新型「ディスティネーター」のスタイリッシュな姿に日本のユーザーも衝撃…!

三菱がアセアン地域などの市場をターゲットにして投入する新型SUV「ディスティネーター」。新興国向けモデルとはいえ、そのスタイリングは日本のユーザーにも大きな衝撃を与えている。

インドネシアで発表された三菱ディスティネーター。インドネシアのほかベトナム、フィリピン、南アジア、中南米、中東、アフリカに順次投入される計画だ。

この車両の原型は、2024年に「DSTコンセプト」としてフィリピン国際モーターショーに出展。いずれ市販車として登場するのではないかとみられていた。

2024年10月のフィリピン国際モーターショーに出展されたDSTコンセプト。そのデザインはディスティネーターの原型だったことが一目瞭然だ。

登場したディスティネーターは、DSTコンセプトよりもブラッシュアップされていた。仮にこれが新型「パジェロ」であったとしても、概ね好評を得たのではないと思えるほどだ。

昨今の三菱車は、ピックアップトラック「トライトン」や軽乗用車「デリカミニ」に代表されるように、デザイン的に一皮むけた感がある。“ダイナミックシールド”というデザインプロトコルで三菱車の顔は創造されてきたが、「アウトランダー」や「エクリプスクロス」とは違う新たな時代を感じさせているのである。

日本のSNSでも、「このデザインなら、新型パジェロも期待できる!」といった声が多くあり、いやが応にも期待値が上がっている。ただし、ディスティネーターとパジェロでは、根本的な構造が違うことも考慮しなければならない。

ディスティネーターのインパネは、8インチの液晶メーターと12.3インチのセンターディスプレイが連続したデザインを採用しており、先進性を感じさせる。

ディスティネーターはモノコックで前輪駆動のみ。パジェロとは成り立ちが異なる

ディスティネーターはモノコックボディ構造だし、駆動方式はFFだ。5つのドライブモードを採用した電子制御システムによって、優れた走破性は発揮するようだが、本格クロスカントリー4WDを標榜するパジェロとは様々な面での違いが顕著だ。

ディスティネーターは、あくまでも「新興国ファミリー層向け」の3列シートSUVという立ち位置なのである。一方のパジェロは、性能や耐久性などでベース車と噂されるトライトンを超えなければならない。

ディスティネーターのエンジンは1.5L 4気筒ターボ(最高出力120kW&最大トルク250Nm)。トランスミッションはCVTが組み合わされる。タイヤサイズは225/55R18。

つまりラダーフレーム構造で、リヤリジッドアクスル式サスペンション。そして4WDシステムは、パートタイム式である「スーパーセレクト4WD-Ⅱ」(もしかするとⅢに進化?)を採用するだろう。

こうしたシャシーやパワートレーンを使えば、果たしてディスティネーターほど躍動感のあるボディラインが実現できるのかという不安がないわけではない。

パジェロの歴史を振り返った時、初代の人気の凄まじく、1991年に登場した2代目モデルはクロカン4WD市場に衝撃を与えた。しかしSUVの時代がやってくると、やはりモノコック車の躍動的なデザインに太刀打ちすることができず、フレームインモノコック構造に変更した3代目、4代目は全盛期の勢いを取り戻すことができなかった気がする。

かつてのパジェロオーナーとして、ここで改めて新型の未来予想図を考えてみたい。ひとつは、ディスティーネーターのような現代的な価値観によってデザインされたSUVだ。かつてパジェロの活躍の舞台だった「パリ・ダカールラリー」においては、ヘビーデューティという雰囲気とは真逆、高速での空力性能を重視したエアロ形状へと進化した。

その市販版が「パジェロエボリューション」であり、多くのパジェロファンが夢見たカタチであったことは間違いない。「ランサーエボリューション」の大ヒットも後押しして、とにかくゴツカッコいいエアロが賛美されたものである。もし、パジェロにあの頃のイメージを持っている人が多いのであれば、ディスティネーターをブラッシュアップしたデザインはいいかもしれない。

2代目パジェロがベースのパジェロエボリューション。280PSを発生する3.5L V6エンジンを搭載するほか、エアロダイナクミスを意識したオーバーフェンダーやリヤスポイラーなどで武装した最強パジェロだ。

丸型ライト+カクカクボディ採用ならば、大ヒット間違いなし…か!?

だが個人的には、ユーザーの気分はそこにない気がするのである。多くのファンは、やはり初代パジェロの姿を脳裏に思い浮かべるのではないだろうか。直線的で丸目というオーセンティックなクロカン4WDデザインを。これには少なからず根拠がある。

それはスズキ「ジムニー」シリーズ、そしてトヨタ「ランドクルーザー250」「ランドクルーザー70」のヒットという事象があるからだ。流麗なボディラインのSUVよりも、シンプルでスクエア、無骨な感じのするデザインの方がこの市場では明らかに支持されている。トライトンもしかりである。

パキパキとしたスクエアなボディと丸型ヘッドライトの組み合わせの初代パジェロ。無骨さと愛嬌を併せ持ったデザインは、令和になった今、新たな魅力を感じさせる。

その市場の気分から考察すると、新型パジェロは果たして「リブート」というカタチを取りながらも、新型は過去のモデルイメージが重なるクルマになるのではないだろうか。

一方で、またSUV路線を辿るのではという“不安”もなくはない。ディスティネーターのリヤゲートの中央部は、六角形がデザインのアクセントになっているのだが、これは4代目に採用されたスペアタイヤカバーの意匠を反映しているのだという。パジェロのDNAをいまの三菱流に復活させると、こういう感じになりますという例だ。

ディスティネーターのボディサイズは全長4680mm×全幅1840mm×全高1780mm、ホイールベースは2815mm。リヤゲートにはパジェロの六角形スペアタイヤカバーをモチーフとした「ヘキサガード・ホライズン」が取り入れられている。

まあ、ディスティネーターのようなデザインのクルマが日本市場に入ってくるのは歓迎だが、パジェロ復活の期待値はとにかく高い。2027年に登場するという噂も一部で飛び交う新型パジェロだが、ここは初代パジェロのような丸目で四角いデザインを現代風にアレンジしたクルマを期待してしまうのは筆者だけだろうか。