイド&クォーターガラスはアクリルパネルで自作し、リヤもHPIのS13用アクリルウインドウを脱着式のステー固定としている。
スタイリングも徹底追求。エアロ関連はロケットバニーで統一。全身のビスは皿、キャップ、ボタンの3つの形状のステンレスを使い分けているが、ほぼ全てが見た目を重視してヘックス穴という拘りようだ。もちろん塗装も自宅ガレージに簡易ブースを作って全塗装した。
既成概念やセオリーに捕われず、やりたい事を自己流で注ぎ込む。これぞ、プライベーターならではの仰天メイクと言える1台だ。(ハイパーレブ シルビア/180SX No.11より)