連載
自衛隊新戦力図鑑海上自衛隊の新世代艦「もがみ」型
「もがみ」型護衛艦は、多彩な機能を小さな船体におさめた新世代艦として2022年より就役を開始した艦だ。艦種記号「FFM」も、海自では初めて使われるもので、「フリゲート(小型の航洋艦)」を示す「FF」に、多目的(マルチパーパス)や機雷戦(マイン)を意味する「M」を組み合わせている。12隻の建造を予定しており、2025年8月段階ですでに8隻まで就役している。

新型FFMは、「もがみ」型の改良発展型で、多機能性はそのままに「もがみ」型にはなかった高度な防空能力を追加している。「もがみ」型は7番艦からミサイル垂直発射装置(VLS)を装備したものの、艦対空ミサイル誘導機能を持っていないため、対潜水艦ミサイルしか搭載していなかった。また、国産の長射程対艦巡航ミサイルなどの搭載も計画されており、その能力は大きく向上する見込みだ。新型FFMはすでに昨年度(令和6年度)から建造予算が計上されており、最終的に12隻の建造を計画している。

オーストラリアの海軍倍増計画
オーストラリアは中国の海洋覇権に対抗するため、水上艦戦力を現在の11隻から26隻に拡大する計画を進めている。このうち、半分ちかい11隻を占めるのが新型汎用フリゲート計画であり、以前から日本提案の新型FFMと、ドイツ提案のMEKO A-200型が採用を競っていた。ドイツ優勢との下馬評もあったが、8月5日にオーストラリア政府より新型FFM採用との発表がなされた。

コンロイ豪国防相は「改もがみ型は海軍にとって最良の選択であり、海上展開能力をブーストさせるだろう」「この艦は我々の同盟国に安心感を与え、我々の敵を牽制する」と述べている。決定にあたっては、性能面はもちろん、戦力増強を急ぐオーストラリアにとって、日本艦の納期の早さやスケジュール厳守の姿勢が有利に働いたとの見方もある(実際、増強計画のうち、ハンター級フリゲートは遅延などの問題に直面している)。
「輸出」ではありません「共同開発」です
さて、日本は長く「武器輸出三原則」を掲げて事実上、武器の輸出や共同開発を大きく制限してきた。しかし2000年代以降、兵器の高度化により開発費用が高騰し、国際共同開発が広く行なわれるようになったことから、2014年に新たに「防衛装備移転三原則」が閣議決定され、国際共同開発への道を開いた。一方で完成品については殺傷能力のある完成装備品の移転(輸出)には慎重だ。こうしたことから今回の新型FFMの輸出も、「完成した艦艇の輸出」ではなく「オーストラリアとの共同開発・生産」という話になっている。

また、オーストラリア以外ではフィリピンへ中古護衛艦を輸出することが検討されているが、こちらも「中古護衛艦の輸出」ではなく「艦艇搭載装備の共同開発」としてフィリピン仕様の装備を組み込んだ中古護衛艦を輸出する考えのようだ。いまだ軍事に対して及び腰な国内世論に配慮したものとは思うが、正々堂々と国民に対して、その必要性を訴えることはできないものか…と感じてしまう。