ホンダは四輪事業について、今年5月に開催した2025年 ビジネスアップデートで発表した通り、電動化・知能化を軸としたEV・ハイブリッド車の競争力強化、新たな価値の提供に向けて取り組みを進めている。その一方で、電動化時代においてもホンダが変わらずに追求し続ける提供価値が、ドライバーとクルマが一体になるような「操る喜び」だ。EV、ハイブリッド車といったパワートレーンの違いに関わらず、人中心の設計思想であるM・M思想※1とともに、運転する人だけでなく、すべての乗員に“心地よさ”と“楽しさ”を提供する操る喜びの追求が続けられる。ホンダは、このM・M思想と操る喜びを核に、四輪の提供価値として「Enjoy the Drive」を掲げ、今後もその姿勢を変えることなく次世代の四輪技術の進化に着実に取り組んでいく。今回のワークショップでは、こうした思想や価値観を具現化するための新たな技術が公開された。
次世代中型プラットフォーム 概要
ホンダは、2027年以降に投入する次世代ハイブリッド車の商品群から、ハイブリッドシステムと、それを搭載するプラットフォームを全方位で進化させていく。次世代プラットフォームでは、高いボディー剛性と軽量化を高次元に両立させる技術や、共用率を向上させたモジュラーアーキテクチャーなど、さまざまな革新技術を組み合わせることで、ドライバーが軽快で爽快な走りを実感できる、ホンダならではの「操る喜び」がさらに高められる。

ダイナミクス性能を左右する操縦安定性の新たな指標として「新操安剛性マネジメント」が確立された。ボディー剛性の最適化により、車体を軽量化すると同時に、コーナーリング時に車体がしなるような挙動を与えることで、タイヤへの荷重をコントロールし接地力を向上。これまでにない操縦安定性と軽快で気持ちの良い走りを実現する。なお、この技術はEV向けのプラットフォームにも採用予定。

- 車体構造の見直しと新たな設計手法の採用により、ハイブリッド車向けプラットフォームの重量を現行モデル比で約90kg軽量化。走りの楽しさと燃費性能の両立を実現。
- さまざまな車種に対応するモジュラーアーキテクチャーを採用。エンジンルームやリアアンダーなどの共通部と、リアキャビンなどの独自部を作り分けることで、60%以上の共用化が目指される。コストを抑制しながら、開発効率と生産性の幅が大きく向上される。
- プラットフォームの進化に合わせて、ドライバーが思い通りにクルマを操ることができる技術として、ホンダ独自のロボティクス技術で培った姿勢制御を応用した「Motion Management System(モーション マネジメント システム)」を採用。さらに、アコード、プレリュードなどに採用されているコーナーリング時のスムーズな車両挙動を支援する電子制御システム「アジャイルハンドリングアシスト」に、新たにピッチ制御※2が加えられ、安定性と操る喜びを増幅させる。
次世代 大型ハイブリッドシステム 概要
ホンダは、EV普及までの過渡期において、2027年以降に投入する次世代ハイブリッドモデルを中心的な商品群と位置付けている。特に、ハイブリッド車の主戦場となる北米市場では大型車への底堅い需要があることから、Dセグメント以上の大型車向けハイブリッドシステムが2020年代後半の商品投入を目指して開発される。
今回のワークショップでは、厳しい環境規制への対応を見据えた新開発のV6エンジンに加え、高効率と低コストを高次元に両立した新開発のドライブユニットやバッテリーパックを備えた、次世代の大型ハイブリッドシステムの主要技術が初公開された。
- 低燃費領域を拡大した次世代V6エンジンと高効率なドライブユニットを組み合わせ、さらに、車両の状況からドライブモードを最適化し燃費性能向上に寄与する、次世代のエネルギーマネジメント制御を適用することで、現在販売している同一セグメントのガソリンエンジン搭載車と比較して30%以上の燃費向上が目指される。
- 大型セグメントにふさわしいパワフルかつ上質な走りを実現するため、エンジン・各ドライブユニットの高効率化、バッテリーアシストの活用により、完成車での全開加速性能についても、現在販売している同一セグメントのガソリンエンジン搭載車と比較して10%以上の向上が目指される。

小型 EV 「Super-ONE Prototype」 ダイナミクス技術 概要
『Japan Mobility Show 2025』にて初公開された「Super-ONE Prototype」の量産モデルは、2026年より日本を皮切りに、小型EVのニーズの高い英国やアジア各国などで発売が予定されている※3。グランドコンセプトに「e: Dash BOOSTER(イー ダッシュ ブースター)」を掲げ、車内での体験を豊かにする多彩な仕掛けを採用することで、日常の移動を刺激的で気持ちの高ぶる体験へと進化させることが目指される。

- Nシリーズとして進化させてきた軽量なプラットフォームをベースに、トレッド・フェンダーを拡幅した専用シャシーが採用され、全幅が拡大された。また、EVの主要部品である薄型バッテリーを床下中央に配置することで重量物の集中化と低重心化を図り、Aセグメントの小型EVとしてクラス最軽量レベルの車両重量と、従来のガソリン車の小型車を上回る低重心を実現。これらの特性により、ドライバーの操作に対して俊敏に反応し、カーブ走行時にも安定した操舵の応答性を維持している。
- Super-ONE Prototypeの量産モデルには、専用開発の走行モード「BOOST(ブースト)モード」が搭載される。このモードでは出力を拡大しパワーユニットの性能を最大限に引き出すとともに、仮想有段シフト制御とアクティブサウンドコントロールシステムの連動により、あたかも有段変速機を備えたエンジン車のような迫力あるサウンドと鋭いシフトフィーリングが演出される。
仮想有段シフト制御では、アクセルなどの運転操作や、車速・旋回時の車両挙動などの走行状態をもとに仮想のエンジン回転数やギヤ段をリアルタイムに演算。駆動力やレスポンスを最適に制御することで、クルマとの一体感ある走りを実現する。さらに、加速時のキックダウンによるショックや、エンジンを保護し回転数を適切に制御するために燃料供給を一時的に停止するフューエルカットの挙動を仮想的に再現。長年にわたるガソリン車開発で培った走行フィールがEVに融合されている。
【注釈】
- マン・マキシマム/メカ・ミニマム思想。人間のためのスペースは最大に、機械のためのスペースは最小限にして、クルマのスペース効率を高めようとする、Hondaのクルマづくりの基本的な考え方
- ハンドル操作に合わせて減速Gをコントロールし、前荷重を増加させることで前輪のグリップ力を高める技術
- 量産モデルの車名は地域によって異なる。日本やアジア大洋州では「Super-ONE」、アジア大洋州の一部の国では「Honda Super-ONE」、英国では「Super-N」として発売予定