モーターファン・イラストレーテッド vol.117「エンジン回転系部品大図鑑」より転載
高性能エンジンはコンサバティブ
1LR-GUE V10 SPECIFICATION
ストローク 79mm
全長 6350mm
ジャーナル径 62mm/ジャーナル幅 24mm
ピン径 45mm/ピン幅 31mm
ウェブ幅 14mm
重量 18670g
レクサスLFAだけに搭載されたトヨタ初のV10エンジン。高回転高出力を売りにするエンジンには、奇をてらった設計は不向きである。したがって、このクランクシャフトは古典的な外観をしている。ひとつのクランクピンで左右バンクのピストンをひとつずつ抱く。愛知製鋼によれば「とても苦労しコストもかかった完全バランスのクランクシャフト」とのことだ。搭載車両が高価だけにNV性能への配慮は必須であり、エンジン回転の上昇側だけでなく「落ち」側にも配慮している。これより気筒数の多いクランクシャフトはセンチュリー用のV12だが、こうしたマルチシリンダーエンジンは一度廃止するとノウハウが途絶えてしまう。生産継続を望みたいエンジンだった。
クランクケース。低重心化と同時にオイルの撹拌抵抗を減らすため、レーシングエンジンでは一般的なドライサンプを採用。各気筒独立構造は、剛性確保とクランク系の損失低減につながる。
アルミ鍛造軽量ピストンはヤマハ製。シリンダーボアの溶射やブロックの鋳物製造は、トヨタ本社内にあるF1エンジンと同じ設備で行なう。オイル冷却ジェットは当初1本だったが、熱的に厳しかったため、3本に増やした。吸気バルブ、排気バルブともにチタン合金鍛造の中実。バルブスプリングは高強度材。回転数はレーシングエンジン並みだが、寿命は量産レベルを確保しなければならない。運動部品の慣性マスを下げることでスプリングへの負担軽減を図った。
レクサスLFAのV10エンジンはいかにして生み出されたか|クーペ・スポーツカー|Motor-FanTECH[モーターファンテック]世界に誇るスポーツカーの心臓部には、レーシングエンジンの思想で設計したエンジンでなければならない。 鋼を叩いて日本刀を鍛えるように、量産エンジンに慣れた頭に喝を入れてエンジンを鍛えていった。 最高出力や発進加速の数値は結果論。車両と一体となって大脳を刺激するフィーリングを追い求めた10年だった。TEXT:世良耕太(SERA Kota)PHOTO:瀬谷正弘(SEYA Masahiro)/TOYOTA*記事内容は2010年2月取材当時のもの
https://car.motor-fan.jp/tech/10011808
連載 内燃機関超基礎講座