Q:中古バイクを探しています。同じくらいの年式なら、3万km走っている車両より5000kmしか走っていない車両を選んだほうが安心ですよね?
東京都/低走行が正義?さん
結論から言えば、5000kmだから安心、3万kmだから避ける、とは決められない。走ればエンジン内部やクラッチ、サスペンション、ベアリング類などの摩耗は進む。いっぽう、ほとんど走らなくても時間によって状態が変わる部品がある。中古バイクでは「何km走ったか」に加えて、「その距離を何年かけて走ったのか」「今どんな状態なのか」まで見て初めて、その数字の意味が分かってくる。
「3万km=走りすぎ」とは限らない! 10年なら年間3000km
例えば同じ10年落ちなら、3万km車は年間平均3000km。1か月にすると250km、1週間なら約58kmだ。3万kmという数字だけを見て、極端に走り込まれた車両と決めるのは早い。
いっぽう、同じ10年で5000kmなら年間500km。月平均約42km、週平均では10kmにも届かない。もちろん実際に均等に乗られていたとは思えないが、ここまで低走行なら「距離が少なくてラッキー!」の前に、なぜ5000kmしか走っていないのか?も気にしたい。
中古バイクの3万kmと5000kmは、数字だけを横に並べるより「年式と走行距離をセット」で見たほうが、その車両の使われ方を想像しやすくなる。
「ほぼ寝ていた5000km車」、ブレーキフルードは何年前のまま?
5000kmしか走っていなくても、長く寝ていた車両なら距離より“時間”を気にしたい。例えばブレーキフルードは、走行距離が少なくても時間とともに吸湿が進み、状態は変化する。10年落ち5000kmだからといって、「ほとんど走っていない=ブレーキフルードも新しい」とは考えられない。
バッテリーも同じで、使わなくても自己放電は進む。さらに時計やコンピューターメモリー、セキュリティなど、車種によっては停車中も電気を使う装備があるため、長く寝かせているだけでも放電は進んでいく。
だから“ほぼ寝ていた5000km車”では、「何kmしか走っていないか」より、「何年その状態だったのか」「その間にどこまで手が入っていたのか」を見る。低走行という数字だけでは、フレッシュさまでは保証してくれない。
溝たっぷりでも古いかも? タイヤは側面の“4桁”を見る
中古車を目の前にしたとき、すぐ確認できて情報量が多いのがタイヤだ。側面には製造時期を示す4桁の数字があり、例えば「2324」なら2024年の第23週に製造されたことが分かる。
低走行車ほど溝がたっぷり残っていることがあるが、溝が残っていることとタイヤが新しいことは別の話。ゴムは時間とともに劣化するため、ひび割れや硬化も合わせて確認したい。
だから中古車を見に行ったら、残り溝を見るついでにこの4桁もチェック。10年落ち5000kmなのにかなり古いタイヤが残っていれば、「走って減らなかったタイヤがそのまま付いている」という可能性も考えられる。逆に比較的新しいタイヤへ交換されていれば、少なくともタイヤには手が入っていることが分かる。オドメーターには出ない車両の時間が、タイヤには数字で残っているわけだ。
3万km車は「摩耗」、5000km車は「眠っていた跡」を見る
では実車ではどう比べれば良いのか。3万km車なら、使われてきたぶんの摩耗を見る。エンジンの始動性やアイドリング、異音、オイル漏れ、クラッチのつながり、シフトフィール。足周りならフロントフォークのオイル漏れや動き、リヤサスペンションの状態、ステアリングやホイール周りのガタ。さらにチェーンやスプロケット、ブレーキなども確認したい。
3万km走って各部の摩耗が進んでいること自体は当然なので、大事なのは「3万km使われた現在、ちゃんと動いているか」だ。
対して5000km車では、タイヤの製造年、チェーンのサビや固着、フロントフォークのインナーチューブに出た点サビ、ブレーキディスクの強いサビ、可動部の渋さなど“眠っていた跡”を探す。もちろんサビひとつで長期放置車とは決められないので、古いタイヤ、固着したチェーン、フォークの点サビ、動きの渋い可動部といった複数の痕跡を合わせて見るのがコツだ。
だから「低走行車ください!」だけでは選べない
目の前に2台あるとしよう。3万km車は外装に多少の使用感がある。でもエンジンはすぐ掛かり、シフトもスムーズ。フォークに漏れはなく、タイヤやチェーンも比較的新しい。5000km車は外装ピカピカ。でも10年前のタイヤが残り、チェーンには固着、フォークには点サビ。ブレーキフルードをいつ交換したのかも分からない。
この2台なら、「2万5000kmも少ないから」という理由だけで5000km車を選ぶのは早い。
中古バイクの走行距離は「少ないほど高得点」という採点表ではない。3万kmなら3万kmなりの見方があり、5000kmなら5000kmだからこそ確認したい場所がある。走行距離は答えではなく、実車をどこから見るかを教えてくれる数字。オドメーターを見て終わりではなく、そこからが中古バイク選びのスタートなのだ。
【モトチャンプ編集部】
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