連載

清水和夫×高平高輝クロストーク

歳をとってもいつまでだってクルマを楽しみたい!

清水和夫さん(左)と高平高輝さん(右)

編集部:今、だんだん高齢化になってきて、65歳、70歳、75歳…でもやっぱりクルマが好きだ、クルマを楽しみたい!っていう人はたくさんいますよね。
そこで今回の【清水和夫×高平高輝クロストーク】では、そういう方たちに何か良いアドバイスが聞けたらいいな、と。例えば、齢がいって目がついていかないけどこんな楽しみ方があるとか。いやいや、こういうトレーニングをしておけば若いころと変わらなく走れるし楽しめるよとか。清水さん、高平さんたちのようにずっと自動車業界でご活躍されているレジェンドの体験話ダケじゃなく、趣味でずっとクルマを楽しんできた人たちが今、“最後のクルマ”、“終のクルマ”を探している人がいっぱいいます。でもそれは電気自動車じゃなくてエンジン車がいいな、できたらマニュアル車がいいなっていう方たちもいっぱいいるんですよ。
清水:クルマ好きのラストマイルだね。最終コーナー立ち上がってどんな楽しみ方にしようか、と。車中泊もそうだし。仲間内で楽しむラリーだったりワンデーレースだったり。
『クルマ好き高齢者のラストマイル』ね!

高齢運転者標識は、70歳以上は努力義務、75歳以上は身体機能に関わらず表示が強く推奨されている
高齢運転者標識…自動車免許を受けている人で70歳以上の人は、加齢に伴って生ずる身体機能の低下が自動車の運転に影響を及ぼすおそれがあるときには、普通自動車の前面と後面の両方に高齢運転者標識のマークを付けて運転するように努めなければならない(道路交通法第71条の5第3項等)
高齢者講習の流れ(一般社団法人 全日本指定自動車教習所協会連合会Webサイトより)

ワンデーラリーの楽しみ方

高平:同年代の仲間が最近、ワンデーのタイムラリーをやり始めているんですよ。でね、NHKとかでも時々やっているけど、高齢者の運動機能を落とさないため、数字を3だけ飛ばして言うとか、何かを考えながら筋肉を動かすのが大事だっていうようなトレーニングプログラムがいっぱいあるんですって。それって、ラリーでコ・ドライバーに言われてどう曲がるか、どこまでアクセル踏むかなど、まさにそのものじゃないですか。まぁワンデーラリーだから、SS(スペシャルステージ)を走るようなスピードを出すラリーじゃない、“どこを曲がれ”とか“ちょっと速すぎる”とか“もう少しペースを落とせ”とか“ここは指示より速い”とか。そういうことをドライバーとコ・ドラ2人で言い合いながら、身体を動かしながら頭も一緒に考えて走る、凄くいいと思います。しかも話し相手がいるっていうことが大事。

ラリー大好きオヤジの高平高輝さん

清水:コ・ドラって、ひとつは記憶の引き出し役。ペースノートを作る時は自分の見た感じを言うから、「右2」とか「左4」とか自分のデータベースの中でコ・ドラに書かせて読ませるんだけど、読んでいる時は引き出し役でレッキ(下見走行)での記憶が出て来る…そんな感じだよ。
高平:コ・ドラはコ・ドラでドライバーの言う通りにペースノートを書き作ったとしても、それを今度喋るときには相手のリズムに合っているか、現実の道と合っているかなど、常にずっとフォローしながら、相手に対してちょうどいいタイミングで読まないと逆に邪魔になるし、アクシデントにもつながったりする。
どっちにしても、全日本だろうがワンデーだろうが、ラリーはボケる暇はないんじゃないですか? もちろん、腕も足も目も耳も全て使っているわけだから。

頭を使うラリーはボケ防止に最適♪

編集部:“若い頃ラリーやっていました”とか“レースやっていました”っていう方も、社会人になり会社員になってやらなくなる方もいっぱいいるじゃないですか。で、60歳過ぎて定年になり、ちょっと余裕があればラリーはできますか?
清水:できるね。チームの仲間、メカニック3人くらいサービスパークにいてくれれば。
ラリーって時間管理が厳しい。1分でもTC(タイムコントロール)に遅れたらペナルティ、早着もペナルティなので、時間管理をすごくやる。会社の仕事のプロジェクトも時間管理って大事じゃない。何時いつまでに何やって、次何やって…って、先読みも必要。雑誌の編集なんかもまさにそうでしょ?
高平:サーキットのワンデー耐久レースもそう。何とか走り続けなくちゃいけない、どこでピットインさせるか、どこまで整備するか…みたいな。そういうのって、いかにも“頭を使う仕事”っていう感じ。

SYEヤリスHVE号

清水:現代ラリーではLINEグループ使ってサービスパークと連絡を取り、どんな整備をして欲しいとか、タイヤはどうするかなどを連絡すれば、必要な部品を準備して時間管理もできる。ちなみに、サービスパークではテントに斜めに入れることが多い。直角に入れるよりも斜めに入れて斜めに出した方が速いからね。いまやラリーだってツーペダル(アクセル、ブレーキのAT/CVT)でできるじゃない。
高平:“オレはスリーペダル(アクセル、ブレーキ、クラッチのMT)じゃないと運転できない!”っていうほうがその要求に身体が答えていない証拠。ツーペダルだろうがスリーペダルだろうがどちらでもすぐ乗り換えられるくらいの柔軟さがないと、高齢ボケ防止トレーニングにならないですよね。

2025年8月23(土)~24(日)に行なわれた「丹後半島ラリー2025」はマニュアルのコペンで参戦した清水さん

清水:この間走った、地方戦の丹後半島ラリー2025はマニュアルのコペンだったんだけど、同じクラスに往年のラリースト、日下部保雄さんもヤリスで走っていた。日下部さんのヤリスはCVTのツーペダル、オレは久しぶりのスリーペダル。全日本戦ではCVTヤリスのツーペダルで走っているから、日下部さんに“左足使うの?”って聞かれたので、“左も右も両方使ってます”な~んて話をしていた。
CVTヤリスでは、ハイスピードで飛び込むところは左足でブレーキングして、立ち上がりで崖に落ちないようにいざっていう時にはピャッ!とブレーキを踏めるようにしておくし、ある程度分かっているコーナーは左足いらないし。
日下部さんは40年前のダイハツワークスでシャルマンのスリーペダルだったけど、あんまり左足は使っていなかったと思う。でもオレはレオーネで曲がらないクルマ、左足使わなかったら曲がる自信がなかったからね。

丹後半島ラリー2025でメカニックさんとタイヤの状態を確認中

高平:和夫さんはその頃から二刀流ですよね。
清水:どっちの足を使うか、瞬間的に身体が反応しちゃう。
編集部:清水さんはその頃からボケ防止トレーニングをしていた、と。

同じDE-5クラスに参戦した往年のラリースト、日下部保雄さんはヤリスCVT。この勝負、清水さんの勝ち!

ライセンスなしで参加できるオープンクラス

ヤリスHEVで全日本ラリー選手権に参戦の清水さん。2025年はシリーズ2位

高平:全日本戦とかではない、ちょっとしたラリーのマネごとみたいな競技というかお遊びみたいなものは、セクションを1日で4つくらい、決められた時間通りに走って、そしていかに正確に走ったかで順位をつけて、ちゃんと賞品もある。それにクローズド競技ってAライとかBライなどのライセンスもいらない。免許証と保険(自賠責/任意)に入っていて車検に通るクルマであれば出られる。
清水:昔は大学の自動車部がダートトライアルやジムカーナ(スラローム)を主催してたよね。
高平:ジムカーナとかダートラもボケ防止にいいですよね。コースを覚えてちゃんとその通りに走らなくちゃいけないっていうのが結構大変。頭と体の両方を使わないといけないし、同じコースばかりを何本も走るのではなくて、2本目は違うコースになったりするから走り出した瞬間に全て忘れちゃう人もいる。冷静に記憶を呼び出す…まさにボケ防止! しかもミスコースしたら失格でリザルトにも残らない。

生涯現役!(清水)

清水:まぁ、オレは別に高齢ボケ防止対策でラリーやっているわけじゃなくて、この年になってやっぱりラリーは面白い!っていうのが再度分かったので今、一生懸命やっているんだけど。
でも結果的に、全日本戦に3~4日間行って、体力は疲れないんだけど頭と目が疲れるんだよ、受験勉強しているような疲労。あぁ~左脳使ってるなって。サーキットレースの時はフィジカルと右脳だけでいっているような感じ。だけど、ラリーはレッキの動画見たりしていると左脳がジンジンジンジンしている。で、ハンドル握った瞬間に右脳。だから左脳でイメージ作って右脳でコーナーに入る、みたいな。

麻雀も高齢化対策の一環!? 道具に頼るな!

清水和夫・麻雀クラブのバッジ

清水:あとさ、オレの高齢化対策のひとつ。今、自動車業界の仲間と麻雀クラブを作っていて、最大3卓くらいできる人数で2年ほどやってるよ。
高平:え~入れてくださいよ! いつも“やる!”って言っているのになかなか誘ってくれない。っていうか、麻雀スケジュール組んでいる時に新規メンバーを忘れちゃうんだよね。
編集部:それはボケ防止になってない…www!
清水:麻雀っていっても完徹じゃなく夜の10時半には終わろうとしてるんだけど、来るのが遅いヤツっているんだよ。たまに“ちょっと待ってね”だったらいいんだけど、毎回なんだよ。だから、そういうとこ(時間厳守?)も高齢化対策のひとつのトレーニングになる。

麻雀の計算も頭の中でできなきゃな!

高平:点数の数え方も限られた時間の中で瞬時にやらないと。
清水:スマホ持ってタンヤオピンドラドラ…って、そんなの満貫(マンガン)に決まってんだろ!みたいな。カンなんかすると点数が60符とか行っちゃうから分からなくなっちゃう。30符で2倍すればいいだろ! 結構ね、みんなバカだよな。バカっていうかさ、スマホなんかに頼り切っていて、自分の頭で考えていないよね。
高平:いつも道具を使ってペッてやってるから、何かあると“え~とどうしよう…ググるか!”みたいな。

麻雀は頭を使う…

清水:ラリーやレースもそうだけど、大事なのは時間と距離じゃない。時間って六十進法で距離は十進法。“あと12kmだけど何分くらいかかる?”って、“60km/hだったら12分です”って、我々は60km/hが分速1kmって分かっているので、パッパッとできる。だけど、“えええ?”とか言って計算するヤツがいる。
高平:計算すると「あれ? おかしいな…100km/hで走らなきゃいけないことになってるんですけど…」って、「オマエそれ60で割ってねぇだろ!」みたいな話になる。
編集部:それもボケ防止に最適!
清水:例えば草加浩平さんなんて東京大学出てるし、結構コ・ドラは理系の高学歴が多いよな(※草加浩平=東京大学 大学院 工学系研究科 機械工学専攻 特任教授/元小松製作所エンジニア/東大在学中は自動車部に所属しラリー競技をスタート、コ・ドライバーとしてWRC、全日本戦にも参戦し1990年には全日本戦のナビゲーターチャンピオンを獲得)。

ラリーと麻雀はボケ防止に最適!(清水)

【清水和夫プロフィール】
1954年生まれ東京出身/武蔵工業大学電子通信工学科卒業。1972年のラリーデビュー以来、N1耐久や全日本ツーリングカー選手権、ル・マン、スパ24時間など国内外のレースに参戦する一方、国際自動車ジャーナリストとして活動。自動車の運動理論・安全技術・環境技術などを中心に多方面のメディアで執筆し、TV番組のコメンテーターやシンポジウムのモデレーターとして多数の出演経験を持つ。自身のYouTubeチャンネル「StartYourEnginesX」では試乗他、様々な発信をしている。2025年も引き続き全日本ラリー選手権JN-Xクラスに「SYE YARIS HEV」にて参戦、シリーズクラス2位を獲得した。

ワンデーラリーも楽しいよ!(高平)

【高平高輝プロフィール】
大学卒業後、二玄社カーグラフィック編集部とナビ編集部に通算4半世紀在籍、自動車業界を広く勉強させていただきました。1980年代末から2000年ぐらいの間はWRCを取材していたので、世界の僻地はだいたい走ったことあり。コロナ禍直前にはオランダから北京まで旧いボルボでシルクロードの天山南路を辿りました。西欧からイラン、トルクメニスタン、ウズベク、キルギス、そして中国カシュガルへ、個人では入国すら難しい地域の道を自分で走ると、北京や上海のモーターショー会場では見えないことも見えてきます。モータージャーナリスト清水和夫さんをサーキットとフェアウェイ上で抜くのが見果てぬ野望。

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クルマ好きのラストマイル、清水さん&高平さんの第一のおススメはラリーやワンデーレース、そして麻雀! 続くその2.はどんな話に進んでいくのか…未知です。

[オマケ!]SYE YARIS HEVがD-SPORTコペンで挑む【丹後半島ラリー2025】

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