急な操作はタイヤのグリップを失わせる行為

スリップは、タイヤのグリップ性能以上の操作を加えたときに起こる。つまり急な操作はグリップ力を失わせる行為だ。

滑りやすい路面において、急加速や急減速、急ハンドルが厳禁とされる理由は、タイヤと路面の間の摩擦力が極端に低いためだ。

「グリップ力」と呼ばれるタイヤが路面を掴む力には限界があり、凍結路面のグリップ力は乾燥路面の数分の1以下にまで低下する。急激な操作を行うと、タイヤはそのグリップの許容を一瞬で超えてしまい、車両の制御が失われることになる。

凍結路面では、素早くハンドルを切っただけでグリップが失われ、タイヤの向きは変わっても、車体は慣性の法則に従って真っ直ぐ進み続けようとする。

アクセルペダルを踏み込みすぎればタイヤだけが回転数を上げて進行方向が定まらなくなり、ブレーキペダルを強く踏みすぎるとタイヤはロックし、クルマは止まるどころか制動距離が大きく延びてしまう。

一度滑り出したタイヤがグリップを取り戻すまでには一定の時間を要し、その短い時間だけでも制御を失ったクルマは動き続ける。雪道で「急な操作は避けるべき」と言われるのは「タイヤのグリップを失わないため」と言い換えてもよいだろう。

「急ではない操作」とは、どんな操作?

クルマや路面の様子を伺いながらの操作が滑りやすい路面を走るコツだ。「クルマと対話するような運転」とも言われる。

「急な操作」と一口に言っても個人差がある。では反対に、「急ではない操作」とはどういった操作だろうか。それは「クルマの動きを確認しながら行う段階的な操作」と言えよう。

加速時は、車体が加速しない程度にアクセルペダルをわずかに踏み込み、本格的な加速に移る前の段階で一度止める意識を持つとよいだろう。そこから、滑り出さないことを確認しながら慎重にアクセルペダルを踏み足していこう。

減速時も、すぐにブレーキペダルへと踏み替えるのではなく、まずエンジンブレーキが効き始めるところまでアクセルペダルを戻すことが肝心だ。それからエンジンブレーキを効かせつつ徐々にアクセルペダルを戻していき、車体が安定していることを確認してからブレーキペダルへと足を移動させたい。

ブレーキペダルの操作も同様に、ごくわずかに踏み込んでタイヤがロックしたり車体姿勢を崩したりしないかを探り、そこから徐々に踏力を強めていこう。

ハンドル操作は、ステアリングに伝わってくる重さを感じながら切り足すことが基本となる。もし手応えが軽くなったら、それは前輪のグリップが失われたサインだ。それ以上ハンドルを切り足すと前輪が滑り出すため、その位置でハンドルを止めるか、少し戻してグリップの回復を待つ必要がある。

それぞれの操作方法をまとめると、手順は2ステップに分けられる。ペダルやハンドルの“遊び”を丁寧に処理し、操作がクルマに反映される直前を維持する状態がステップ1となる。それから、クルマの微細な挙動の変化を感じ取りながら入力量を増やしていく操作がステップ2だ。

アクセル、ブレーキ、ハンドルのすべての操作において、スタッドレスタイヤのトレッド面がしなる感覚や路面を捉える感覚を意識し、変形させすぎないように少しずつ入力を増やしていくような操作が、いわゆる「急な操作をしない運転」だ。

ただし丁寧に操作しようとすると、どうしても一定の時間を要する。この問題は道路状況を先読みし、早いタイミングで操作を開始することで解決できる。

「急な操作をしない」ための先読み運転と車間距離

雪道での運転は、急な操作をせずにすむよう、時間的・物理的・精神的な余裕を持つことが大切だと言えよう。

凍結路面を安全に走行するためには慎重な操作に加えて、周囲の状況を把握する先読み能力が必要不可欠となる。

例えば、凍結した路面は日光やヘッドライトの反射光で、ある程度判断できる。見分けづらいブラックアイスバーンは外気温などで判断し、低気温時の濡れた路面は凍結しているものとして慎重に運転すべきだ。

また、凍結しやすい場所には一定の法則があり、それを知っておくだけでも危険回避の対応を早めることができる。橋の上やトンネルの出入り口、日陰などはとくに路面凍結が起こりやすい場所だ。

予測に基づいた早めの準備ができれば、急な操作を強いられる場面そのものを最小限に抑えることができる。

また、十分な車間距離の確保も重要だ。前方車両との距離に余裕があれば、それだけブレーキ操作を穏やかに行うことが可能となる。

タイヤグリップが小さくなる雪道では、どれほど慎重な運転を心がけても危険のリスクを完全に排除することは難しい。しかし、急な操作を避けることでスリップのリスクは確実に低減できる。