いまだにライバル機は不在。空前絶後の超弩級エンジン

VR6の発展形の終着駅が、2005年にブガッティ・ヴェイロンに搭載されたW16である。これは15度バンクのジグザグ配列としたVR8を90度バンクで向い合せた構成となっている。
当初、開発陣は直6を3列並べたW18を想起したが、中央バンクの吸排気に困難が発生するという古来からの障壁に阻まれて、VR8×2の構成に落ち着いた。
これによってエンジン両脇に素直に排気マニフォールドを出すレイアウトとなり、それぞれにターボを装着することも可能になった。

ボア×ストロークは86mm×86mmという国産2リッター4気筒でお馴染みのもの。その4倍のシリンダーで8ℓの排気量を得る。当初から1001psを公言していたが、それに不可避に伴う猛烈な排熱の処理に開発陣は大いに悩まされたという。
90度位相クランクが180度ずれて互い違いに配置されるという例を見ない複雑さと生産量の少なさから、クランクシャフトは鍛造ブランクからの削り出し製法を採る。
点火順序は1L-14R-9R-4L-7L-12R-15R-6L-13R-8L-3L-16R-11R-2L-5L-10R(気筒番号の後のRは右、Lは左バンク)と、片バンクで2連続点火の後に反対バンクに移るパターンとなる。
16気筒もの排気エネルギーを存分に生かすために、ターボチャージャーは片バンクに2機ずつ、クワドラプルターボの構造とした。写真を見てもらうとわかるとおり、ターボチャージャーが互いに熱を帯びてしまい、熱マネージメントに苦心したのが容易に想像できるだろう。

ヴェイロン発表当時は最高出力1001psを公称したが、その後登場した「スーパースポーツ」では最高出力1200ps、最大トルク1500Nmにまで向上させ、2016年にヴェイロンの後継機として登場したシロンでは1500ps、1600Nmにまで引き上げられた。しかしこれで終わりとならず、2019年に発表された超高性能仕様「スーパースポーツ300+」では1600ps、1600Nmにまで到達した。
そんなシロンの生産は2024年をもって幕を閉じ、後継車となるトゥールビヨンには8.3L V型16気筒自然吸気+モーターのハイブリッドが搭載されるため、この超弩級ターボエンジンもシロンと時を同じくして終売した。
フォルクスワーゲン EA398主要スペック
排気量:7993cc
内径×行程:86.0mm×86.0mm
圧縮比:10.0
最高出力:882kW/6000rpm
最大トルク:1500Nm/3000-5000rpm
過給方式:ターボチャージャー
カム配置:DOHC
ブロック材:アルミ合金
吸気弁/排気弁数:2/2
バルブ駆動方式:ロッカーアーム
燃料噴射方式:DI
VVT/VVL:In-Ex/×
(Bugatti CHIRON)







