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自衛隊新戦力図鑑

ウクライナ戦争でも活躍する実績の高さ

オトカはバスなどの民生用大型自動車と軍用装甲車両を手掛けるトルコ有数の企業だ。5月に幕張メッセで開催された防衛装備展示会DSEIジャパンでは大きなブースを構え、4×4装甲車「コブラII」などの模型を展示した。筆者がブースを訪ねて製品の説明をお願いすると、装甲部門のマネージャーが対応してくれた。

DSEIジャパンのオトカ社ブース。「コブラII」と6×6装甲車「ARMA」の模型を展示した。日本のイベントへの参加は初めて(写真/筆者)

「コブラII」について、マネージャーはまず豊富な使用実績に基づく信頼性の高さをアピールした。世界で20以上の国や組織に採用されており、そのなかには現在も国土防衛戦を戦うウクライナ軍も含まれる。マネージャーによればウクライナ特殊部隊がコブラIIを使用しているとのことだ。防護力も高く、高威力銃弾に耐える防弾性能、そして地雷への耐性を備える(専門的にいうとSTANAG4569という国際基準で「レベル3」の防護力。このクラスの車両としては充分な能力だ)。

自衛隊「軽装甲機動車」後継選定の見直し

筆者が「コブラII」に興味を抱いたのには理由がある。それが、自衛隊の「軽装機動車(通称LAV)」後継車両の選定見直しだ。LAVは合計2000両近くが調達された小型・軽量な4×4装甲車で、目にしたことがある方も多いと思う。LAVの後継選定は2021年度からスタートし、最終候補として2車種を絞り込むところまで進んでいたが、再度選定を見直すことになったらしい。そこで、同規模の装甲車の展示に注意を払っていたのだ。

軽装甲機動車は、全長4.4m、重量4.5トン、乗員4名、160馬力の水冷ディーゼルエンジンを搭載した小型装甲車。2001年より調達が開始された。車内スペースの狭さ、高重心による安定性の悪さなど不評な点もあったが、軽度の防弾性能と使い勝手のよいサイズのため、国際貢献活動などに活躍した(写真/筆者)

見直しの理由は明らかにされていないが、2車種とも価格の高さがネックになったという話がある。また筆者は、後継車両の運用想定が選定開始以前と変化しているのではないかとも考えている。わかりやすい例が2022年から始まったウクライナ戦争の影響だ。この戦争は現代戦の様相を大きく変えた。こうした状況を踏まえ、LAV後継について役割と費用対効果の再検討が必要になったのではないだろうか。

後継候補のひとつ、タレス・オーストラリア製「ハウケイ」。全長5.78m、重量7~10トン、乗員5名でLAVよりはるかに大きな車両。エンジンは268馬力。防弾・耐地雷能力を備えたMRAP(耐地雷・伏撃防護車両)タイプの車両であり、乗員防護性が高い(写真/筆者)

DSEIではオトカのほか、同じくトルコのヌロルマキナ社も4×4装甲車の模型を展示していた。価格面で競争力のあるこれら企業がLAV後継に向けて日本へのアピールを強めているのだと思われる。

コブラIIは日本向けのアレンジも可能

話をコブラIIに戻そう。マネージャーは同車のアピールポイントとして以下のふたつを強調した。ひとつ目として、モジュール設計によりクライアントに応じたカスタマイズが可能なこと。コブラIIの基本タイプは「全長5.6m、重量12~14.5トン、最大11人乗車」とかなり大型だが、たとえばルーマニア軍向けの車両では乗車人数を減らし、重量を抑制したモデルを展開している。

もうひとつが国産可能という点だ。前述のルーマニアでは、現地国防企業と合弁会社を設立し、同国内での生産はもちろん、整備やアフターサービスまで含んだ契約を結んでいる。これは国産装備を重視する自衛隊にとって大きな魅力だろう。マネージャーは筆者に「日本でも可能だ」と念を押した。

オトカはルーマニアの国防大手オートメカニカSAと、同国でのコブラII生産に向けた合弁企業を設立する契約を結んだ。写真の車両はルーマニア軍向けのもので車体後方の乗車区画を減らし、重量も10トン程度に抑えた(写真/オトカ)

トルコは近年、防衛関連での発展が目覚ましい国のひとつであり、オトカも地上装備の実績を積み重ねている。日本では欧米の有名企業に目が向きがちだが、改めて注目したい企業と言えるだろう。

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