Q:燃費を良くしたい。タイヤの空気圧を気持ち高めにしても良い?

千葉県/さすらいのモンキー125乗りさん

投稿者さんは指定空気圧より+20kPa程度高くしたいと考えている。結論から言えば、空気圧を高くするとタイヤの変形が小さくなるため、転がり抵抗は減る方向に働く。だから「燃費に有利になるのでは?」という考え方自体は間違っていない。ただし、だからといって指定空気圧が225kPaなら280kPa、300kPaと高くすれば良いわけではない。タイヤの空気圧は燃費だけでなく、荷重を支える能力、操縦性、制動、グリップ、乗り心地、発熱、摩耗まで考えて設定されている。公道では、まず車両ごとの指定空気圧が基本になる。

空気圧を上げると、なぜ「転がりが軽い」と感じる?

走っているタイヤは真円のまま転がっているわけではない。路面に接する部分は車重によって潰れ、接地面を通り過ぎると元の形へ戻る。この変形を何度も繰り返すと、そのエネルギーの一部が熱として失われる。空気圧が低くなるほどタイヤは大きく変形しやすくなり、転がり抵抗や発熱も増える。逆に空気圧を上げれば変形は小さくなり、「スーッと転がる」「ハンドリングが軽くなった」と感じることもある。

ただし、空気圧を上げれば上げるほどグリップまで良くなるわけではない。実際のタイヤはゴムが変形しながら路面に接しているため、空気圧が変われば接地の仕方や路面への追従性も変わる。転がり抵抗だけを見れば高めにする理屈はあるが、グリップや乗り心地まで含めれば単純に「高いほど良い」とは言えないのだ。

1人と2人で55kPa違う! 体重や荷物はどう考える?

ここで具体的な数字を見てみよう。2026年型CT125ハンターカブの指定空気圧は、1人乗車では前175kPa/後225kPa。2人乗車になると前175kPaはそのままだが、後輪は280kPaまで上がる。後輪だけで225kPa→280kPaと55kPa、約24%も高くなる。

バイクでは、車種によって1人乗りと2人乗りで指定空気圧まで変わることがある。それだけタイヤに掛かる荷重と空気圧は切り離して考えられない。

ちなみに二輪車の各種試験では、ひとつの基準としてライダーを装備込み75±5kgとする条件が使われている。ヘルメット、ブーツ、グローブ、ライディングウェアなどを着用した状態で75kg前後なので、裸の体重で75kgという意味ではない。ただし、これはあくまで試験条件のひとつで、すべての車両が75kgのライダーを基準に開発されているという意味ではない。

実際、車種によっては1人乗りと2人乗りで指定空気圧が変わるものもあれば、変わらないものもある。つまりライダーの体重や荷物だけを見て、「○kg重いから+○kPa」と単純には決められないのだ。

高すぎると「硬い!」だけじゃなく、タイヤの減り方まで変わる

「高くすれば転がりも軽いし良いんじゃない?」と思うかもしれない。ところが高すぎる空気圧にもデメリットがある。

まず分かりやすいのが乗り心地。タイヤはサスペンションより先に路面の細かな凹凸を受け止める、いわば最初のクッションでもある。空気圧を上げればタイヤが変形しにくくなるため、小さな段差や荒れた舗装での突き上げが強くなりやすい。また、荒れた路面ではタイヤが適度に変形して路面へ追従することも大切なのだ。

さらに長期間、高すぎる状態で使えば偏摩耗につながることもある。一般的には空気圧が高すぎるとトレッド中央部、低すぎるとショルダー部の摩耗が進みやすい傾向がある。ただし、タイヤの構造や形状、車種、走り方、道路環境でも摩耗状態は変わるため、「センターが減った=必ず空気圧が高い」とまでは言い切れない。

低すぎてもダメ、高すぎてもダメ。空気圧はただタイヤを膨らませるための数字ではなく、タイヤ本来の性能を引き出すためのセッティングのひとつと思ってほしい。

燃費が5%良くなっても月100円!? そのために空気圧を上げる?

では、燃費を良くするために指定値より空気圧を高めるメリットは、実際どれくらいあるのだろう。仮に燃費40km/Lのバイクが、空気圧を高めたことで5%改善して42km/Lになったとする。月500km走り、ガソリン価格を170円/Lとすると、40km/Lでは月12.5Lを使い、ガソリン代は2125円。42km/Lなら約11.9L、約2024円となる。その差はわずか約101円だ。1年間でも約1214円ほどの差。

もちろん、これは「空気圧を上げれば燃費が5%改善する」という実測値ではなく、あくまで比較のための仮定。ただ、仮にそれだけ燃費が良くなったとしても、金額にするとこの程度ということになる。

いっぽう、空気圧を上げすぎれば乗り心地が硬くなったり、タイヤの接地状態や路面への追従性が変わったり、偏摩耗につながったりする可能性もある。グリップについても「空気圧を○kPa上げたら○%低下する」と単純には言えないものの、車両メーカーが指定した状態から外せば、本来想定された乗り味や操縦性から離れていくことになる。

月100円ほどの燃料代を狙って、安全性や乗り味まで変える必要があるのか。そう考えると、燃費目的だけでむやみに空気圧を上げるメリットは、それほど大きくないように思えるがいかがだろうか。

「燃費狙いで+20kPa」はアリ? まず指定値を基準に!

では今回の「指定値より+20kPaくらい入れれば燃費が良くなる?」への答え。転がり抵抗だけを見れば、空気圧を上げる方向には理屈がある。ただ、その+20kPaによって変わるのは燃費だけではない。乗り心地、接地状態、操縦性、タイヤの減り方まで一緒に変わる。

とくにバイクの場合、CT125ハンターカブのように1人乗りと2人乗りで後輪が55kPaも違う車種があるほど、荷重との関係は無視できない。いっぽうで、乗車人数が変わっても同じ指定値の車種もある。ここからも「重い人ならとりあえず+20kPa」という単純な話ではないことが分かる。

「燃費のために+20kPaしようかな?」と考える前に、まず現在の空気圧を測ってみる。二輪タイヤは、静止していても1か月で10〜20kPa程度低下することがある。つまり、その20kPaくらい自然に減っている可能性だってあるのだ。

なお空気圧は、タイヤが冷えている状態で確認したい。走ればタイヤが発熱し、内部の空気も温まって空気圧は上昇する。走った直後に「高すぎる!」と空気を抜いてしまうと、冷えたときには不足してしまう。

キャンプ道具を積む、タンデムする、ロングツーリングへ出掛ける。そんなときこそ「なんとなく高め」ではなく、愛車の指定空気圧を改めて確認してみたい。たった数十kPaだけど、その差は乗り心地やグリップ、燃費、タイヤの減り方にまでつながっている。

エンジンやサスペンションをいじらなくても、エアゲージひとつで愛車の乗り味を左右する。タイヤの空気圧って、思っている以上に奥が深いんですよね。

【モトチャンプ編集部】